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ニートの俺が勇者に間違われて異世界に  作者: 五月雨拳人
第一章
11/127

平太、馬に乗る

今回は二部構成です。

     ◆     ◆


 ドーラの屋敷の庭には、うまやがある。


 中には馬が三頭いて、白い牝馬がドーラの愛馬で、茶色の牝馬がスィーネの、黒の牡馬がシャイナの馬である。


 ある日、その厩に一頭の栗毛の牝馬が加わった。


「どうだい、なかなかの上物だろ。この毛並み、この風格。これで金貨十枚は破格だと思うんだよね」


 夕焼けの中長い影を足元から伸ばし、ドーラは商人が売りつけるときに言ったセリフをそのまま繰り返した。


「はあ……」


 スィーネは呆れているのか冷めているのか、はたまたいつも通りなのか判別つかない平坦な表情と声でそう漏らした。


「それにホラ、そろそろヘイタにも馬が必要な頃じゃないか。そう考えていたところに渡りに船というか、ほんとにいいタイミングで商人が通りかかったら、誰だってじゃあもうこれに決めちゃおうかってなるじゃない」


「だからってよく確かめもしないで物をポンと買うのは、お前の悪い癖だと思うぞ」


 シャイナは苛立ちが一周回って諦めに変わったような声で言う。髪は振り乱れ、服は泥まみれで、まるで猛獣と格闘した直後のようだ。


「つまり……粗悪品をつかまされたってことか……」


 肩で息をしながら、平太は服のあちこちについた藁屑や泥を払う。肘や膝は擦り傷だらけで、まるで躾の悪い馬に引きずり回されたかのようだ。


 平太とシャイナこうもボロボロなのは、暴れる馬を二人がかりでどうにか厩に押し込むことに、つい今しがた成功したところだからだ。


 話は数時間前の昼下がりに遡る。


 どこから聞きつけたのか、ドーラの屋敷に二人組の商人がやってきた。


 商人は一頭の馬を連れ、応対に出たドーラに向かって「ここに馬が入り用の方がおられると聞いてやってきました」と言った。


 ドーラは何故彼らがそんな情報を持っているのか不審に思ったが、人の口に戸は立てられぬと言うし、きっと知らぬうちに世間に平太のことが漏れ出ていたのを耳ざとく聞きつけたのだろう、と納得した。


 何しろ自分たちは王都でもそれなりに有名人だ。亜人でありながら宮廷魔術師の自分はもとより、女だてらに国内屈指の戦士シャイナ、そしてあの若さで神の奇跡を起こす僧侶のスィーネ。単体でも人の興味を引くというのに、それが一つ屋根の下に集って暮らしているとなればなおさらである。


 その上その中に一人若い男が混じったとなれば、話は否が応でも盛り上がる。どこのどいつだその奇特な阿呆は。死にたいのかそいつは。きっともう玉は潰されているに違いない、と。


 平太が異世界の住人だということよりも、自分たち三人とともに暮らしているということの方が彼らには重要なのだろう。それはそれで平太の秘密が隠せて助かるが、うら若き乙女の身が案じられず、男の平太に同情が集まるのはいささか納得がいかないものである。


 さておき、ドーラたち三人の中に新たに一人加わったというのは周知の事実であろう。だとすれば、馬に限らず生活必需品を売りつけてやろうと目論む商魂たくましい奴が現れるのは仕方のないことだ。


 そこで商人の一人が、持参した馬をドーラに見せてこう言う。


「どうです、なかなかの上物でしょう。この毛並み、この風格。これで金貨十枚は破格だと思いますよ」


 ドーラは目利きではないし、馬に詳しくもない。なのでどうだと言われても、栗毛の牝馬だということしかわからない。だが馬の相場は知っていたので、十枚はさすがにふっかけたものだと思った。


