パクス大陸上陸
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平太たちが乗船してから十日後、船は無事パクス大陸に到着した。
寄港したのはウィルトースラという港町で、これはパクス大陸の北東に位置する。
また平太たちはあれから勇者巡礼について調べ、勇者が最初に武具を求めて訪れた地がウィルトースラから近い事がわかった。
霊山スピルトゥンス――勇者が伝説の剣を手に入れた場所だと言われる山だが、今では山頂に神殿が建ち、巡礼者が後を絶たないという。
「……完全に観光地だな」
ウィルトースラの港町に降り立った平太は、タラップを降りた瞬間から目に飛び込む旅籠や土産屋の幟を見てうんざりしたようにつぶやいた。
見れば、周囲はみな同じような真っ白い巡礼装束を着たものたちばかりだ。装束の集団を引率するツアコンのような者まで存在し、ますます四国の遍路ツアーを想起させる。
平太の前を集団が通過し、ツアコンの導くままに土産物屋に入っていった。
「あれ絶対店からマージンもらってるよなあ……」
「いい商売だね」
平太とドーラがじっとりとした目で装束集団を見ている傍らで、スィーネは土産物屋で購入した巡礼ガイドマップを読み耽る。
「わたしたちの今いるところがウィルトースラ――始まりの地と呼ばれている場所ですね。ここから北に一日ほど歩けば、勇者が最初に剣を手に入れた霊山スピルトゥンスに着くようです」
スィーネはガイドマップから視線を離さずに淡々と言う。
「徒歩で一日だと、馬ならすぐ着きそうだね」
「この本によりますと、巡礼は徒歩が推奨のようです」
「え~……。せっかく馬があるんだから、馬で行こうよ」
「別にあたしらは巡礼に来たんじゃねえんだしよう。それに推奨って事は、絶対じゃねえんだろ? だったらいいじゃん」
シャイナの声に、周囲の巡礼者たちがじろりと睨んでくる。一瞬で他の巡礼者全員を敵に回したかのような雰囲気に、さしものシャイナもたじろぐ。
「な、なんだよ……」
「あまりそういう事を大きな声で言うものではありませんよ。中にはわざわざ船を乗り継ぎ、馬をここに預けて巡礼する人もおられるようですし」
うわめんどくせ、と出かかった言葉をどうにか飲み込み、シャイナはただ「うへぇ……」と唸る。歩いて回ろうが馬に乗ろうが、巡礼することに変わりはないだろうが、と言わんばかりの顔と態度だった。
その点においては、平太たちも同感である。宗教的な規則や作法で決まっている、あるいは科学的根拠があるなどの理由ならまだしも、特に根拠のない、ともすれば自己満足や滞在期間を伸ばして少しでも金を落としてもらおうという狙い以外の何物でもないもののためにわざわざ苦労をするというのは、さすがにどうかと思う。
「どうする?」
ドーラはこの巡礼を希望した平太に判断を委ねるようだ。
「どうするって言われても……」
「お前が言い出した事だ。お前が決めろ」
どうやらこの勇者巡礼の間だけは、平太がリーダーらしい。だがリーダーシップなどとった事がないので、突然肩にのしかかってくる責任やプレッシャーに吐きそうになる。
「そんなに難しく考える必要はありませんよ。貴方がどうしたいか、それだけ考えれば充分ですから」
「そうですよ。ヘイタ様が決めた事なら、わたしはそれに従います」
重い。大げさかもしれないが、自分の決断で一行の進む道が決まってしまう重圧に、平太の思考がぐるぐる回る。
普通に考えたら効率優先で馬一択である。が、周囲を見れば皆徒歩で、自分たちだけが馬に乗って進むのは許されない空気である。右に倣えの日本人気質と言うか、周囲に流され他人と同じ事を尊ぶ性質が災いし、平太はなかなか決断できない。
