表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツクモツクモノ ー 付喪憑者ー  作者: jenova
裏組織 神の選抜
8/25

8話 最寄駅の怪物達を掃討せよ

本格的に戦闘開始です。

家を出ると、辺りにはまだ静寂が広がっていた。まだこの一帯は無事な様だ。


「ここらぁ無事みてぇだな。どうする?さっさと親玉潰すか?」


「金口は国会議事堂にいるはずです。行きます? かなり危険になると思いますが……」


「こっからだと小一時間か……。電車使えるといいんだがな……。まあもたもたしててもしゃあねぇ、駅行こう」


こうして電車が運行していることを願い、俺達は駅へと向かった。



向かう間も穏やかな環境が続き、本当に一大事なのかと疑う程だった。しかし我々の街にある少し大きな駅に着くと、その疑惑は確信へと変わった。

様々な怪物が人々を襲っているのだ。成人、中年、お年寄り、親、子供、カップル、警察。駅には見るも無惨な姿の死体が複数転がり、逃げ惑う人々は阿鼻叫喚している。まさに「地獄絵図」だった。


「おいおいなんだこりゃあ……!」


「非道い……」


「っ…………!」


俺達が嘆きを漏らし立ち往生していると、刃物の様な物体がこちらへと飛んできたのだった。


「っ! メア! くっそ、ボスの前にこの駅だ。助けれそうなヤツは助ける、駅にいる怪物共をぶっ潰す。いいな?」


その刃に応戦する先生。定規の変化した双刀で刃物を押さえ、俺達に駅の沈静化を促した。


「分かりました!多川さん、ジュリエッタ、一緒に来てください」


「う、うん」 「うむ!」


「じゃ、じゃあ私は救助メインに頑張ってみる!歌川くんは破壊者カタストロフィ達をお願い!」


「わかった。皆、また会いましょう! 絶対!」


それぞれのする事を決め、俺はまずここの駅のホームを目指す事にした。



駅内は電気系統が全て壊されとても暗く、酷く落ち着いている。恐らくもう駄目だろう。助けられそうな人は誰一人いない。俺達は転がる死体に嗚咽を漏らしつつ、ホームの方へと向かった。すると途中、向かっていた方角からコツコツという足音が聞こえた。


「う、歌川君……。」


「だ、大丈夫。二人は下がってて」


「トーマス、くれぐれも無茶はせんようにな」


「あぁ。任せて」


俺は自信たっぷりにそう言うと、エリフを呼び出し剣を構えた。


「おやおやぁ、物騒ですねぇ……。刃向かうのですか?この我々にぃっ!」


ゲス声でそう言うとそいつは暗闇の中から鋭利な尾のようなものをこちらへと繰り出した。俺はすぐさまそれを受け流し、後方へと下がった。


「あ、あんた誰だ!?」


「私ですか? 私は織澤。神の選抜の一人ぃ! 選ばれしものなのだぁっ!ヒヒャヒャヒャヒャ!」


狂っていやがる。声質的に男だろう、「織澤」と名乗るこいつはそう言い笑うと、次は鋭く尖る大きな針を飛散させた。俺は後ろの人達に当ててはなるまいと必死で全てを弾いた。


「クソッ! 遠距離ばっかかよ! 相性悪いっての……」


ゲームの知識でしかないが、俺のやるゲームだと遠距離型は近距離の戦士タイプとはとても相性が悪い。間合いが読めないからだ。


「ヒヒャヒャヒャ!どうしました? まさか卑怯とでも言いたいのです? ヒヒャッ! 戦いに卑怯もクソもないんですよぉ!」


次は大きな針ではなく小さな針が無数に渡って飛ばされた。そして俺はそれを弾き返しながらある思いつきをする。「飛ぶ斬撃」だ。

アニメやゲームでよくあるあれだ。今なら撃てるのかもしれない。


「なぁエリフ! 斬撃って飛ばせんのか? 」


「私の霊力でなんとかなるぞ。しかし補助力が一時的に落ちてしまうがな」


「OK。俺が叫んだら合図だ。頼む」


俺はこれと同時に密かに考えていた事があった。技名を創ってそれを繰り出す事だ。恐らく全男子の夢であろう。これを俺は実現させるんだ。


この何処から来るか分からない予測不能な針の雨を受け流しつつ俺は考えた技名を大声で叫び、弾く手を止め、避けながら渾身の力で刀を振るった。


「いくぞっ! 筆刀流・飛翔払い!」


すると振るった刀身からは斬撃が飛び出し、暗闇を切り裂きながら織澤へと物凄い速さで飛んでいった。


「ぐおあああっ! 貴様ぁっ!」


「うおぁ!?」


俺の斬撃はヤツの腹部に当たり、ダメージを与えた。しかし、その斬撃の力に耐え切れず、俺は後ろに吹き飛ばされた。


「ト、トーマス!? どうしたのだ!?

