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ニートの俺が勇者に間違われて異世界に  作者: 五月雨拳人
第四章
76/127

剣と盾

          ◆     ◆


 最強の盾が、最強の武器に変わった。

 いや、最強の相棒パートナーと言うべきだ。スクートは盾ではあるが、モノではない。


 持ち手を固く握りしめる。心なしか、スクートの高めの体温を感じるような気がして、シャイナは小さく笑みをこぼした。

「あら、ちょっと盾が変化したからって、もう勝った気でいるの? 気が早いにもほどがあるわね」

 それを余裕と受け取ったのか、スブメルススが不機嫌そうな声を上げる。まあ実際、負ける気など髪の毛の先ほども無いわけだが。


「ま、何を持ってこようと、あたしの鱗はびくともしないけどね」

 ふふん、と鼻を鳴らして、スブメルススは自慢するように、大型爬虫類みたいな手で太い腕の鱗を撫でる。乾燥を防ぐ粘液が塗り込められた青い鱗が、陽光を受けて金属に似た光沢を見せる。

 だがそれは単なる自慢ではなく、厳然たる事実であった。しかも鱗だけでなく、触手の強度も以前とは比べ物にならない。おかげで剣は刃こぼれだらけだ。


 しかし、以前とは比べ物にならない進化を遂げたのは、スブメルススだけではない。今しがた、スクートがこの世界の盾の常識を覆す進化をやってのけたばかりだ。しかも、この進化が見た目だけではないのは、こうして持っただけでも充分にわかる。


 こいつは最高だ。

 最高の相棒だ。


「確かに、お前の鱗はクッソ硬かったが――」

 シャイナは構えた盾を見て、一度頷く。それは、相棒と呼吸を合わせるための合図のようなものだった。

「こっちはもっと硬え」

 音もなく足を踏み出す。滑るような歩法で間合いを詰めるシャイナを、以前と比べて太さが倍、長さが三倍以上になった触手たちが迎え撃つ。


「ったく、何をどんだけ食ったら、たった数日で再生できんだよ……」

 呆れと驚きが混じった声で、シャイナがつぶやく。迫り来る八本の触手は、初手からいきなり一点集中。一本の大木と化して飛んでくる。

 やはりシャイナは怯まない。むしろさらに踏み込み、触手の束に歩を進める。傍から見たら、明らかに自殺行為。


 触手がシャイナを貫く。そのギリギリのタイミングで、シャイナが左に体をかわす。と同時に盾の刃を触手の束に沿わすように触れさせた。

 瞬間、鉄と鉄をこすり合わせるような耳障りな音が鳴り響く。あまりに不快な音に、平太たちは思わず両手で耳をふさいだ。


 盛大に火花を散らしている触手の脇を、シャイナが平然と歩き抜ける。音はその間ずっと鳴り続けた。やがて音が鳴り止むと同時に、シャイナは剣で斬り上げるように盾を振り上げた。


 きん、とこれまでの脳を直接引っかかれるようなものとは違う、澄んだ金属音が響く。

 音の正体は、鱗だった。触手から剥がれた鱗が、地面に落ちた音だった。


 静寂。


 あれだけ騒音を出したわりにはお粗末な結果に、スブメルススが笑い出す。

「なにそれ? それだけ? 大見得切ったわりには、たった一枚鱗を落としただけなの? やだ、恥ずかしー。ねえ、今どんな気分? あれだけカッコつけたくせに、ほとんどあたしに傷つけられなかったってどんな気分?」