馬、徒歩、馬、徒歩と頭の中で二つの答えを行ったり来たりしていると、
「とりあえず、まずは食事にしませんか?」
とスィーネが提案をした。
「そうだな。なんか小腹も空いたし、軽く何か入れていくか」
「そうだね。ここで立ち話もなんだし、何か食べながら考えたらいいよ」
シャイナとドーラもそれに賛成し、一同は何か軽食ができる店を探すことにした。
平太は答えが一時保留となり、助かったと思うと同時に、今のはスィーネなりの助け舟なのではないのかと気づく。
視線でスィーネを追う。相変わらず無表情で、何を考ているのかさっぱり読めない。精巧な人形のような顔からは彼女の意志はほんのわずかも漏れ出ておらず、平太は自分の考えに自信が持てなくなった。
「まさかな……」
適当に目についた茶屋に入り、平太たちは名物の菓子をいくつか注文した。茶屋と言っても土産物屋の一角に椅子や机を置き、店内の土産を試食代わりにつまみながら茶を飲むスペースだった。
給仕の娘が平太たちのテーブルに注文を並べると、揃いも揃った勇者づくし。勇者と名付ければすべて許されるとでも思っているかのような、既存の菓子と何ら変わりのないものばかり。
これには一同苦笑いであったが、名物に美味いもの無しと言われるものの、中身はどこにでもある菓子なので大きなハズレはなく、どれもそこそこ食べられるものであった。
給仕の娘に尋ねたところ、パクス大陸には霊山スピルトゥンスの他に勇者ゆかりの地が百近く存在し、その観光利益が国庫の大部分を占めるのだそうな。
「百ってありすぎだろ……」と平太。
百とは言うものの、実際にはただ通り過ぎただけや一晩泊まっただけの場所もあり、数が多いのは他の土地にも均等に観光名所を分配する目的があるそうな。
「商魂たくましいね」
ドーラがこれは見習わねば、というように目を輝かせる。すでに充分商魂たくましだろという言葉を、平太は茶と一緒に飲み込む。
「それで、徒歩か馬のどちらで行くか、決まりましたか?」
頃合いを見計らったように、スィーネが平太に問う。
一旦間を開けたおかげか、もう迷いはなかった。
「時間が惜しい。馬で行こう」
平太の毅然とした言葉に、仲間たちは自然と笑みを漏らし、同時に頷いた。
徒歩で巡礼する人々を馬でさくさくと追い越し、平太たちは順調に霊山スピルトゥンスにたどり着いた。
スピルトゥンスは霊山というだけあってか、木々が生い茂った普通の山ではなかった。
例えるなら、大量の砂岩を積み上げただけのような荒涼たる山だ。霊験あらたかというよりは、むしろ寒々しくて死後の世界とか地獄を連想させる。
異質なのは、その殺風景な山の麓に大量の巡礼者が押し寄せていることだ。そしてその巡礼者目当ての商売が乱立している。
「観光地の山って感じだな」
「さっきちらっと見たけど、普通の食事で銅貨五枚だってさ。どんだけボるんだよって感じだよね」
平太とドーラの掛け合いをよそに、スィーネはガイドマップをめくる。
「霊山スピルトゥンス。かつてその山頂には聖剣が突き立っていたが、誰にも抜けずにいた。やがて月日が流れ、勇者が魔王と戦うために聖剣を求めてこの山を訪れたところ、聖剣は持ち主を選ぶかのように勇者の手に収まった――と書いてありますね」
「よくある聖剣伝説だな」
「でもさ、だとしたら聖剣ってもう山頂に無いんだよね。勇者が持ってったから」
「あ……」
ドーラの何気ない一言に、平太は乾いた声を上げてシャイナに「今気づいたのかよ……」と手痛いツッコミを入れられる。
「い、いや、でも聖剣って言うぐらいだし、魔王を倒して役目を終えたら、自分で元の場所に戻ったかもしれないだろ」
「犬や猫じゃないんだから、剣に帰巣本能はないんじゃないかなあ」
「だとしても、行けば何か手がかりくらいはあるかもしれないじゃないか。とりあえず行ってみようぜ」