「まあ、良さそうだよね」


 などと適当に話を合わせ、どうやって帰ってもらおうか考えていると、


「さすが宮廷魔術師様、お目が高い。実はこの馬、父親がうんたらかんたらと申しまして、希代の名馬と呼ばれておりました。そこに母親の、これまた父親に負けず劣らずの名馬なんたらかんたらと掛け合わしまして、生まれたのがこれにてございます。いやあ、この馬の良さがわかるとは実にご慧眼。わたしら凡俗などはハナからモノが違います。わたしなど先ほどから感服しきりにございます」


「え……? いやあ、まあ、それほどでも。えへへへ」


 傍から見れば呆れるほどわざとらしいお世辞の数々に、ドーラはすっかり気分を良くしてしまった。


「わたしも商売人ではありますが、欲の皮が突っ張った守銭奴ではございません。良い物は良い物だとわかる人に売りたいと常々思っております。そこで今日は何という神のお導きか、宮廷魔術師様のような物の良さがわかるお方に出会えた。これはもう運命としか言いようがないのではありませんか? この馬も、貴方様のような見識ある賢者に買われたいと思っているに違いありません。そこでどうか、どうかご一考を――」


 そこでもう片方の商人が、つつっと音もなく近寄って、馬の手綱をドーラに差し出す。


 目の前に差し出された手綱と二人の商人の期待に満ちた目を交互に見て、ドーラは完全に思考停止してしまった。


「それほどでもないけど……じゃあ、買っちゃおっかな?」


「毎度ありがとうございます!」


 気がつけば、馬の手綱を手に握り締めていた。


 財布からは、金貨十枚が消えていた。



「お前ちょろいな……」


「ですから、あれほど買い物の際は一人ではなく、わたしたちの誰かと一緒にと申したのに」


 平太と、彼の傷を治癒しているスィーネに言われ、ドーラは猫耳を伏せてしゅんとする。


 栗毛の馬は、たしかに良い馬だった。商人の言う通り毛並みもいいし風格もある。


 ただ、人が乗ろうとすると死ぬほど暴れるのだ。


 調教師がヘボだったのか、そもそも調教すらされていないのか。どちらにせよ人を乗せられない馬など、農耕馬か肉にするしか使い道がない。


「せいぜい金貨二枚ってとこだろうな」


 シャイナが的確な見立てを言うと、ドーラはますますしゅんとする。要は騙された上に、ぼったくられたのだ。


「ま、買っちまったものは仕方ない。どうにかしてコイツを乗りこなすしかないな」


 今ごろ商人たちは遠くに逃げているだろう。だがこの家に農耕馬は必要ないし、まさか殺して食べるわけにもいかない。なのでここは是が非でも金貨十枚分働いてもらうしかない。


 となると、人を乗せてもらわなければならないのだが、


「うむ。で、誰が?」


「そりゃあお前だろ」


「他に誰かいらっしゃるとでも?」


「わぁぉ」


 問答無用で押し付けられてしまった。馬に乗れないのに馬を躾ける段階から任されてもどうしたらいいかわからない。


 せめて犬でも飼っていれば勝手がわかるのだが、平太は水槽で飼える大きさ以上の生き物は飼った経験がない。


「馬なんてガッと跨って、諦めて降参するまで落ちなきゃいいんだよ。とにかく乗れ、馬が疲れて音を上げるまで乗れ」


 マウンティングというやつだろうか。動物の中には上下関係によって社会が構築されているものもあると聞くが、果たして馬もそうなのだろうか。それ以前にこの脳筋馬鹿女の意見を信じて良いものか。


「そんな力任せではいけません。馬といえど優しく誠意を持って接すれば、きっと心を開いてくれるはずです。ですから、まずは寝食をともにすることから始めるというのはどうでしょう」


 平太は「あれ? この人こんなに馬鹿だったっけ?」と疑問に思いながらスィーネを見るが、彼女の顔は至って真剣で、この頭の中にお花畑でもあるんじゃないかと疑われそうな戯言は、どうやら冗談ではなさそうだ。


