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プロローグ

こんにちは。七つの大罪をテーマにしてみましたが、何処か在り来たりかもしれません。そこら辺を分かってもらえると嬉しいです!「

『彼女達の失われた感情を取り戻して欲しいんだ。』

「・・・・は?」



□□□□


『やぁやぁ!お目覚めかい?』



文月伸也

高校一年生。

好きな食べ物は特になし。

友達関係は悪いとも言えないし、良いとも言えない。

家族構成は僕と、父と母と姉の四人家族。

成績は中の中、つまり普通。

特技はあや取り、なのだが、精々東京タワーが限界のしょぼい腕だ。

とまぁ、僕の特徴らしい特徴を上げればそんな所だろう。

平凡で地味で普通、それを見事に体現している存在、それが僕だ。

それにしても、体現している存在って言葉を付けると何でもカッコよく思えるなぁ。

僕の姉は、あまりにも喧嘩が強い為「文月家のゴリラ」と言われている。

だが、喧嘩を体現している存在、と付ければ喧嘩を極めた物凄く強い奴みたいに思える。

そうとなれば朝目覚めたら「おはようマスター!」と言わなければ。土下座して。

いや、土下座じゃ足りないな。せめて逆立ちして足で折鶴を織るぐらいの気概で行かないと。



『おーい!聞いてるー?』



・・・いや、待てよ。所詮僕がどれだけ姉を崇めたとしても、やっぱり暴力を振るうゴリラな事には変わりないんじゃないか?

何だ、やっぱり僕は姉に頭を下げなくて良かったのか。



(そうと決まればさっそく朝目覚めたら「ようゴリラ!バナナおいしいか?」って馬鹿に・・・馬鹿に・・・・、出来る訳無いよ!殺される!よくて半殺し!死に至る喧嘩、そして!てかそもそも実行者が僕一人な時点で無理!畜生・・・・!畜生・・・・。)