苦し紛れにもほどがある。案の定、ドーラは毛ほども納得していない目で平太を見ている。
が、ここまで来て今さらあれこれ言うのも益がないと悟ったのか、「そうだね。何かあるといいね」の一言で終わった。
霊山スピルトゥンスへの登山を決めた平太一行であったが、この山は地面が弛くて馬で登るには無理があった。それでなくても細い道を巡礼者が登ったり降りたりしているので、彼らをかわしながら馬で進むのは非上に困難だ。
無理に馬で登って人とぶつかってもいけないので、仕方なく馬は麓の馬繋場に預け、徒歩での登山を開始した。
前を歩く巡礼者の後に続いて、平太たちは着々と登る。最初のうちは傾斜も弛く、軽い登山気分であったが、登り続けていくうちに傾斜もきつくなり、ペースがどんどん落ちていく。
おまけに砂が多いこの山は、雪道のように足が深く沈み普通に歩くより数倍の体力を必要とする。前を歩く巡礼者の歩みも、どんどん遅くなっていった。やはり誰でもきついのだろう。
「これは……結構キツいな」
「良い修行になりますね」
巡礼には、苦行を伴う修行の側面もあると言うが、霊山スピルトゥンスは登るだけでも苦行になる、まさに巡礼に相応しい山だった。
重装備のくせにただ一人元気なシャイナを除いて、一行は喋る体力すら惜しんで歩き続けた。
時折山頂から下山してくる巡礼者に挨拶を交わす以外は、誰も口をきかなかった。シャイナだけが鼻歌を歌っていた。
体力に自信のついてきた平太ではあったが、さすがに山登りは使う筋肉が違うのか、思った以上に疲れる。しかし以前の平太なら十分ともたずにへばっていただろうが。
すぐ後ろを歩くスィーネも、表情は平然としているというか、いつも通りの無表情であった。だがよく見ると白い顔は赤みがさし、汗をかいた額にはほつれた金髪が張り付いている。
スィーネからさらに十歩ほど後方を歩くシズとドーラは、もはや完全にへばっていた。ドーラは真夏の炎天下に放り出された犬みたく舌を出して、あえぐように呼吸をしている。シズはいつの間に購入したのか麓の土産屋で売ってた杖に、もたれるようにしてひょこひょこ歩いている。
これはさすがに限界か。そう判断した平太は、「少し休憩するか」と一同に呼びかけた。
前方を軽快に歩くシャイナを呼び止めると、彼女振り向きざまに「なんだもうへばったのか? だらしねえな」と言い放つ。
「そりゃお前と比べりゃ誰だってだらしねえだろ」と誰もが思うものの、シャイナは口ではああ言いながらちゃんと引き返して来てくれるので、誰も口には出さなかった。
「はあ、どっこいしょ……」
年寄り臭い掛け声をかけ、ドーラはちょうどいい大きさの岩に腰を下ろす。
「疲れました~……」
ドーラの隣に腰掛けたシズは、そのまま倒れ込むように後ろに身体を倒す。背負った荷物がクッションとなり、仰向けになった。スィーネは荷物の中から水筒を取り出し、水を飲んでいる。
平太はというと、
「ちょっとおしっこ行ってくる」
「……別にいちいち報告しなくていいよ」
心底どうでもよさそうに言い放つドーラをよそに、尿意をもよおした平太は適当な場所を探しに行った。
「しかし、本当に草木一本生えてないな」
どこか茂みで済まそうと思っても、スピルトゥンスには茂みどころか雑草ひとつ見当たらない。見渡す限り岩と砂で、視界を灰色が埋め尽くしている。
草木が無いとそれを食べたり寝床にする動物がいないせいか、生気がまったく感じられない。霊山というと神聖なイメージがあるが、実際に今立っている場所からはまったくありがたみを感じなかった。
登山道から外れ、立ちションできる場所を求めてしばらく歩いていると、平太は奇妙な感覚に襲われて足を止めた。
「……ん?」