 ぷぷぷぷーと、スブメルススは心底おかしそうにシャイナを指差しながら笑う。

 だがいつものシャイナなら、そんな事をされたらマッハでブチ切れそうなのに、むしろ少し哀れみを含んだ視線でスブメルススを見つめている。

「お前、気づいてないのか?」

「な、何がよ?」


「そっか、身体がデカくなると色々鈍くなるんだな」

 そう言うとシャイナは、今自分が通り過ぎてきた場所を指差す。

 スブメルススがその指先を視線で追うと、それまで上機嫌の最高潮だった表情から、仰天へとかわり、一気に血の気が引いていくのが見えた。

「な、何よこれええええええーーーーっ!?」

 シャイナが指差した先には、今しがたシャイナが斬りつけた触手の束があった。


 ただし、八本あったはずの触手が、十一本に増えていた。

 いや、増えたのではない。束の一番太い部分、三本の触手が重なった箇所が横半分に切り分けられており、そこだけ数が倍になっただけだ。


 つまり、一刀両断。

 剣では傷ひとつつけられなかった触手が、今の一撃で三本まとめて開きにされている。


「そんな、あたしの鱗をこんなにあっさり……」

 絶対の自信を持っていた装甲を簡単に破られ、目に見えて動揺しているスブメルススに向けて、シャイナはにやにや笑いながら問う。

「なあ、今どんな気分だ? あんだけ余裕ぶっこいて、あっさり触手三本開きにされるってどんな気分だ?」

 うわあ、と平太が声を漏らすのが聞こえた。自分でも性格が悪いなとは思うが、先に売ってきたのは向こうだ。売られたケンカは借金してでも買うのが、シャイナの信条である。


 しかも、これはもう自分だけのケンカではない。自分とスクート、二人のケンカだ。だからやられたら徹底的にやり返す。どんな事でもだ。

「よくも……一度ならず二度までも、あたしの身体に傷をつけたわね」

 怒りで真っ赤に染まった眼で、スブメルススがシャイナを睨みつける。人型だった姿を捨て、魔物本来の姿に戻ると言動もそれらしくなるのか、今のスブメルススはその醜い巨体に相応しい荒れ狂った怒りを真っ向正直にシャイナにぶつけていた。


「お前も八つ裂きにしてやる!!」

 呪いのような怒声とともに、スブメルススは残った五本の触手を一度振りかぶるように自分の元へと戻す。半分に割かれた触手は、もう動かせないのかその場に力なく伸びていた。


 もの凄い勢いで触手を自身の後方に引き戻すと同時に、スブメルススはでっぷりとした腹を一瞬で凹ませる。

 それを見たシャイナは、条件反射にも似た素早さで盾を構える。とほぼ同時のタイミングで、超圧力を加えられた水流が盾を貫かんと襲った。


 じゃっという音とともに、ウォータージェットを超える水流が、盾に穴を開けんと表面を叩く。その威力は、かつての水鉄砲よりも遥かに強い。それが間断なく、ひと繋ぎの水流となって一箇所に当たれば、どんなに硬く分厚い盾でも貫くであろう。


 だが、スクートはびくともしない。

 そんな事は当たり前である。何しろスクートたち聖なる武具は、この世界の神自らが創り出した、謂わば神の力そのものを具現化した存在なのだ。魔王や神殺しの竜ならまだしも、四天王クラスの魔法や攻撃など物の数ではない。


 それに、そんな理屈はどうでもいい。スクートのシャイナを守りたいという気持ちは、どんな攻撃にも負けないのだ。シャイナを守るためなら、スクートは竜の炎だって受けきって見せるだろう。


 山をも貫通するような水の槍を、スクートは完全に受けきった。当然、穴どころか傷ひとつついていない。そしてシャイナも、スクートなら絶対大丈夫と信じていた。


 だから水の勢いが弱まると同時に、シャイナはスブメルススに向かって駆け出した。ちょろちょろと湧き水の如く衰えた水がスブメルススの口から漏れるのを、追いかけるように走る。

「くっ……!」

 水が効かぬ以上、もうスブメルススに残された攻撃手段は触手しかない。しかし、それはすでにスクートの刃に断ち切られたばかりである。それでも背に腹は代えられぬと、残った触手を総動員してシャイナを襲う。