「歌川君!?」


「ケホッ! コホッ! だ、大丈夫。痛ったぁ……。反動でかすぎだろ……。」


「私にも補助できない部分があると言ったな? 陶馬。この反動は正にその適応外の所。君の未鍛錬が悪い」


「はい…………。」


こいつに補助出来るのは攻撃力、守備力、素早さ、身体能力のみ。

攻撃を受けた時の体への外傷や、今の反動などは適応外の様だ。力が上がってるなら出来そうなもんだが、実に不思議だ。まあしかし、俺の貧弱なボディがさっきのを耐えるはずない。エリフの指摘はとても痛いところをついた。


「いい気に……なるのは……よしなさい……。ぐっ……。私には……まだ……能力が残って……。ぐはっ! ああっ、金口……様……。最後まで……お仕えできず……申し訳……ごはぁっ!」


息絶えてゆく織澤がそう言い残すと俺達の居る駅内部に向かい風が吹いた。そして散乱する死体の血腥い臭いと混ざって灰がこちらへ飛ばされた。


「一体撃破……かな」


「よくやったぞトーマス!大成功だっ!吾輩の能力を使うまでも無かったなっ!」


「やっぱすごいな、歌川君は。さ、ホームに行こう!」


「はい!」


織澤を倒した俺はジュリエッタ達と再びホームへと向かう事にした。


ーーーー二十分前、駅広場



「さて、どうすっかな……」


受け止めていた刃を弾き返すと俺は咥えていたタバコを吹き出し、戦闘態勢へと入った。


「聞いていたのより随分老けてるなぁ、歌川って。オッサンじゃん、これじゃ」


「お前らの邪魔もんがあいつだけだと思ってんのか? クサレ集団神の選抜さんよぉ」


刃物を繰り出していたのは歌川や色島なんかとよく似た年の女だった。ガムを噛んでいて、くっちゃらくっちゃらと五月蝿い。髪はボサボサで色が抜いてある。服はパンクなロッカーテイスト。娘が大きくなっても絶対させたくない格好だこれは。