「これだけ人を乗せることに対して拒否反応があるってことは、過去に相当酷い目に遭わされているのかもしれないね。たぶん、人間が怖いんだよ」


 ドーラの意見は至極まっとうで、平太も同感だ。だがこれだけまともなことが言えるのに、どうしてああもあからさまな詐欺に騙されるのか不思議でたまらない。やはりこの三人は根幹で似たもの同士なのだろうか。


「とにかく、お前の馬なんだからお前が何とかしろ」


「俺が何とかするのかよ!?」


「当たり前だろ。これから先長い付き合いになる相棒なんだ。しっかり躾とけよ」


「互いに打ち解ける秘訣は、まず自分から相手に心を開くことです。では、健闘を祈ります」


 口々に勝手なことを言うと、シャイナとスィーネは屋敷へと向かって歩き出す。


「あ~あ、すっかり泥だらけだぜ。久々に湯浴みでもすっかなあ」


「薪がもったいないので水浴びで我慢してください」


「ふざけんな、まだ寒いだろ!」


「大丈夫ですよシャイナさんなら。何とかは風邪ひかないって言いますし」


「何とかって何だよ?」


「すみません、それはわたしの口からはとても」


 二人の漫才のようなやり取りを見送る平太の背後に、彼の身を案じてその場に残る人影があった。


「ごめんね、ヘイタ……」


「ドーラ……」


 ドーラはまだ責任を感じて、その場を離れられずにいたようだ。もしかすると、馬と打ち解けるために平太が厩で寝泊まりすると本気で信じたのかもしれない。


 たしかに金貨十枚は大金である。だが平太に馬が必要なのは事実だし、実際そろそろどうにかしなければとシャイナたちも考えていたところだ。彼女なりに平太のことを思っての行動なのは、誰もが充分承知している。


 それに金貨十枚であろうと百枚であろうと、元々その金を稼いだのはドーラである。自分で稼いだ金を騙されようが捨てようが自由だし、異世界でもニートでドーラに養われている平太には、元より何も言う資格など無いのだ。


 だがそれとは別に、気の毒なほどにしょげ返っている彼女の姿は、まるで雨に濡れた子犬のようで、見ているだけで胸が痛む。何だからこちらまで悲しくなってきて、平太の心の奥底に眠っていた庇護欲を掘り起こした。


「そうしょんぼりするな」


 そう言うと平太は、ドーラの頭を撫でる。頭に張り付くほど寝てしまった猫耳を掌で優しく立たせると、ドーラはくすぐったそうに目を細めた。


「要はこの馬を俺が乗りこなせばいいんだろ? だったら任せろ。俺はかつて自転車にたった二週間で乗れるようになった男だぜ」


 笑いながらドーラに向けて力強く親指を立てて見せると、彼女は一瞬瞳を潤ませる。だがすぐに人差し指で目元の涙を拭いながら、


「何言ってるかよくわからないけど、なんだかとても頼もしいよ」


 いつものように朗らかに笑った。



「さて、どうしたものか……」


 厩の中で、平太は独りごちる。


 結局スィーネの言った方法を試すことにしたのだが、そこから何をどうしたら良いのかわからず、完全に手詰まりになっていた。


 厩はよくある木造の小屋で、中は太い丸太で四つに仕切られている。


 向かって左からドーラの馬、次がシャイナ、スィーネの順になる。平太の馬は一番右の空いていた房に押し込まれているが、未だに興奮冷めやらぬようで荒い鼻息と絶え間なく床を蹴りつける蹄の音がする。


 落ち着きのない栗毛の気配に当てられ、他の馬たちも動揺しているようだった。このままひと晩同じ厩に置いておくと、他の馬が先にストレスで参ってしまうかもしれない。


 陽はとっくに暮れているが、馬が怯えるといけないので照明の類は持ち込んでおらず、屋根の隙間や窓から差し込む月明かりだけが頼りだ。


 平太は考えた末、栗毛を厩から出すことに決めた。


「悪いな、今日は俺と一緒に野宿してくれ」


 語りかけるようにして近寄ると、栗毛は不思議そうな目をして平太を見つめた。ドーラはこの馬は人間が怖いのかもしれないと言っていたので、なるべく刺激しないようにゆっくりとした動きを心がけながら、手綱を引いて栗毛を厩の外へと誘導する。


