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lose traveling  作者: 壇上式
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幼馴染との再会

世界観の状況と主人公の物語の始まり。

 「ヴァリアスランド」人口百万人の学徒が住むメガフロート都市。影の襲来以降、急遽、日本政府により 建造された島である。目的は、影に対抗する術を研究するためである。結果、研究過程で二〇〇〇年以降 に生まれた子供は、一六歳になると能力が開眼することが判明した。判明したというより、判明していたと表現した方が正しい。奇怪現象が多発し出した原因を、以前から何人かの研究員が提唱してはいたが、政府は聞く耳を持たなかった。


 人は失って初めて気づくというが、それでは遅いという教訓を今さらながら思い知った。


 では、世界に何が生じたのか。


 単純に言うとすれば、「影の世界」と「現実世界」が同期しようとした。本来、二つの世界は平行世界間にあるため交わらないはずが、何らかの原因で同期してしまった。「世界」は二つの存在を許しはしなかった。そのため、お互いの強力な斥力により歪が生じた。歪は相互のゲートとなり、影の侵入を許した。影の住人は、現実世界を浸食するため蹂躙を開始した。それなのに、未だ人類が生き残っている理由は、能力者達の活躍によるものらしい。

 正確なことは、まだ誰も解明できていない。

 これを期に、政府は能力者を集めた武力対抗組織を育成するため「全知学園」を設立した。


 二二三七年現在。


 世界が完全同期した年に誕生した人間は、能力の期待値が、人知を遥かに凌駕することが、能力者により予知されていた。

 政府は、対応策としてある少年を監視役として入学させた。

 その少年の名は、国木千理(くぬぎせんり)という。


              ○


 午前七時、新たな門出を祝うかのように、小鳥たちが冴えずいている。


「三年ぶりになるな。相変わらずここは変わらないな。」


 千理は、「全知学園」を見通し呟いた。

 正門は分厚いコンクリートの擁壁で作られている。校舎自体も特殊な偏光板により、外部からは視認不可能な構造になっている。主に影対策ではあるが、全てを薙ぎ払う影の前では、僅かな時間稼ぎにしかならない。それでも、ないよりかはましである。

 潜り抜けると、昇降口まで伸びる石張りのアプローチ。覆うように咲乱れる桜の甘い春の香りが、新入生を出迎えてくれる。

 千理も、当時は期待に胸を膨らませていたが、その面影も今では霞んでしまった。

 何故なら、この学園での三年間を千理は、一番よく知っているからだ。


 暗雲立ち込める思いで進むと、体育館裏で何やら不穏な空気が立ち込めている。

 早速、任務かと項垂れながら千理は、流し目で観察した。ブレザーの階級章を見るに新年生だった。

 千理は、入学式も終えていないのに、今年の一年生は、血気盛んだと思った。

 つまり、初任務ということになる。

 仲裁の機会をうかがうため、相手に悟られないよう、近くの外壁に身を潜めることにした。


 「あん~?ぶつかっておいて謝りもしないのか?ほら慰謝料だよ。慰謝料。あ~痛ぇよー、痛ぇよー。左肩脱臼しちまってるよ。こりゃー、十万はかかるわ。取りあえず、今あるだけ全額だせよ!」


 「あんたらがぶつかってきたんやろ!そのせいで翔太が擦りむいたやんけ!そっちこそどうしてくれるん!」


 「ごめんなさい。ごめんなさい。財布に五千円しか入ってないから、こ、これでゆ、許して。」


 「てめぇ、いい加減にしろよ!女だからって調子に乗ってっと、どうなるか体に教えてやるよ!」


 どうやら柄の悪い連中に姉弟が因縁をつけられ、殴られそうになっている。

 おいおい、脱臼してたじゃないのかよと、千理は心の中で悪漢にツッコミを入れた。

 事態は悪い方に流れているため、余裕はなさそうだと、再確認した。

 千理は数秒逡巡した後、二、三言葉を発し、気配を殺しながら騒動の中に突入した。

 男は少女の胸倉を掴もうとしている。千理は合気道の要領で、少年に向かう拳を掴み取り、空中に放り投げた。続けざまに、取り巻き達を処理しようとした。鳩尾に肘鉄と膝蹴りを一発ずつ繰り出した。

 ぐらりと揺れ倒れる二つの影。

 その隙に、二人の手を掴み脱兎のごとく退散。

 顔を知られれば、後々面倒ごとが増えると判断したためだ。


 「ぐう・・・。いってーな!何だってんだいきなり!って!あいつ等どこ行きやがった!」


 男は忽然といなくなった少年、少女に怒りを露わにした。

                      ○

 千理は、さっきいたアプローチを通り抜け猛然と走っている。人垣を掻き分け、昇降口に着いたところで走るのを止めた。途中、不満を訴える声が聞こえたが無視した。

 すると、少女の方から怒声が飛んできた。


 「あんた、なんなん!あの人たちにまだ言い足りないことがあったのに!助けたつもりなん!いい迷惑やん!ほら翔太も何か言ってやり!」

 「ぼ、僕は・・・。も、問題が解決してないので、また同じ目に合うと思うので、あ、あの、ど、どうしてくれるんですか。あ、あのすみません。」


 千理の助太刀は二人にしてみれば余計なお世話であったのだろう。

 千理は憤りを感じながらも任務のためと、割りきりその場を後にしようとした。

 まだ、言い足りないのか少女は早口に叫んだ。


 「 まだ、話はおわっとらへんよ!私の名前は春香。青空春香(あおぞらはるか)や!こっちは、弟の翔太(しょうた)や。この落とし前は、校内バトルで勝負や!って話聞いとるん!?」


 千理は、春香の宣戦布告を聞き流していた。

 入学式の時間も近づいているため講堂に向かおうと、千里は背を向け、片手を軽く振り歩き出した。

 

 春香は未だ憤然としている。我慢ならず、履いていた右足のスニーカーを脱ぎ、大きく振りかぶった。

 しかし、千理の立ち去る後ろ姿に、ドクンと鼓動がなった。

 六年前、春香の前からいなくなった幼馴染と面影が瓜二つだったのだ。

 

 「千くんは卒業したらどうする?」

 「俺は、もっと先に進む」

 「それって、どうゆうこと?」


 春香の質問に、当時の幼馴染は答えてくれなかった。そして、今と同じ動作で去っていった。

 堪らず、春香はポツリと声を漏らした。


 「せ、千くん?」


 千理は、その呼び方に立ち止った。

 暫く、熟考した後、はっとなり春香を改めて凝視した。

 ブロンドの髪、燃えるような真っ直ぐな瞳、今まで忘れていたことが不思議なくらい、今ははっきりと理解した。

 それも、幼さが抜け容姿端麗な姿を見たら、一致しないのも道理だろうと思う千理だった。

 気恥ずかしさを覚えた千理は、猛然と再び講堂に走り出した。

 

 それが、彼女との再会であった。

 過去の自分を知る者との再会。

 良くも悪くも、今後に支障が生じると、千理は頭を悩ませることになる。












































































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