フェリコルリスの村
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話が決まれば時間が惜しい。
すでにケラシスラ山に火竜が戻ってから一日経過しているため、噴火はさらに時間の問題となっている。なので一秒を争う状態ということで、旅に必要な食料や水などはハートリーの厚意で海上警備隊の備蓄から譲り受けた。
平太たちは準備ができ次第すぐにスキエマクシを発ち、シャイナの故郷フェリコルリスへと向かった。
フェリコルリスは、スキエマクシから南西に向かって馬で三日ほどの距離である。だが道はすぐに山道になり、それからずっと山越えとなるので土地の者でない不慣れな者だと四日はかかる。
しかも一行の中には病み上がりのシズもいるということもあり、平太たちの進みは思った以上に遅れていた。
スキエマクシを発って二日目には、ケラシスラ山の姿をとらえることができるようになった。
ケラシスラ山は、火山としてはもうほとんど役目を終えた山ではあるが、カリドス大陸の中でも有数の高い山である。それゆえに南に位置する比較的温暖なカリドス大陸にありながら、山頂付近にはまだ雪が残っているのが見え、平太は日本の富士山を思い浮かべた。
だが三日目に入り、ケラシスラの山頂から一筋の煙が立ち上るのが見えたとき、そんな悠長な考えは一気にぶっ飛んだ。
時間が無い。
「おい、なんかヤばくないか?」
「ああ、こりゃ噴火するのは時間の問題だな」
遥か遠くに見える煙を見ながら言うシャイナの声には、強い苛立ちが混じっていた。
とはいえ、焦ったところでどうしようもなく、刻一刻と太くなる煙を恨めしそうに見上げつつ、一行はフェリコルリスの村へと急いだ。
火山が噴火しないように祈りながら。
火竜が火山を噴火させる理由はわかっているが、実際どのようにして火竜が火山を噴火させるのか、そのメカニズムは未だに解明されていない。
一説には火竜が自身の持つエネルギーを火山の中枢に吹き込み、呼び水の要領でマグマを刺激するとか、火の精霊の上位種である火竜は火山に直接干渉できる能力を持っているとか、山自身が火竜の存在を感知して、火竜の住みやすいように適応しようとする自然現象だとか、諸説さまざまである。
ただ確実に言えるのは、火竜が住み着いた火山は死火山活火山問わず、数日のうちに噴火をする。これはツバメが低く飛ぶと雨が降るとか、猫が顔を洗うと天気が悪くなるなどの迷信のように、人々の経験則に裏打ちされた確実性の高い情報である。
そして火山が噴火した後――つまり住環境が改善された後に竜がすることは、食環境の構築、つまり狩場の探索である。
なので竜が住み着いた火山が噴火しそうになったら、その付近一帯の動物たちは一斉に逃げ出す。これは人間にも当てはまる。竜にとっては人間も獲物の一つでしかないのだ。
実際、平太たちは群れで移動する動物たちと鉢合わせたり、火山近郊の他の村からスキエマクシへと避難する人々に何度か遭遇した。
そのたびにフェリコルリスについて情報を求めたのだが、彼らも自分たちが逃げるのに必死で、さしたる情報は得られなかった。
シャイナたちの祈りが天に通じたのか、四日目の昼過ぎに一行がフェリコルリスの村に到着するまで、火山は噴火しなかった。
「ここがシャイナの生まれ故郷か……」
「フン、相変わらず貧乏臭い村だぜ」
村の入口の前にたどり着くと、シャイナは酷く不機嫌な顔と声で言う。
フェリコルリスの村は、ハートリーの話から想像していたよりも、さらにひなびていた。山奥にある村でありながら、猛獣避けの柵は劣化が激しく所々補修されずに欠けていたりする。これでよく今まで何も起こらなかったものだ、と平太の目から見ても心配になる。