 平太が優しく手綱を引いてやると、意外にも栗毛は大人しく引かれるがままに厩の外に出た。


「よしよし、いい子だ」


 調子に乗って平太が背中を撫でると、栗毛が弾かれたように跳ねていなないた。


「おわっ……と、スマンスマン。触れられるのは嫌いか」


 前足で忙しなく地面を蹴る栗毛をどうにかなだめ、平太は栗毛を引いて厩を離れる。


 厩からはなるべく離れた方が良いだろうと思い、平太は栗毛を連れて屋敷の裏手までやって来た。


「ここまで来りゃあいつらも落ち着くだろう」


 いずれは同じ厩で寝起きしてもらうのだが、今日はさすがに日が悪い。平太は覚悟を決めて、今夜はここで馬と夜明かしをすることに決めた。


「任せろって言ったものの、馬とどうやって打ち解ければ良いものやら……」


 平太はその場にしゃがみ込む。栗毛は平太に近づきはしないが、かといって離れようともしない。手綱が張り過ぎない微妙な距離を保ちつつ、こちらを観察しているようだ。


「やっぱり、人間が嫌いなのかお前?」


 栗毛は答えない。ただ物悲しそうな瞳を平太に向けるだけだ。


「ドーラは、過去によっぽど人間に酷いことをされたのかもしれないって言ってたな。たしかに、そんな過去があったらあれだけ人を乗せるのを嫌がるのは当たり前だろうな。俺だってもし、昔酷い目に遭わされたことがあったら、二度と人なんて乗せるかって思う。だから、俺は力づくでお前に乗ろうとはしないし、無理にお前を躾けようとは思わないよ」


 まあ、元々俺は馬に乗れないんだけどな、と平太は照れ臭そうに笑う。


「でもな、どんなクソみたいな過去でも、いつまでもそれに縛られてちゃいけないと思うんだ。お前もこんな所に売られて、俺みたいな奴を乗っけなきゃならなくなって災難だなって思うけど、少なくとも俺やあいつらはお前に酷いことはしないってわかって欲しい」


 沈黙。


「俺さ、この世界の人間じゃないんだよね……」


 唐突に平太は話題を変える。いや、変えようと思って変えたのではない。ただ何となく口をついて出ただけの、ただの弱音のようなものだった。それは相手がドーラたちではなく、物言わぬ馬だから出た泣き言だったのかもしれない。


「元の世界の俺は、クソの役にも立たないダメ人間でさ、働きもせず毎日ただ食っちゃ寝して、親の金でゲームや漫画を買って遊んでた。本当にゴミみたいな奴のクセに、何故か根拠の無いプライドだけはあって『俺がこんなクソみたいなのは、俺を認めない社会や世の中が悪い。俺が本気を出せば、こんなもんじゃない』なんて思ってた。本気なんか、もし通用しなかったら怖いから出したこともないくせにな。笑っちまうぜ」


 平太は笑う。馬は笑わない。


「そんなとき、いきなりドーラが現れて、一緒に魔王を倒してくれってこの世界に連れて来られたんだ。最初は戸惑ったさ。異世界だぜ。便所は水が流れないしケツは葉っぱで拭かなきゃだしテレビもパソコンもネットもエロ画像も漫画もゲームもジャンクフードもありゃしない。おまけに家族はおろか知り合いもいない、完全に一人ぼっちだ。地獄ってのはある意味、ここなのかもしれないって思ったときもあったさ」