「何、ウチら貶そうっての? なんとでも言えばいいさ。ウチらが正しいんだから」


「正しい? この惨劇の何処がだよクソが!」


「こうでもしないと駄目でしょこの国。作るには一回壊さないとダメなのよ!」


女は感情的になると、再び刃物を飛ばしてきた。それを弾くと次は腕を刃物に変え、こちらへと向かって来た。


「はぁっ!」


「おるぁよ!」


キーンという金属のぶつかる甲高い音が耳に痛い。あまりしたくないがその思いも虚しく、女は次々と俺に刃を振りまくる。面倒だが全て俺の双刀で受けるしかない。


「っち……。めんどくせぇなぁ!おらぁ!」


女にに隙ができ片方の剣を胸に突き刺そうとすると、ヤツは悪足掻きのように技を繰り出した。


旋律ダーティ暴走ノイジー!」


女がそれを使用すると周辺に不協和音が響き渡り、俺の聴覚に嫌悪感を刻んだ。


「うおぁぁ! なんだこれぇ! 気持ちわりぃ!」


俺はあまりの気持ち悪さに叫び、フラフラと体制を崩した。するとそれを狙って女が飛び掛かって来た。


「あたしの鎮魂歌レクイエムで眠りな! たぁっ!」


「こんなガサツ音楽で眠ってたまるかよっ! メア、変化だ!」


「……分かった」


俺は双刀に変化を指示した。そうすると持っている双刀は形状を変え、一本の大剣へと姿を変えた。そしてその大きな一撃を女に与える。


「たぁらっ!」


「ぐはぁっ! ……形状変化……だとっ!?」


「ふんっ、こいつぁ現状を“測る”事の出来る剣だ。場に応じて臨機応変に二パターンに変化する」


「お……のれ……」


女は俺の斬撃を受け倒れると、次第に体が酸化していき、バラバラになると鉄粉が星空へ風に煽られ舞っていった。


「……お疲れ、刃也」


「あぁ……」


メアのか細い声が一段と小さく聞こえる程にあの汚い音がまだ耳に残って気持ちが悪い。俺はこの戦場と化した駅で安全地帯を見つけ、少し休む事にした。




ーーーー五分後、駅のホーム




俺達三人は暗くなった道をなんとか抜け、あまり来ることの無い夜のホームへと到着した。


「誰も……居ないみたいだね……」


「うむ。遅かった様だな……」


恐らく先程倒した織澤とやらが全員殺したのだろう。地面に落ちてある死体はすべて鋭いなにかで貫かれていた。落胆しながら辺りを手分けして散策していると、俺達の来た階段を登る音が聞こえた。


「っ……!?」


「敵かっ!?」


警戒しながら階段へと視線を集中させていると、女の子が登ってきた。色島さんだった。


「あっ!皆!良かったぁ……」


安心した俺達は、彼女の方へと走りよった。


「色島さん!救助どうだった?」


「それがね、誰も息をしてる人が居ないの……。ほんと酷いよ……」


どうやら全滅の様だ。彼女の様子からして、この亡骸が転がる惨状がずっと続いていたのだろう。


「れ、憐香ちゃん……。クソッ!金口の野郎ッ……!」


「レンティーヌ……。あまり気を落とすな……。全てその悪の組織の仕業だっ!」


ジュリエッタも多川さんもそれぞれ怒りを露わにしている。その気持ちは俺も同じだった。


「絶対金口を倒そう。こんな事、許されない」


「うん。絶対に……っ!」


俺達はより団結し、金口を倒す事を堅く誓った。


「とりあえずここのを全滅させよう。先生も心配だし」


「うむ。あの重喫煙者ヘヴィスモーカーなら大丈夫だとは思うが……。」


「数いたらヤバイかもね、あの人でも」


「急ぎましょ!」


先生の元へ行くため、俺達は無人のホームを後にすることにした。




織澤を倒した通路を戻り駅内部から出ると同時に、こちらへ先生が跳ね飛ばされて来た。


「先生っ!?」


「っ……。これくらい何ともねぇよ……。それよりあの野郎……。気ぃ付けろ」


地鳴りのように響く足音。先生が警戒するその正体はなんと、俺と色島さんが捕まった時にいたあのガチムチ大男、「劉丁」と呼ばれていた男だった。


「……丁度いい。お前ら、仲間か。纏めて、消してやる! はぁぁ……」


「来る……!」


約10m先、ヤツは目を瞑り気を溜めるような動作をし、それを終えると目を開いた。そして両腕をくねくねと動く蛇の如き長い骨へと変化させた。腕が変化するのと同時に、ヤツの顔の半分が骨が剥き出しの状態になった。あちらが戦闘態勢に入ると、すぐさまこちらの武器を持っている俺を含む三名はそれを構えた。


