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鏡の伊勢、剣の甥  作者: 讃嘆若人
第二部 陰陽干犯篇
21/61

Prologue

第二部スタートです。

 好きになってはいけない人を好きになってしまった時、苦しんだ私。

 私は神様に聴いた。


「どうして、私とあの人を同性にしてくれなかったのですか?」


 だって――もしも同性だったら、私たち、普通に仲良くなれたのに・・・・。

 私は、あの人と異性であることで、苦しんだ。

 神様はどうして私たちにこんな苦しみを背負わせたのだろうか?


 私は神様に何度も聴いた。


 しかし、神様は、答えてくれなかった。














 自分に他人とのコミュニケーション能力が著しく書けているのか、それとも、ただ単に人と接する機会と運がないだけなのか――大枝王(おおえおう)は疎外感を感じた時に、しばしばそんなことを思う。

 彼の父は大和の大王である大帯彦(おおたらしひこ)。女好きな大帯彦には80人も子供がおり、大枝王はその中の一人にしかすぎない。

 一応、大王家の一員として「王」の称号と領地を与えられてはいるものの、主な仕事は領地での紛争の処理であり、領地の民が大喧嘩でもしない限りは平穏無事な仕事である。

 平穏無事すぎて、何もすることがない。

 いや、そもそも大王家の人間には「余計なことをしない」ということが求められる。

 社交的な王族は仲の良い王族同士で集まったり、政治家と親交を深めたりしているようであるが、大枝王は80人も兄弟がいる割には、特に親しい兄弟はいないし、親しい間柄の政治家や有力者もいない。

 兄弟が80人もいると、大王の息子であるという自分の血もそれほど価値がある訳ではない。社交的ではないこともあり、縁談が舞い込むことはなく家は使用人数人以外、誰もいなかった。

 使用人というのも住み込みではなく通いである。

 いや、別に住み込みで働いてもらっても良かったのだが、大枝王は他人と共に暮らすのがあまり好みではなかったのだ。

 だが、いざ一人暮らしとなると寂寥感に襲われるものである。

 今や大枝王は数えで25歳。倍数年暦では50歳だが、一人で寂しく暮らすのを常としていた。

 そんな大枝王にも珍しく客が来ていた。


「大枝王、元気にしていたか?」

「数年ぶりですね、神櫛王(かんぐしおう)。」

 目の前に座っているのは彼の異母兄である神櫛王だ。比較的仲は良い王族であるが、それでもここ数年間全く話をしていない。

「父上の食事会にも来ないから若干心配だったが、まぁ、無事でよかった。」

「ところで何の用ですか?」

「俺たち兄弟で伊勢に遊びに行こうと思ってな。」

「え?」

「俺たちと一緒に伊勢に行かないか?叔母上の大和姫様にも会えるのだぞ?」

「大和姫様か・・・・。」

 神櫛王の脳裏に何十年も伊勢で斎宮として天照大御神を祀っているという、大和姫のことが浮かんだ。

 叔母とは言っても大和姫と直接会ったことはない。

 ずっと独身で、伊勢で祭祀を行っているという大和姫の話は、大和では半ば伝説として伝わっていた。

「どうだ、大和姫様と会える機会など、めったにないぞ?」

「確かに。」

「それじゃあ、明々後日(しあさって)の朝に私の屋敷の前に集合してくれないか?荷物もあるだろうから数人程度なら従者を連れてきても良いが、なるべく軽い荷物にしてほしいな。大丈夫か?」

「あ、はい。」

「じゃあ、待っているぞ。」

 そういって神櫛王は去って行った。

 半ば強引に参加を決められた感はあるが、大枝王はそれも受け入れることにした。






「天界の計画」――ある人はこれを「歴史の歯車」といい、またある人は「天命」と言った。

 この時、歴史の歯車は、動き出したのだ。




 大枝王にとっては、単なる「運命の出会い」に過ぎないことではあったが。

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