 かつて八本すべて相手取ったシャイナである。五本に減った触手など、たとえ一本一本の太さや強度が増したところで大差はない。迫り来る触手の攻撃を鼻歌交じりに捌いたり切り返しつつ、シャイナは着実にスブメルススとの間合いを詰める。


 シャイナが近づくごとに、スブメルススの触手が一本、また一本と地面に落ちる。今やシャイナの戦闘力は、スブメルススをはるかに凌駕していた。

 最後の触手が断ち切られる。二人の距離は、お互いの手や武器が届くところにまで来ていた。

「ぐぬぬぬぬぬ……」

 ただの人間に二度もすべての触手を切断され、スブメルススの四天王としてのプライドはずたずたであろう。しかも相手は勇者の武具を持っているとはいえ、鎧も着ていない女なのだ。


 ただでさえ人間など、容易く殺せる脆弱な生き物だ。今や丸太と化したスブメルススの豪腕なら、ひと撫ですればシャイナであろうとその限りではない。そんな虫にも等しい相手に、どうしてここまで追い詰められているのか。スブメルススにはまったく理解できなかった。


 そもそもスブメルススは、水鉄砲や触手などの特技だけで四天王に登りつめたわけではない。巨躯を覆う硬い鱗と、獲物を骨ごと噛み砕く強靭な顎と牙。そして豪腕から繰り出される鋭い爪。純粋に肉体的な性能と戦闘力の高さで、彼女は魔王軍の中で名を立ててきたのだ。


 今まで本性を見せなかったのは、本来の姿があまりにも醜いので、彼女は魔物とは思えない自制心で食事制限ダイエットをしていただけなのだ。

 だが今、シャイナへの敵愾心でその封印を解き、あれほど嫌いだった元の姿に戻ってまで再戦したのに、

「どうして、たかが人間に勝てないのよ!?」

 叫びながら右腕を繰り出すが、シャイナには当たらない。当たれば、当たりさえすれば紙のようにあっさり斬り裂けるのに。

 むしろかわしざまに斬りつけられ、指が何本か飛ぶ。鋼すら引き裂く爪のついた指が、冗談みたいに軽く宙を舞う。


「たかが人間? 偉そうな事言ってんじゃねえ。あたしに言わせりゃ、たかが魔物風情が人間サマに勝とうってのがおこがましいんだよ」

「たかが魔物風情、ですって……?」


 これまでにない侮辱に、スブメルススは指を失った痛みすら忘れ、血の溢れる拳を固く握りしめる。

「ああ、そうさ。お前らはいくら身体のデキが良かろうが、所詮生まれつきのもんだ。それをさらに伸ばしたりしようと、努力も鍛錬もしねえだろ。そういうのは動物と同じなんだよ」

「そんなの当たり前じゃない。竜が身体を鍛える? 火を吐く練習をする? 強い奴ってのはね、生まれつき強くて、ずっと強いものなのよ」


「だからお前はあたしに――いや、お前らは人間に負けんだよ」

 痛烈な言葉に、悔しさで歯を食いしばっていたスブメルススの顔が一転し、相手を嘲笑するように変わる。

「偉そうな事言ってるのはどっちよ? そりゃあんたも人間にしちゃ相当鍛えたようだけど、結局はその盾に頼ってるじゃない。あんたの持ってた、人間が作った剣じゃ、あたしに傷ひとつつけられなかったわよね。それってどーなのよ? 恥ずかしくないの?」


 思わぬ切り返しに、平太はシャイナに視線を移す。どうやって返すのかと思っていると、シャイナは盾を地面に突き立て腕を組むと、

「勝ちゃーいいんだよ」

 胸を張って実に堂々と言い放った。

「え……?」

「ケンカに卑怯もクソもねえ。使えるモンがあるなら、使わない方がマヌケなんだよ。それが例えカミサマが作ったモンであろうと、お前ら魔族に勝てるのならあたしは、いや、人間は迷う事なくそいつを使うね。って言うか、そのしたたかさが人間の強さだとあたしは思うね」

