14.大枝王と銀王-8
「今朝も君たちは仲睦まじく一緒に居たね。」
そう語る神櫛王に大枝王は苦笑した。
「ちょっと最近、わからなくなってきましたね。」
「どうしたんだい?」
「私達が本当に愛して会っているのかどうか、ちょっと自身が無くなってしまいましてね。銀王の執着ぶりにはやはり違和感を持ってはいましたが。」
「ああ、彼女に想い人がいたという話か。」
「しろちゃんは、失礼、銀王は本当に私を愛してくれているのか、それとも、単なる代用品なのか――」
「要するに、君が銀王にとって武内宿禰の代用品ではないのか、と気にしている訳かな?」
「そう言うことになりますね。」
ところは神櫛王の家。恋人で異母妹の銀王のことを相談する意味合いもあって、大枝王は神櫛王の家に遊びに来ていたのだ。
「まぁ、単なる代用品であれば別の男を選んでいるだろうな。わざわざ異母兄と付き合うことはない。」
「そうなんでしょうけどね、私もちょっと被害妄想が強くなってくるといいますか。」
「自分で被害妄想という自覚があるうちはまだマシだな。まぁ、今の銀王にとって君の存在は絶対的に必要だということを忘れるなよ?」
「確かに、銀王は私に依存している感じがありますね。」
「あんたも依存していると思うがな。」
「まぁ、それはそうですが。」
「依存という言葉がいかんな。お互いがお互いを必要としているのならば、それは理想のカップルだよな、一般論としては。問題は君たちが異母兄妹であるということだけだ。」
「依存しているって、それ、愛情なんでしょうかね?私は銀王に愛されている感じがしないんです。」
「二人は充分愛し合っているだろ。問題はやっぱり武内宿禰だな。」
「銀王はどうしてあの男を愛しているのでしょうね・・・・。」
「落ち着け。銀王は武内宿禰を愛しすぎて傷が深くなっているんだ。彼にはそれだけ人を惹きつける力がある。だからこそ、あの若さであそこまで出世しているのだろう。」
「そうですか・・・。」
「あまり銀王と武内宿禰を結び付けて考えるんじゃないぞ。武内宿禰が銀王を振ったことが、君たちが出会った理由の一つでもあるしな。」
「そうですよね、確かに・・・。」
「武内宿禰は兄妹での結婚は認められない、等と言っている。だが、五十狭茅宿禰がこの結婚は大和姫様公認のものであるという話を広めているので、武内宿禰に反感を持つ人間たちの間ではかなり広まっている。」
「それで、私達は結婚できるのでしょうか?」
「それはだな、やはり大和建が大きなファクターとなるだろうな。」




