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鏡の伊勢、剣の甥  作者: 讃嘆若人
第二部 陰陽干犯篇
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Epilogue

「どこまでがお父さんの計画だったんですか?」

 処は天界。奈留多姫(なるたひめ)波限建(なぎさたけ)鵜草葺不合(うがやふきあえず)に聴く。

「どこまでと言われてもねぇ。」

 そう言いながら波限建は笑った。

「まぁ、最後の奇跡は五十鈴姫の力だな。私にできるのは自壊作用を促進することだけだ。」

「兄妹婚という禁じ手を使ったのも、業の自壊作用を促進するため?」

「そうだね。兄妹婚をするから国が乱れるのではない、国が乱れているから兄妹婚みたいな不適切な現象が現れるんだ。大枝王と銀王は身をもって国の業を背負ったわけだな。」

「お父さん、だけど銀王は少し可哀想じゃありませんか?最愛の武内宿禰と結ばれなかった、って。」

 すると波限建の声がいきなり低くなった。

「――お前、その発言、いつか後悔するよ?」

「え?」

「いつか、自分に返ってくるよ?」

「どういうことですか?」

「過去世で君が最愛の女性だった男は何十人いただろうか?」

「え?」

「今度地上に転生する時も気を付けるべきだろ。」

「そんなことを言われても・・・・。」

「なぁ、奈留多姫?」

「何ですか?」

「私は、次お前が地上に生れるときには、お前の守護神をしたい。」

「お父さんが守護神をしてくれるの?」

 奈留多姫の顔色が明るくなる。

「良いのか?」

「もちろん!」

「ありがとう。後は大和姫こと、五十鈴姫の話だな。」

「五十鈴姫はもうじき天界に帰って来るでしょうね。」

「ああ。そして次の人生でいよいよ、大和の国を立て直すんだろうな。」






 大枝王と銀王の二人は筑紫で無事に結ばれて一男一女の子宝に恵まれた。

 この子供たちは次の話で活躍することになる。


 次の話に行く前に、近江に遷宮した後の大和大王家の面々に触れておかねばならない。


 大帯彦は近江遷宮が実現した直後に崩御した。

 亡くなる直前に、太子の若帯彦とその同母弟の五百木入彦(いおきいりひこ)の二人の息子を枕元に呼んだ。

 そして若帯彦を大王として五百木入彦が彼を支えれば、平和な天下が続くであろうと言い残して息を引き取った。

 二人は父親の遺言を守った。その結果、大和から近江へという大きい変化があったにもかかわらず、彼らの治世は平和の裡にすぎて行った。


 一方、不穏だったのが足鏡別王であった。

 彼は若帯彦の下で太子の座を狙っていたが、運命はそれを許さなかった。

 山代の宇治の地で散歩していた足鏡別王の下に越の国の使いが白鳥を連れてやってきた。

「その鳥は何なんだ?」

「大和建様を偲んで大王様の命令で連れてきた白鳥です。」

 その時、一瞬の気の迷いが彼の運命を決めた。

「白鳥と雖も焼けば黒鳥ではないか!」

 そう言うなり、彼は自分を父を偲ぶために連れてこられた白鳥を焼いて食べてしまった。

 このことは大問題となり、足鏡別王には不孝の罪で死罪を言い渡された。




「瀬織津姫はいるか?」

「は~い、久しぶりね。」

 武内宿禰の前に一人の少女が姿を顕した。

「お前は年を取らないのだな。」

「武内宿禰も他の方ほどには老けていないじゃない。」

「まぁ、そうだな。本当に時間の流れは速い。大和姫様、いや、五十鈴姫は元気にしているか?」

「ええ、天界で元気にしているわよ。」

「そうか・・・・。大和建は?」

「彼も元気ね・・・。」

「ところで足鏡別王の件には瀬織津姫は関わっているのか?」

「さぁ、わからないわ?瀬織津姫と言っても一つの意識体じゃないもの。」

「そうか・・・・。ちょっと関係ありそうな気がしてな。」

「関係はあるわね。これから面白いことが起きるわ。」

「お前が言うと国が乱れそうで怖いな・・・・。」

「うふふ、浄化作用よ。それじゃあ、またね!」

 そう言うなり瀬織津姫は再び姿を消した――――














〔第二部「陰陽干犯」篇 完〕

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