「え~……」

 スブメルススと平太の声が重なる。言ってる事はカッコいいが、ついさっき自身の努力が勝利の決め手みたいな話をしていたと思ったら、まさかの勝てば官軍理論。あまりの手の平返しに、さすがの魔族もドン引きである。


 だが、話はそこで終わらない。

「それに、他力本願も今だけだ。人間はいつか必ず、神なんかに頼らずとも自分たちだけの力で、お前らに勝つ日が来る。絶対にだ」

 スブメルススには妄言に聞こえるだろうが、平太は知っている。人間は、己の力だけで空を飛び、星の外に出る力を持っている事を。だからこの世界の住人も、いずれは自分たちの力だけで魔物と対等に戦える技術や知識を手に入れる日が来るだろう。


 ただし、文明という武器を手に入れたこの世界の人間に、神や魔物だというものを受け入れる容量キャパシティが残されていたら、の話だが。


 さておき、あまりにも堂々たるシャイナの宣戦布告に、スブメルススはくつくつと笑いだす。

「他力本願の次は、未来に問題を先送り? ホント人間ってどうしようもない生き物ね」

「そのどうしようもない生き物に、お前は負けたんだが」

「……そうね。今回は、ね。けど次に戦うのが、あんたみたいなデタラメな人間とは限らないから。せいぜい頑張って強い子孫を残……ああ、あんたは無理か――」

 それが最期の言葉だった。断ち切られたスブメルススの首は高く飛び上がると、地面に落ちてわずかに転がった。


「っせーよでっけーお世話だバーカ……」

 生首はしばらく虚空を見つめていたが、やがて本体の魔力供給が途絶えたせいか、昼の陽に溶ける雪のように肉が液状化し、わずかな時間で白骨化した。見れば、胴体も切断された触手もすべて骨だけになっている。


 残ったのは、骨と鱗だけであった。

 シャイナと、スクートの勝利である。

「ふう……」

 シャイナは小さく息を吐くと、地面に盾を突き立てる。すると、淡い光を放ちながら、盾は少女の姿へと変化した。

「おねーちゃん……」

 二人での初勝利を喜び、スクートがにっこりと笑う。

 笑いながら、スクートはゆっくりと地面に倒れた。


「なっ……!?」

 突然の事に硬直するシャイナの目の前で、スクートは音もなく地面にうつ伏せになる。慌てて駆け寄り抱き上げると、スクートの身体は驚くほどの熱を帯びて汗にまみれ、荒い息をしていた。

「スクート! おい、しっかりしろ!」


 突然熱病にかかったようなスクートに、シャイナは何度も呼びかける。だがすでに意識はないのか、苦しそうに息をするだけで反応が無い。

「おい、こりゃ一体どーいう事だよ!?」

「お、俺にわかるわけないだろ……」

 もの凄い剣幕で平太に問うが、彼だってまったくわけがわからない。

 おろおろしている二人の前に、グラディーラが現れる。彼女は苦しそうにしている妹を見やると、「やはり……」と辛そうな顔でつぶやいた。


「おい、やはりって何だ!? お前、何か知ってるのか!?」

 噛みつくような勢いで、シャイナがグラディーラを問い詰める。

「それは……」

 グラディーラは言葉を探しながらも、手はスクートの頭を優しく撫でる。

「スクートがこうなったのは、恐らく無理をしすぎたからだろう」

「それって、盾からさらに変化したせいか?」

 平太の言葉に、グラディーラは「そうだ」と頷く。


「けど、お前だって何度も形を変えたじゃねーか。でも何ともなかっただろ」

 シャイナが言うのは、グラディーラが片手剣から大剣、大剣から大太刀へと変化した時の事だろう。だが、グラディーラは今回の事はその時とは事情が違うと言う。


「どういう事だよ?」

「わたしが変化したのは、あくまで剣という属性の中での範囲だ。だが今回は、スクートは盾でありながら、自身に刃を持つという属性破りを犯している」

「属性破り……?」

「わたしたち勇者の武具は、生まれ落ちたその瞬間からずっと、剣なら剣という属性の中で生きている。だから、その属性の範囲内ならどんな形状にでも変化できるが、属性以外の物に変化する事はできん」