 まるで平太の話に相槌を打つかのように、ぶるる、と馬が鼻を鳴らす。


「でも、こうも思ったんだ。『やり直すのなら、今ここなんじゃないか』って。一人ぼっちってことは、つまりクソみたいな過去の俺を知ってる奴がいないってことだ。だったら、ある意味生まれ変わったようなもんだ。だから俺は決めたんだ、これまでのクソみたいな俺を全部捨てて、新しい俺になろうって。今まで失敗するのが怖くて出せなかった本気を、今度こそ出そうって。そのために今はコミュ症をなるべく直そうとしたり、グラディアースの言葉を勉強したり、身体を鍛えて剣や馬の乗り方を習ってる。正直しんどくて堪らないが、魔王を倒して元の世界に戻るよりはよっぽど簡単だろう。まあ、仮に魔王を倒したところで、帰れるって保証はどこにもないがな……」


 そこで平太は一息つく。ふと冷静になって、自分が喋り過ぎたことに気づいた。


「ははっ、俺、馬に向かってなに言ってんだろう……」


 長々と独り語りをしてしまった気恥ずかしさに、平太は頭を乱暴にかきむしる。


 そのとき、それまで一定の距離を保っていた栗毛がゆっくり近づくと、まるで平太を慰めるように鼻先を彼の頬にすり付けた。


「お前……慰めてくれるのか?」


 栗毛は答えない。だがそう思いたくなる、平太を気遣うような優しい触れ方だった。


「ん?」


 しばらく栗毛の体温を感じていると、平太は栗毛のたてがみの下に奇妙な紋様があることに気がついた。


「なんだこの模様……?」


 紋様をよく見ようと平太が思わず栗毛のたてがみを手でかき分けると、まるで痛みが走ったかのように馬が悲鳴を上げて仰け反った。


「おわっ!?」


 栗毛が後ろ足で立ち上がった拍子に、前足が平太の顎を捉えた。下からかち上げられるようにして蹴り飛ばされた平太の手から、手綱が離れる。


 強烈なアッパーカットに平太の身体が宙に浮き、背中から地面に落ちた。衝撃が肺を貫通し、息が止まる。


「ぐはっ……!?」


 頭と背中へのダブルパンチで、平太の意識は呆気ないほどあっさりと飛んだ。



 意識が戻った平太が感じたのは、


 顎の痛みと、


 息をするたびの胸の苦しさと、


 後頭部の柔らかな感触だった。


「……ん?」


 ゆっくりと目を開けると、そこには見たこともない栗色の髪をした少女の顔があった。


 なんだ夢か。一瞬そう思ったが、身体の痛みと後頭部の感触はやけにリアルだ。


 それに視界が開けてくると、少女はやけに肌色の面積が大きいというか、もしかしたら服を着ていないのではないかと思えた。


 そんなまさか。いくら夢の中とはいえ、いきなり裸の美少女が膝枕をしてくれているなんて状況シチュエーションあるはずがない。オナ禁のしすぎでとうとう頭に変な汁が湧いたか。


 だが今目の前にあるおっぱいは、到底夢とは思えないほどの存在感を放っている。どれだけCGや3Dの技術が進歩しようと、これほど見事におっぱいを再現できないであろう。それくらい良いおっぱいだった。


 ということはこれは夢ではなく現実。しかしどうしていきなりこうなった。まだ脳が完全に機能していない平太は、思考を一時保留とし、他にできることを優先した。


 平太がおっぱいを脳内ハードディスクに画像保存していると、


「あ、気がついたんですね。すいません、さっきは急に立ち上がっちゃったせいで……。まだどこか痛みますか?」


 おっぱいが喋った。


 もとい、少女が平太の意識が戻ったことに気がついた。慌てて視線をおっぱいから少女の顔にそらす。


「あ、う……き、きみは?」


 おっぱいに視線が行きそうになるのを堪え、どうにか平静を装って平太が尋ねると、少女はゆっくりと両手で平太の頭を支えて地面に下ろし、そのままわずかに後退ると、


「わたしは、あの……驚かないで聞いてくださいね? 実はわたし、さっきの馬です」


 そう言いながら、地面に手をついて土下座のような真似をした。やはり少女は全裸だった。


「え……………………?」


 平太の意識がまた飛びかけた。

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