違和感、とでも言うのだろうか。どう見ても行き止まりなのだが、そこだけ妙に空気が違うように感じられる。
「気のせいか」
口ではそう言いつつも、何故か足はここから離れようとしない。いつの間にか尿意も引っ込んでおり、平太は違和感の正体を探すのに夢中になる。
そこに気がついたのは、ただの偶然だったのかもしれない。
それとも、平太に何かしらの、異世界から来た者のみに与えられる異能のようなものがあったのかもしれないし、無かったのかもしれない。一番可能性が高いのは、そこがネットゲームにままある「今はまだ実装してないけどいずれ開放しますよ」といったゾーンに見られる不自然な背景バグに似ていたことだろうか。とにかく、平太はそこを見つけた。
何の変哲もない脇道に、継ぎ目のようなものがあったのだ。
ぱっと見では、本当に何も無いただの風景だ。しかし、よくよく見ると合成映像のような不自然な継ぎ目が見える。
「何だこりゃ?」
平太は恐る恐る継ぎ目に近づく。昭和の特撮のようなちゃちなものではない。数年前のハリウッド映画のCGと肩を並べるような、結構よくできた迷彩だった。
そっと手で触れてみる。わずかに電気が走ったような痛みとともに手が弾かれた。
「結界ってやつか!?」
どうやらこの継ぎ目は自然のものではなさそうだ。だとすると、何か物を隠しているのか、はたまた道を隠しているのか。とにかく誰かが意図的に偽装を施したことになる。
だがいくら角度を変えたり限界まで近づいても、見えるのは行き止まりでその先が見えない。
そこでふと、平太はある事を思いつく。
肉眼で見えないのなら、剛身術で強化した視力で見たらどうなるのだろう。
人間の目は可視光線しか認識できないが、その常識を無視して蛇やシャコみたいに赤外線やX線まで見えるようになったら、一体どんな景色が見えるのだろう。
ただ、人間の脳は可視光線で見たものしか処理できないようにできている。蛇やシャコみたいに他の光を受信する器官が存在しないからだ。
存在しない器官から得た情報を処理させるのだから、当然相当な負荷が脳にかかる事が予想される。下手をすると意識を加速させた時以上の負担が身体にかかるかもしれない。
加減を間違えると、この場で行動不能になるだけならまだしも、最悪身体中の穴から血を流して死ぬかもしれない。
ずいぶんとハイリスクな試みだが、いざという時のために今試しておくのも間違いではないだろう。
「よし……」
ごくりと唾を飲み込む。意識を目に集中し、自分の目が暗視カメラのレンズになったイメージをする。
視界がじょじょに変化し、まず最初に色が失われる。おそらく可視光線の認識を停止し、別の光線を受信するために調整を始めたのだろう。
次に物の輪郭が消えていくと、視界全体が赤く染まり、赤の濃淡で風景が描かれる。どうやら赤外線に切り替わったようだ。
「まるでサーモグラフィだな」
視界が熱感知モードに切り替わると、行き止まりだと思っていた風景の奥に道があるように見えた。
「隠し通路か?」
どうやらあの継ぎ目は何らかの方法で光を屈折させ、通路を隠した跡みたいだ。
そこまで確認できれば充分だ。平太は剛身術を解除し、視界を元に戻す。
視界に輪郭と色が戻り、本来の視覚を取り戻すと「ふう、」と安堵の息をついた。
と、その時、唇の上をぬるりとした生暖かいものが垂れる。
「ん?」
思わず手の甲で拭って見てみると、それは鼻血だった。やはり相当な負荷がかかっていたようである。赤外線でこれなのだから、X線を見ようとしたら脳が焼き切れるかもしれない。まあ赤外線よりX線を見る方が簡単かもしれないが、とりあえず今試す気にはなれなかった。
鼻血はひと筋垂れただけで、すぐに止まった。平太は仲間に心配をかけないように念入りに鼻血を拭って痕跡を消すと、この結界を報告しに戻ろうと踵を返す。