すでに避難したのか、それとも最初から存在しなかったのかわからないが、見張りも何もない入り口から中に入ってみると、村の外見から漂う悲壮感はさらに濃くなった。
「ザ・ひなびた村だな……」
入って数歩で出た感想は、ひねりもクソもなくただ純粋に見たまんまの言葉だった。少なくとも平太のボキャブラリーでは、これ以上この村を的確に表現することはできない。
火竜や火山の噴火に備えて村人が避難したことを除いても、肌で直接感じるような独特の寂寥感はどうにもならない。きっと普段からこの村はこんな感じなのだろう。枯れた花壇、雑草だらけの道、放棄されてどれだけ経ったか判別もつかない田畑、見当たらない商店、ぱっと数えただけで満貫だ。これなら数え役満もすぐ達成できるだろう。
立っているだけで生きる活力とか気力を削られていきそうなので、気合を入れて歩き出す。一歩歩くごとに体力が減りそうで、ここに毒の沼地かバリアーでもあるのかと思うほどだ。
人のいない村というのは、もの凄く違和感がある。しかし人がいないはずの村の中に、わずかに人の気配が残っていて、違和感をさらに強くする。
「もしかして、まだ誰か残っているのか?」
「まさか。もういつ火山が噴火してもおかしくないんだよ?」
そう言うドーラも、自分たち以外の人の気配を察しているのか、ネコ耳が忙しなく動いている。
「念の為に、まだ人が残っていないか調べて回りましょう」
スィーネの言う通り、一度手分けして村の中を探索することにする。
「シャイナさんは、まず自分の家を見に行ってください」
「お、おう……」
スィーネの指示に、シャイナは一度逡巡するが、すぐに思い直すと自分の家の方へ駆け出した。
「わたしたちも行きましょう」
シャイナの背中を見送ると、スィーネたちも村の中へと散って行った。
変わってねえな、とシャイナは思った。
自分が去ったあの時から、この村は何も変わっちゃいない。いや、むしろあの時よりも酷くなったように感じる。
時間が止まっているのではなく、ただ荒廃に向けて緩やかに流れているのだからなお悪い。
この村には夢も、希望も、未来も何もない。明るい光とは無縁の、薄暗くて自分の足元しか見えないような日々を、無限に繰り返すだけの場所。
自分はなぜこんな村に生まれてしまったのだろう。
なぜ、あんな親から生まれて――
走るシャイナの速度が緩む。なぜ、自分は走っているのだろう。あんな家、帰る気など毛ほども無いというのに。
唯一気になるのは、弟や妹たちのことだけだ。
それだけだ。
他には何ひとつ気にならないどころか、こんな村いっそのこと火山の噴火で溶岩に埋められるなり、火竜に踏み均されるなりしてしまえばいいとさえ思う。
だがあの頃のシャイナとは違い、あれから各地を渡り歩き様々な経験をして「世間」というものを知った今、自分だけが不幸だという考えは無くなっている。他の貧しい村も、似たようなものだ。
むしろ自分よりも不幸な人間などごまんといるし、自分はそれに比べたらずいぶんと運が良かった方なんだとさえ思える。
剣があったから、女を売らずに済んだ。
あの時、母親はシャイナを売った。
そうしなければ冬は越せないのはわかっていた。実際あの年は餓死者や凍死者がたくさん出て、自分以外にも売られて行く者は一人や二人ではなかった。
シャイナを引き取りに来た人買いは、色街の女衒ではなく、剣闘を興行にして各地を渡り歩いている一座の座長だった。
是非もなかった。
それからの記憶はあやふやだった。いや、思い出したくもないものなので、頭が勝手に隅っこの方に追いやっているだけなのかもしれない。どちらにせよ、血生臭いだけの毎日だった。
