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鏡の伊勢、剣の甥  作者: 讃嘆若人
第二部 陰陽干犯篇
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17.大枝王と銀王-9

「相変わらずお二人は仲がよろしいですね。」

 この日の朝食会でも大枝王と銀王の仲睦まじい姿が披露されていた。

「お二人が夫婦だといわれれば、納得してしまいますね。」

「ああ、私もだ。大和姫様が祝福されただけはある。」

「二人は神櫛王様と仲が良いとも訊いたが?」

「お兄様とお姉様が仲良い姿を見れて嬉しい限りです。」

 周囲の人間がごますりととられかねない発言をする。

「ええ!私は大枝王が大好きですから!」

 周囲の目線にも動じず、銀王は自分が大枝王を愛していることを隠さない。

「しろちゃん、ちょっと少しは周りの目線を気にしようよ・・・。」

「ええ?大枝さんは私のことを嫌っているの?」

「そんなわけないじゃないか!勝手に人の愛情を疑うな!」

「それじゃあいいじゃない。みんな私達を祝福してくれているし。」

「全員がそうだとは限らないんだよなぁ。」

「一体、誰のことを言っているの?」

「――例えば、武内宿禰とか。」

「大枝さん、安心して!武内宿禰はそんな人じゃない、私は信じているから。」

「そうか・・・・。まぁ、いい。ところで、ちょっと手を洗いに行ってくる。」

「ああ、はい。行ってらっしゃい。」

 大枝王が厠に向かうと銀王のところに一人の女性がやってきた。

「あ、迦具漏(かぐろ)姫様!」

 思わず銀王が声を上げる。

「いつも大枝王がお世話になっております。」

「いえいえ、こちらこそ!大枝王と出会えて本当に嬉しく思っています。」

「そう言ってくださると嬉しいわ。」

 銀王と迦具漏姫が話し込むと周囲にいたやじ馬たちの波が引いていった。

「そう言えば、迦具漏姫様は若い頃は筑紫に住んでいたそうですね。」

「そうですよ。筑紫は良いところでした。いつか息子と一緒に筑紫に戻りたい、とも思っています。」




「大枝王様、初めまして。大和建の息子の足鏡別(あしかがみわけ)王と申します。」

 大枝王は厠から出て来ると一人の若い男に声をかけられた。

「おお、足鏡別王か。噂には聞いているよ。よろしく。」

「そうですか、親の七光りなんでしょうかね。」

「まぁ、確かに君の父親が超有名人だから、というのは否定しないが。」

「正直ですね。」

「すまない、本音しか言えない人間でな。」

「そうですか、いえいえ、大枝王様に悪意がないことはわかりますよ。」

「おお、それは良かった。」

「ただ、私にも少し本音を言わせていただきたいですね。」

「うん?」

「お二人の結婚は――これまで長く平和を保ってきた大和に混乱を生み出します。これは、避けるべきです。」

「私達の結婚に反対する、とでも?」

 大枝王の顔に少し「不快」の色が浮かんだ。

「いえ、結婚には反対しませんよ。結婚による混乱を回避できれば良いのです。」

「混乱の回避?」

「やはり兄妹での結婚には武内宿禰殿に限らず反発を持つものは多いでしょう。しかし、それも大和の内部だからです。大和以外の血で結婚されると、誰もお二人に今ほどには関心を抱かなくなり、大和政権の混乱も最小限に抑えることが出来ます。」

「駆け落ちでもしろと?」

「それでここからが相談です。私にはね、一度もあったことがない弟がいるんですよ。」

「同母弟か?」

「いや、異母弟です。」

「そうか。それで?」

「彼は父の正妃である両道入姫様の子供なのですが、両道入姫様は身重のまま筑紫に行かれました。今筑紫の血で元気に育っているという話は聞いていますが、やはり寂しいものは感じます。」

「異母弟とはそういうものなんじゃないか?」

 異母兄弟が80人もいる大枝王には足鏡別王の感覚がいまいちピンとこなかった。

「大枝王様の感覚ではそうかもしれませんが、やはり血の繋がった弟のことは心配になるものですよ。」

 そう言った後で、足鏡別王は続けた。

「大枝王様のお母様も筑紫出身のはず。ここは一つ、お願いできませんか?」

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