が、すぐに思いとどまってまたUターンした。
立ちションがまだだった。
「これは見事な結界だね」
ドーラが人差し指と親指で輪っかを作り、その輪を覗きながら感心したように言う。どうやらその輪っかに魔力を通して特殊なレンズにする魔法のようだ。
それによると、この行き止まりは何らかの魔術的な措置によって結界が張られている事がわかった。
「それにしても、よく気づいたね。かなり上位の魔法による結界だよこれ」
「そうなのか? いやまあ偶然だよ、偶然」
謙遜ではなく本当に偶然なのだが、ドーラは「ふうん、」とまあそういう事にしておいてやろうみたいな顔で平太を見る。
「しかし、どうしてこんな場所に結界があるのでしょう?」
「もしかして、この先にお宝でもあるんじゃねーのか?」
シャイナが冗談めかして言うが、殺風景な山ではあるが一応霊山である。それに巡礼者たちが昼も夜もひしめき合って人目もあるのに、それは無いだろうと思う。
だが、隠し通路というのは誰かが何らかの意図を持って隠したわけで、つまりはその先には何か隠しておかなければならないものがあるという事だ。
そしてここは勇者が伝説の剣を引き抜いた霊山。これらの情報を繋げるとたどり着く答えはおのずと決まり、と平太たちの期待は否が応でも高まる。
「それでどうだ? 解けそうか?」
平太の問いに、ドーラはう~んと唸ると、
「やってみよう」
少々手こずるのか、腕まくりを始めた。
ドーラが呪文を唱えると、継ぎ目のある空間に光の線で描いた紋様のようなものが現れた。紋様は複雑な幾何学模様で、平太にはただの絵にしか見えなかった。
だがドーラには何か意味があるように見えるのか、「これは……」と低く唸る。
平太たちが固唾を呑んで見守っていると、ドーラが動いた。
光の紋様に人差し指を突っ込むと、線を広げて紋様を変形させる。まるであやとりかパズルのように紋様を変形させる作業を繰り返すと、突然その動きがぴたりと止まった。
「どうした?」
返事がない。ただ苦しそうに脂汗を流す姿が、今とても辛い状況に陥っている事を容易に理解させた。
そこからは、かなりペースが落ちた。一手一手を制限時間いっぱい使って打つ対局のように、ドーラはゆっくりと慎重に手を動かした。
そうして三十分ほど過ぎると、平太でもわかるほど紋様が単純化していた。結界の解除は着実に進んでいると見て間違いないだろう。
さらに三十分かけてドーラが紋様をこねくり回していると、
「これでどうだ」
とどめとばかりのセリフとともに、ドーラが最後の一手を加える。すると絡まった毛糸がほつれるように綺麗に紋様が解けると、一瞬だけ強く光って消え去った。
すると行き止まりに見えていた景色が消え、その先へと続く道が現れた。いや、元から道はあったのだが、結界によって行き止まりに見えるようにされていたのだ。
「はあ……やっと解けたよ。まったく、この結界を仕掛けたのは相当の手練だね」
言外に「まあそれを解いたボクはもっと凄いんだけどね」、という含みを持たせているのか、ドーラの表情は手こずらされて困ったと言うよりは、難易度の高いパズルを解いた後のような満足したものだった。
「ようやく終わったか。待ちくたびれちまったぜ」
人の苦労も知らないで、シャイナは呑気に言う。他の連中も座って休んでいたのか、スィーネは水筒を片付け、シズは地面に敷いた敷物を綺麗にたたんでいる。
出発する準備を整えると、一行は再び歩き出した。道は登山道に比べるとかなり狭く、人が二人並ぶには少し狭いくらいだった。巡礼用の道が本道とすると、こちらは支道といったところか。
細く狭い道をしばらく歩いていると、やがて一軒の小屋が見えた。