唯一幸運があったのだとすれば、その一座は剣闘を見世物しているので、切った張ったの殺し合いはしないところだろうか。だが刃を潰した剣とは言え生傷が絶えず、当たりどころが悪いと骨が折れたりした。
その一座の中で、シャイナは花形だった。女の剣闘士は珍しかったし、その上ハートリーに鍛えられた彼女はそこらの男よりもよほど腕が立つ。
剣闘士シャイナの名は、その道では知らぬ者無しと言われるほどのものとなった。
それが運命の転機だった。
ある日突然座長に呼ばれ、シャイナは移籍を命じられた。要はまた売られたのだ。
今度の座長は、血の臭いがした。
シャイナが次に入った所は、傭兵団が戦の合間に小遣い稼ぎとして剣を振るって見世物にしている所で、本業は剣闘士ではなく戦士だった。
皮肉なことにシャイナは、その剣の腕を見込まれて売られたのだ。
そこからは、興行をするよりも戦に駆り出される方が多くなった。矛盾しているかもしれないが、それでも辛うじて生き残れたのは、やはりハートリーのおかげなのかもしれない。
戦場を転々とする生活に嫌気が差し、自分の身を買い戻そうと交渉したが、座長が提示した金額は途方も無いもので、とてもではないが払える気がしなかった。
それでも微かな希望を胸に日々を生きてきたが、得られる金銭はあまりも少なく、これでは自由の身になる前にどこかの戦場で死んでるだろうと諦めがちらつき始めた頃――
ドーラに出会った。
そこからの記憶は鮮明だった。
文字通り、人生が変わった。
ドーラが、むせ返るような血みどろの世界から救い出してくれた。
だからシャイナは、彼女のためなら何でもする。
彼女が魔王を倒せと言うのなら、倒してみせよう。
倒すつもりだった。
だが、ドーラは勇者を召喚した。
魔王を倒すのは勇者の役目で、自分は勇者ではないことはわかっていた。だから勇者を召喚したことに関しては納得している。所詮勇者など、目的のための手段や道具だと。
そうして召喚されたのが、日比野平太であった。
シャイナは複雑な気分だった。このひ弱で頼りない男が勇者とはとても思えなかったが、これで自分の取り柄である「剣」の部分がかなり引き立つようになる。けれどその反面、こんな奴が勇者では、魔王討伐など夢のまた夢になり、ドーラの目的は達成されず彼女は酷く悲しむことになる。せめて旅の途中で死なない程度に鍛えておかなければと思ったが、どこまでものになるか不安だった。
しかしシャイナのみならずドーラやスィーネの予想を裏切り、平太は初対面の頃からは想像もつかないほど逞しく成長した。彼の異世界の知識と、窮地を覆す発想の爆発力に彼女たちは何度も助けられた。
そして、シャイナには開けられなかった「門」を開き、奥義とも言える剛身術を会得しようとしている。強くなるのは良いことだが、このままでは追い抜かれて自分の存在意義がなくなってしまうのではないかと、シャイナはさらに複雑な気分になった。
気持ちが沈むのにつれて、緩んでいたシャイナの走る速度がさらに落ちる。駆け足よりやや速い程度で走っていると、突然地面が揺れだした。
「また地震か」
フェリコルリスは、ケラシスラ山が近いせいか昔から地震の多い土地柄である。だがここ最近の地震はどこか毛色が違うと思っていたが、今その理由がはっきりとわかった。
通常の地震は地面の遥か奥底から揺れているような感覚であったが、最近頻発する地震はそれよりも浅い部分から揺れが響いてくるような感じがする。
震源が近いということは、地面の奥底にいると言われる大地の精霊によるものではなく、火山の中にいる火の精霊によるものだ。
やはり噴火が近いか――シャイナは確信を得ると、再び走る速度を上げる。今はぐだぐだ考えている時間など無い。ここまで来たら、とっとと家族の安否を確認してしまおう。