「できん、って……現にこいつはさっき――」

「だから、禁を破ったスクートには罰が下ったのだ」


 罰と聞いて、シャイナは言葉を失う。

 そして気づく。今こうしてスクートが苦しんでいるのは、

 自分が強い武器を欲したから。

 それにスクートが応えた。

「……あたしの、せいか……」


 愕然のあまりスクートを取り落としそうになるシャイナの腕から、グラディーラは静かに妹の身体を受け取る。

「そうではない。仮にお前がそう望んだとしても、それに応えたのはスクートだ。こいつが自分で選んでそうしたのだから、お前が気に病む必要はない」

「けど……」

「だが、禁忌破りが我々の身体にどういう影響を与えるか、これで明白になっただろう。願わくば、こういう事はこれきりにしてもらいたい」

 そう言うとグラディーラは、スクートを腕に抱いたまま姿を消した。恐らく別の空間で、本格的にスクートの治療をするのだろう。

          ☽

 グラディーラたちが消えた後も、シャイナは動かなかった。ただ両の拳を握りしめ、立ち尽くしている。


 グラディーラの言葉は、激しくも冷たくもなかった。ただ整然と事実を述べ、自身の希望を伝えただけだ。だが、それゆえにシャイナの心には、深く突き刺さるものがあったのだろう。


 平太は、そんなシャイナにかける声が見つからず、かと言って無言で立ち去りにくく、視線をあてもなくあちこちに泳がせていた。

 その時、スブメルススの死骸が平太の目に入った。

 最初はでかい頭蓋骨だなとか、肉は溶けても骨や鱗は残るんだなとか、どうでもいい事を考えていたのだが、

「――あっ!」

 突然、ある事が閃いた。いや、それは必然だったのかもしれない。何故なら、彼は今までずっとこうしてきたのだから。


 平太は弾かれたように、スブメルススの死骸に駆け寄り、もの凄い勢いで飛び散った鱗や骨を集めだした。

「ヘイタ、何をしているんだい?」

「そんな物を集めて、一体どうするのですか?」

 いきなりの奇行に、ドーラやスィーネたちが彼を心配して集まる。敵の死骸を集めるなんて、コイツとうとう頭がどうかしやがったかと言わんばかりの視線で。


「まさか、お墓でも建てるつもりではないでしょうね……」

 変なところで甘い平太の事である。まさかとは思うが、という口調でスィーネが尋ねると、平太はようやく皆が己の行動を不思議がっているのに気づいた。

「違うちがう。スブメルススの骨や鱗を集めてるのは、そんな事のためじゃないよ」

「だったら、何のためです?」


「こいつをデギースに送って、シャイナの新しい剣を作ってもらうんだよ」

 そう、平太は素材集めをしていたのだ。敵を倒したら、まず素材を剥ぐ。ゲームでもう何万回繰り返したかわからない動作だ。

 新たな剣、という言葉に、それまで微動だにしなかったシャイナが、首がもげそうな勢いでこちらを振り向く。


「今、何て言った? 新しい剣だって……?」

「ああ。これだけ硬い素材だ。デギースにかかれば、きっと俺のカニ剣みたいなとんでもない剣を作ってくれるに違いない」

「それじゃあ、もうスクートにあんな真似を……」

「させないで済むさ」

 平太が親指を立てる。と同時に、シャイナは慌てて甲板に這いつくばるようにしてスブメルススの鱗を集め始めた。まるで一枚たりとも見逃さないように。

 平太たちも、彼女に負けぬように床にへばりついた。

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