ゾワゾワと背筋が凍るような感覚が体中を走り回り、思わず頭を抱える。



『てい!』

「畜生・・・・・!ってあがぁ!!?」



頭を抱えながら畜生と言葉を吐くという傍から見れば何ともシュールな光景を実践していた僕の背中に、蹴られた様な痛みが走った。

ヒールで踏まれたのだろうか、やけに痛みが持続する背中を擦りながら声がした方を見つめる。が、



「・・・・誰も居ない?」



それどころか、真っ暗で先も見えない。精々見えるのは僕の手と足がいい所だろう。



『もう!無視するから思わず蹴っちゃったよ!』



しかし声の持ち主はその暗闇を気にする事無く、僕に向かって喋り掛ける。



「・・・・・・誰?」

『そんなに警戒しなくてもいいのにー!』



ケラケラと馬鹿にした様な声が響き渡る。だがよく考えてみて欲しい。

真っ暗闇の中、知らない人の声が何も見えない僕に向かって正確に喋り掛けてくる。

僕なら想像しただけで寒気がする、いや、今実際に体験しているわけだけれども。



「いや、あのさ、君には僕が見えるかもしれないんだけど、僕からは真っ暗で何も見えないんだよね。」

『・・・・あ!そっか!見えないんだったね!しまったなぁ。ごめんごめん!』



絶対に反省してないなこいつ。

そう思えるほどに、ごめんという言葉には反省の感情が籠もっていなかった。



「・・・・まぁそれは置いといて、君は誰なの?ここは何処なの?」

『むー、他人に頼ってばっかじゃ、頭空っぽの検索世代に成りかねませんぜ?』

「検索世代になっても分からないから聞いてるんだよ。君、何か知ってるだろ。」

『む、中々勘が鋭いですね旦那。』

「ありがとう。でも全然嬉しくないよ。」



そう言うと声は不服そうなため息を漏らす。ため息を漏らしたいのはこっちの方だってのに。



『・・・・このままじゃ埒があかないなぁ。・・・面倒くさいけど、仕方ないか。』



声がそう呟いた瞬間、バッ!といきなり明るくなる。



「うわ・・・っ!?」



いきなりの明るさに目が耐えられず、思わず両手をクロスさせる。

・・・しばらくは経っただろうか、光が止み、クロスさせていた両手を解く。すると。



「やっほー!こんにちはこんばんはおはようございまーす!マユちゃんです!」



と、無駄に元気が良い女の子が立っていた。

年齢は僕と同じぐらいだろうか、ショートカットで服装は丸でどこかのバーテンダーの様な服を着ている。しかも、



「胸元が・・・・見えてるっ・・・・!?」

「あれ、バレちゃった?」



そうあろう事か、胸元のボタンを開けているのだ。そのせいで谷間が見えている。

まるで仮装大会に出てくる可愛らしい女の子。そんな印象を与えられる。



「・・・えーと、君は?」

「私はマユちゃん!好きな食べ物は卵焼き!」

「いや、そこまでは聞いてないよ。」

「あ!そっか!えへへ。」



恥ずかしそうに照れ笑いしている彼女の姿はまるで野原に咲く一輪の向日葵の様だ。

それに、今までの会話から分かったが、この子、かなりテンションが高い。

僕の最も苦手なタイプと話をするのはキツイ。残業をするぐらいにはキツイ。

それに構わず彼女は喋り続ける。



「じゃあ本題に入ろうか!」

「いきなり過ぎて意味分かんないけどドンと来い!」

そう言った僕を待ち受けた物は



「彼女達の失われた感情を取り戻して欲しいんだ!」

「・・・・は?」

本当に意味が分からない言葉だった


□□□□



「伸也は七つの大罪ってのは知ってる?」

「えーと、あれだろ。何か七つの悪い事。」

そう言いながら煎餅を取り、ボリボリと食べながらソファーで寝転ぶ。

訳の分からない事を言われた後、僕達は自己紹介をした。

どうやらマユちゃんという名前だそうだ。今時、そんな名前があるなんて思わなかった。



「それにしても、神様ね。それ本当なの?」

「もちろん!マユちゃんは嘘はつかないよ!」



自称、神様(笑)なマユちゃんは胸を張りながらふふん、という自慢げに声を聞あげる。

別に自慢げにするのは良いが胸を張るのはやめてもらえないだろうか。



「・・・・マユちゃん、胸。」

「え?あぁ、これの事?」



そう言いながら胸を手で持ち上げる姿は凄い絵面だ。目に毒とはこの事だろう。



「こんなもん邪魔なだけだよ?誰かに上げたいぐらい!」



そう言いながらマユちゃんは後ろに思い切りもたれる。ボスン、というソファーに沈む音が聞こえる。

ソファーに沈みながら緩んだ表情をするマユちゃんは、まるで猫の様だ。可愛い。

そう和んでいると、マユちゃんが急に話し出した。先程までの緩みきった声とは違う、真面目な声で。



「まぁ、さっきの話の続きだけれど、七つの大罪っていうのは何か分かる?」

「七つの悪い事だろ?確か・・・・。」

「そう、傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。この七つがそれだね。」

「へー。・・・でもさ、その七つの大罪とその彼女達の失われた感情と、何が関係あるって言うんだよ。」

「失われた感情っていっても、その七つの大罪なんだろ?だったらそのままにしておいた方が良いんじゃないのか?」

「違うんだよ伸也。確かに七つの大罪は悪い物だけれど、決して必要ない物じゃない。」


するとマユちゃんはソファーから立ち上がり、手を大げさに広げながら話し続ける。


「傲慢は、自分に自身や誇りを持たせる事と紙一重。」

「嫉妬は、向上心や努力の原動力ともなる。」

「憤怒は、自分の中の感情を整理する過程。」

「怠惰は、えーと、まぁよく分かんない。」

「強欲は、生きる為の活力源。」

「暴食は、・・・・置いといて。」

「色欲は、自らの種を繁栄させる為の源。」

「とまぁ、全部私の場合だけどね。」

「それで、ここからが本題だ。」

「さっき私が言った七人の女の子達は、その感情がないんだ。」

「一人目は嫉妬が、二人目は傲慢が、三人目は憤怒が、四人目は怠惰が、五人目は強欲が、六人目は暴食が、七人目は色欲が。足りないんだよ。」

「なるほど。」

「だから、君にお願いするわけだよ!彼女達の失われた感情を取り戻して欲しいって!」



キリッとした表情でこちらに指を指す。その瞳からは強い意志が感じられた。

それに対しての僕の答えはもう既に決まっていた―――――――――、



「嫌です。」



「・・・・・え?」

僕の答えが予想外だったのか、マユちゃんはキリッとしている表情から唖然とした表情に変わっていた。



「いや、だってさ、いきなりそんな事を言われても分からないっていうか。」

「・・いや、普通は「良く分かんないけど・・・・うん、やるよ。」って言う所でしょ。」

「僕はやんないよ。」

「・・・何で?」

「何でって・・・、そりゃ。面倒くさいからだよ。何で他人の為に僕が動かなきゃなんないんだよ。てか、何で僕を選んだんだよ。」

「何でって?うーん・・・・・・、ダーツで。」

「じゃあ他の人選んでよ!そんなランダムに選ばれても全然嬉しくないよ!」

「ええっ!」



ああ、聞いて損した。何か凄いスケールがデカイかと思えば意外に小さかった。

しかも人助けだと、何で僕がそんなに面倒くさい事をしなくちゃいけないんだ。



「取り合えずもう話は終わりね。僕もう眠たいから寝るよ。」



そう言うとマユちゃんは慌てながらソファーに沈み込もうとする僕の体を揺さぶってきた。


「諦めたら駄目だよ!まだいけるって!いけるいけるいけるいけるって!」


「僕もう駄目だよマユちゃん・・・・・。」


「伸也ぁあああああああああああ!!!!」


マユちゃんの叫びを最後に、僕の意識は暗転していった。


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