記憶の中では広かったはずの村は、全速力で走るとあっという間に家に着いた。
肩で息をしながら、シャイナは数年ぶりに己の生家を見る。
古い木造平屋建てだった。最後に見たときもボロいと思ったが、憶えのない補修箇所があちこちに見られ、さらにボロさに磨きをかけている。
ここまで来て、シャイナは躊躇する。
この扉を開けて、もしまだ誰か残っていたら。しかもそれが母親だったら――そう思うと、どうしても足が動かない。
上がっていた息がすっかり整っても、シャイナは扉に近づくこともできなかった。やがて自己嫌悪とともに、もうこのまま踵を返してしまおうかと思った矢先、再び地震が起こった。
そのとき、シャイナは耳を疑った。
揺れが起こった瞬間、家の中で人の声がしたからだ。一瞬だったが間違いない。あれはたしかに、少女の――
次の瞬間には、あれだけ動かなかった足が動いていた。もの凄いダッシュで扉に駆け寄り、もげろとばかりに扉を開ける。
中を見て、シャイナは絶句した。
いてはいけないものが、そこにいた。
向こうもいきなり扉を開けたシャイナを見て、呆然としていた。
まさか、家族がみんな残っているとは思わなかった。
狭くて汚い部屋の中には、弟妹七人と、
母親がいた。
弟妹たちは寝台で寝ている母親を守るかのように取り囲んで覆いかぶさっていたが、突然扉を開けたシャイナの姿を見て驚いたものの、やがてそれが姉のシャイナだと認識すると恐怖と不安に押し潰されそうだったのが一気に解放されたのか、涙と鼻水を同時に出しながら一斉に飛びかかるようにして駆け寄ってきた。
「姉ちゃーん!!」
最後の記憶から数年分成長した弟妹たちの姿に、シャイナはわずかに戸惑う。だが身体全体に感じる温もりと重さ、そして家族独特の匂いが懐かしさとなって、心の奥底で硬くなっていた部分を刺激する。
ああ、帰ってきたんだ。ここに来てようやく、シャイナは戻ってきたことを受け入れた。
「お前ら、どうして逃げてないんだよ?」
元気にしてたか、とか、今まで便り一つ寄越さないですまなかったな、とか他に色々言うことはあった。けれどそれよりも先にシャイナの口からついて出た言葉は、酷く現実的なものだった。
それに答えたのは、長男だった。とは言え、シャイナとはかなり歳の離れた弟だったので、この緊急事態に対してどう判断して良いのか判らないのも無理はない。
「母ちゃんが……」
母親、と聞いて胸の奥がずきりと痛んだが、シャイナは弟が指し示す寝台を見る。
寝ている母親は、どうも病に冒されているようだった。生活に疲れて常時悪かった顔色は、今や死人と大差なく、ごわごわになった髪はほとんど白くなってやはり死人のようだった。苦しそうに呼吸をしていなければ、死体と大差ない。
これがあの母親だろうか。シャイナは一瞬別人を見るような目で見たが、記憶の中にある面影がじょじょに補正されていくと、やっぱり間違いないという結論にいたった。
「シャイナかい……?」
母親はしゃがれた声でそう言うと、再びすき間風のような呼吸を始めた。もう起き上がるどころか頭を上げることすらできないようで、落ち窪んだ目を懸命に動かしてこちらを見ている。
シャイナは目を背けたくなるのを必死で堪えて、「ああ」と一言だけ応えた。
「この子らを連れて、とっとと逃げな」
「あんたはどうすんだよ?」
「あたしはどの道もう長くないからね。ここに置いていきな。そうすりゃあんたも清々するだろう」
ふふふ、と母親は笑う。すべてを受け入れ、覚悟した笑いだった。
本当にここに残って、独りで死ぬつもりなのだろう。本人が望むのなら、それもいいかもしれない。以前のシャイナなら、頼まれずともそうしていたであろう。
「そうだな……それもいいかもな」