「中ボス戦ってところですね……」


「こいつに負けてる様じゃ、金口をなんざぁ話にならねぇだろうよ。気合入れていくぞ!」


「後方射撃はお任せ下さい!」


「何人いても無駄。全員、消してやる」


「頼りにしてるぞ、トーマス!」


「僕らは邪魔にならないように隠れてるから、頑張って!」


ジュリエッタと多川さんは駅付属の店内へと身を潜めるため走っていった。


だがヤツはそれを狙わず、ジュリエッタ達が逃げるのを待っていたのだ。


「無力な者、興味無い。目的、お前らだけ」


ジュリエッタ達が中へ入り、姿が見えなくなると、劉丁との戦いが幕を開けた。


髄龍拳ついりゅうけん!」


そう言うとヤツの両腕が伸び、龍のようにウェーブを描いてこちらへ向かわせた。そして両腕を絡み合わせ、先端手部分の頭のようになった物が俺達に素早く襲い掛かる。


「うらぁ!」


真っ先にそれに応じたのは先生だった。持っていた双刀を振るい、果敢に骨の龍へ挑む。それを見て俺もすかさず助太刀に入る。


「先生! 援護します!」


「助かるぜ、歌川! お前は本体頼む!」


「わかりました!」


先生と色島さんに龍をまかせ、俺は本体である劉丁へと突っ走る。

「行くぞエリフ! 筆刀流 一閃払い!」


腕から龍を放出するこの大男の懐に潜り込むと、俺は思いっきり刀を横に薙いだ。


「甘い。腕だけ、じゃない! ふんっ!」


しかしその一撃にヤツは加撃部分から隆起した肋骨の様なものを紡ぎ合わせガードし、攻撃を受け流した。そして肩から鋭く白い棘を出し、標的を俺に合わせた。


「っ! まずい!」


そう思った時、後方から一本の矢が飛ばされ、その棘を打ち破った。


「色島さんナイス……!」


「ちぃっ……。小娘、邪魔ぁ!」


俺への攻撃を妨害され怒りを隠せない様子。劉丁は先生が戦っていた腕を色島さんへと集中させた。


「まずいっ!」


「任せろ歌川ぁ! てめぇはそいつに徹底しやがれ!」


「はい! お願いします!」


彼女を先生に任せ劉丁の方を見ると、ヤツは胸元から新たに腕を生やし、その腕で突っ張りを俺に繰り出した。


「っ!? やばい!」


俺がこのダメージを受ける覚悟をした時、エリフが俺に語りかけた。

「斬撃を飛ばせ!」


「お、おう! たぁぁっ!」


俺の飛ばした刃は上手く突っ張りを相殺し、俺は反動で後ろへ飛ばされ地面に尻をついた。


「ありがとう、エリフ」


「礼を言っている暇があるのか?」


「歌川っ! 行ったぞぉ!」


先生とエリフにそう言われ立ち上がって後ろを向くと、ターゲットは俺になったようで先生達の方に行っていた腕を折り返した。


「くっ…………! ん? そうか! 読めたぞ!」


半分当てずっぽうだが危機一髪なこの状況下に置かれた俺に、この戦闘の回答が舞い降りた。自らを信じ、その導き出した答えを試みる。


「当たっててくれぇっ!」


俺は一番初めの戦闘時のように思いっきり空へと飛び上がり、向かい来る骨龍を回避した。するとその龍は勢い余ってそのまま主へ襲い掛かったのだ。


「よし! 大正解!」


「ぬぐぁっ…………! 何故……だ……」


龍のあぎとが抉りとったヤツの身体は、やはり血を出さずに無が広がっている。


「お前の龍は自動オート操作。命令プログラムは主に攻撃を加えた者への反撃。こんなところか。そうだろう、違うか?」


飛び上がった身体を地へ降ろすと、俺は自信を持って劉丁に言ってやった。


「自らに……負ける……とはっ……。ごふっ! だが……金口……様……作戦……成功…………。ぐぼっ……あ……」


劉丁はその場に倒れ、その巨体は灰となり跡形もなく消え去った。


「すげぇじゃねぇか歌川!」


「すごいね!陶馬君!」


戦いが終わり立ち尽くしていると、先生と色島さんがこちらへ走り寄ってきた。そしてそのすぐ後にジュリエッタ達も店を出てやって来た。


「トーマス!流石だ!」


「歌川君! やっぱ強いねぇー、君!」


皆が俺を賞賛する。とても気持ちが良かった。


「俺の力みたいです。戦闘中に学ぶ、ってこと」


誇らしげにそう言い、俺達は少しの間勝利の余韻に浸る事にした。

しかし妙だ。俺達がここに来た時居た他数体の化け物達は何処にも居ない。ホームにも駅内にも俺が通った道には死体のみ。劉丁を打ち負かしたこの広場も同じで、気味の悪い程に静まり返っている。


「にしても、静か過ぎじゃ無いですかね?」


「だよな……。戦ってて気付かなかったが、言われてみると不思議だ」


どうやら皆思っていたようだ。多川さんが疑問を言い放つと、先生も同意した。するとここでジュリエッタが辺りを見渡し、

「っ……!? おいトーマス! 街! 街だ!」

と俺の家がある、来た方の街を指さした。その方角に目をやると炎が天に登り夜空を焦がしていた。


「そういうことかっ……! 奴ら、街の方に行ったんです! だからここはもぬけの殻に!」


「クソッ! もう少し周りに気を配っときゃあ……!」


「嘆いていても始まりませんっ!私達の街、救いましょ!」


俺達は現状を察し、大いに焦った。しかし色島さんの一言で落ち着きを取り戻し、全員で炎の舞い上がる場所を目指す事を決めた。



続く

途中で先生視点へ変えてみましたが、場面変更はこの様な感じで良いでしょうか? 提案があれば是非言って頂けると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