呼び出されてポイ!?
「何だよ! これ! こんなのいらないよ!」
その直前まで、僕はぽかぽかとした暖かい場所にのんびりしていたのに、突然ピカッとしたと思ったら 次の瞬間には地面に叩き付けられていた。
ひどいよね?
その上、足で踏みつけようとか理不尽すぎる。
僕は焦ってピョンピョンと草の中に逃げ込む。
周りで、ギャハハと下品な笑い声に包まれている。
チョロッと除き見ると数人が笑い転げている。
彼等の周りには、戌みたいのや猫みたいのや馬みたいのやがいる。
ウム。あれらは追い出されずに必要とされたらしい。
それはともかく、僕のお家は?
ここが何処かも判りません。
何方か僕のお家(生息地)何処ですか?
神様ヘルプミー!
☆ ☆ ☆
カサカサ草むらを隠れる事数時間。カサカサしてきました。
ヤバいのです。
乾燥して来ました。
水が必用です。水場は何処ですか?
水
生き物は水が必用。ゼリーの塊には特に。
あちこち放浪していたら、目の前に美味しそうなみずみずしい葉っぱを見つけました。
モシャモシャ食べてみます。
横でウサギみたいなのがもモシャモシャしてるので案の定美味しです。
「いや! 私の薬草が!」
何か雄叫びが聞こえましたが?
はて?
と周りを見上げれば、ピカッと光が当てられます。
む? また光ですか?
何か違うみたいだけど?
ウサギがささっと逃げて行きました。
さすが脚が速いです。
ええと。
僕は足はない!
逃げ足は、聞かないで下さい。
☆ ☆ ☆
「ゴキチャンならともかく、スライムが湧いたら大問題だろう」
僕は檻の中で、クテッとしてました。
ええ、直ぐ捕まりました。
「でも私の薬草食べてました!」
自分の世話していた畑を荒らされて、お冠。
被害届は、出されていたらしい。
でもなんか、釈然としません。
被害届? 僕が食べたのはさっきが初めてなのに、被害届?
「そもそもゴキチャンは薬草かじるのですか?」
「食べたのはこの子! 証拠は見たまんま」
檻のゲージを開けて、ニューと手で掴まれました。
腹の中には消化中の薬草が。
はい。食べてました。
「……契約されてませんね。となるとやはり」
優しい目が細められます。
「う」
騒いでいた少女は、一歩後ろに下がります。
「マロンさん、お仕事ですよ。結界と結界石の再確認。綻びや隙間がないかきっちりと調べて下さい」
契約のされていない生き物の出現は一大事に繋がる。
「うえ、先月したばかりですよ」
「ええ、それで抜け道を見つけましたね。結界の強度に影響が出ますので、再調査をお願いします。放置して隙間から入ったネズミが増えると貴女の畑が今以上に危ないですよ?」
その脅しは効果抜群だったらしい。いや、過去にネズミに荒らされていたのか。彼女はハッとするとシュタと敬礼した。
「一秒でも無駄に出来ません! 本時刻よりマロン隊は結界の再確認作業に入ります!」
そのまま素晴らしいスピードで飛び出す。
パタパタ遠ざかる足音を見送り、手の中のクテッとしたスライムに少年は視線を向ける。
「やれやれ、死にかけてますね。無理もありません。この地域はスライムは居ませんから」
いえ、乾燥しているのでお水プリーズ。
撫で撫でされながらうとうとして来ます。冬眠モードが発動したらしいのです。乾季はこれで乗り切るので、おやすみなさいなのです。
うとうとうとうと
「あ」
つるり、ボト!
ドボン
アチアチ!
僕は目を醒ましました。
どうやら彼の飲みかけティカップにダイブしたらしいのです。
熱いのです。
でも水分なのです。
しかし熱いのです。
アチアチ!
ピコンと電球マークが表示されたのは気のせいでしょうか?
どうやら身体のゼリーが熱を緩和して熱水は適温に下がったみたいです。
「……」
プカプカ。
ペロッ
ウム。美味しいミルクティです。
甘くて幸せです。
またピコンと電球が出ましたが、何の事か分からないので放置してご飯を吸収することに専念します。
「熱耐性取得?」
少年が何か呟いていますが何の事でしょう?
「薬草採取? 調合? まてまて……」
満腹になった僕は、おやすみなさい。
冬眠モードではないですよ。昼間さんざん走り回り疲れたのです。
おやすみなさい。
プニプニ弾力のある水分たっぷりな僕をティカップから持ち上げ観察されてます。
「ああ、クテッとしたのには水不足か。あとは」
少年はの独り言を遠くに聞きながら、僕は眠りに入る。
本当に疲れたのです。