ため息をついて頭を掻きながら気だるそうに言い放つと、弟妹たちが驚いたように「姉ちゃん!」と一斉に叫ぶ。
シャイナはその声を無視して、弟妹たちに向かって言う。
「すぐにここから離れるぞ。金目の物――なんてなかったな。邪魔にならない程度に身の回りのもんだけ持ち出せ。欲張るなよ。命あっての物種だ。一掴みくらいにしとけ、いいな」
一番上の姉の言葉が終わっても、誰も動こうとはしなかった。シャイナは今まで使っていた身内用の態度をやめ、情けも容赦もない戦場用の態度に切り替える。
「早くしろ!!」
一言で十分だった。生まれてこのかた見たこともない姉の迫力に圧倒され、弟妹たちは弾かれたように動き出した。
どたばたと荷造りをする弟妹たちを見て、シャイナは鼻から大きく息を漏らす。頭の中でゆっくり数を数えていると、母親がかすれた声で「ありがとよ」と言った。
「別にあんたのためじゃねーよ」
四十数え終わると、シャイナは手を大きく打ち鳴らし、
「そこまで! 荷物を持って外に出ろ!」
すると弟妹たちは訓練された新兵の如くぴたりと作業を中断し、手荷物だけを引っ提げて一列になって扉から外に出て行った。
母親と二人だけになると、あれだけ狭かった家がいやに広く感じる。
「お前ももうお行き」
しんとした室内でもかすれて消えそうな声を、シャイナは無視する。
「心配しなくても放っときゃじきにくたばるよ。それともナニかい? 死ぬとこ見届けなきゃ気がすまないかい? だったら丁度いい。その腰のもんでばっさりやっとくれよ。そうすりゃあたしも楽になれるってものさ」
シャイナが何も言わないのを誤解したのか、母親は娘に介錯を求める。よほど自分は恨まれていると思っているのだろう。
ずいぶんと恐がられたものだ、とシャイナは呆れたが、相手の立場になって考えてみると、やはり同じことを考えるだろう。
たしかに、恨んだことはある。事情を理解した上で、やりきれなかったときもある。
だがそれでも今こうして心の平穏を保てるのは、結果的にドーラやスィーネと出会えたからだ。
もし運命の出会いというものがあるとしたら、そのきっかけを作ったのはこの母親だろう。それならば、チャラにしてやってもいいと思う。
けれどそれを説明したところで、この人は理解できないだろう。この村で生まれ育ち、この村から一歩も外に出ずに外の世界を知らないのだから。
なのでシャイナは説明しない。不安に思うのなら、それが仕返しの代わりだ。せいぜい悔しがるがいい。
シャイナは黙ったまま母親の毛布を引っつかむと、力任せに剥ぎ取った。
「なっ……!?」
何をするのか。母親が驚く様は、すぐに毛布にくるまれて見えなくなる。シャイナは手際よく母親を毛布でくるむと、荷物みたいに肩に担いだ。
「よっこらせっと」
「な、何をするんだい!?」
「決まってんだろ。ここから逃げるんだよ」
「逃げるって……あたしを置いていくんじゃないのかい!?」
「そうしようかと思ったが、簡単に楽になられちゃ困る。それに、あんたにゃここでくたばってもらうより、もうちょっと生きてもらったほうが嫌がらせになると思ってな」
言いながら、シャイナはさっさと駆け出して外に出る。扉の外には弟妹たちがいて、シャイナが肩に担いでいる荷物のようなものがどうも人の形をしているのを見て取ってすべてを察した。
一斉にわあっとシャイナに群がる。
「さあ、こっから離れるぞ。姉ちゃんについて来い!」
弟妹たちは一斉に「うん!」と大声で返事をする。
シャイナが駆け足を始めると、その後ろを一列になってついて来る。足並みを揃え、誰も遅れたりはぐれたりしないように。
えっほえっほとシャイナは走る。
肩に担いだ母親の重さなど感じないように。
ただ、耳元で嗚咽が聞こえるのには困った。




