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Phase43のボツ文章

 敵の密度が濃くなってきた。おそらく偉い奴がいる所の周辺なのだろう。

 前からも、後ろからも、敵兵が押し寄せてきた。そろそろ魔晶石を投げても問題無いだろう。投石で戦う日が来るとは思わなかった。爆発するから危ないし、できるかぎり遠くに投げる。


 味方は自分の周りに数十人いるだけだ。

 レミアもメリッサも血だらけだが、怪我をしている様子はなさそうだ。

 ミナトが走りながら癒してくれるというのもあるのだろうが、それでも犠牲にした兵は大きい。

 先ほど投げた魔晶石のおかげか、俺が手当たり次第に敵の頭に結晶を生やしたからか、敵は恐慌状態になっている。


「いたぞっ! 王女だ!」


 アラン伯爵が叫んだ。その方向を見ると、騎馬で逃げようとしている集団が見えた。

 逃がす訳にはいかない、一応ここから王女の頭をめがけて、スキルを使ったが、動いているものに充てるのは無理だった。


「騎馬隊は英雄に向かって突撃! それ以外は俺の所に集まり陣形を組め!」


 敵将も必死だ。恐慌状態の中、統制を取ろうと叫びまわっている。でも逆効果だ。

 騎馬で突撃してきたが、これだけ近ければ十分に兵の頭に結晶を生やせる。

 精度は半分以上はあるし、取りこぼしても英雄や他の貴族が援護してくれた。


 あとは主を失って止まってしまった馬に乗り、第二王女の元へ行くだけだ。


 全員分の騎馬はない。悪いが怪我をしている奴はここにおいていく事になった。

 英雄が泣きながら謝っているのも見えたが、一切の文句なく、玉砕していった。


 俺も馬に乗るが、操作方法がわからん。適当に手綱を引くと、馬が暴れ始めた。

 英雄も他の伯爵たちも先に行ってしまった。

 レミアとメリッサがすぐに気がついてくれ、こちらに戻ってきている。


「カナメ! 後ろ!」


 レミアの声が聞こえ、振り返った時に見えたのは、自分の左腕が飛んで行く光景だった。


 痛くはない。単に熱いだけだ。冷静に俺に向かって剣を振り下ろしたやつの頭に結晶を生やす。つい勢いで全身に生やしてしまった。

 自分で冷静だって思っているけど、キレているのかな。頭がどんどんクリアになっていく。


「カナメ……。腕がっ……」


「ああ、マジでふざけんなって話だよね。なんで腕とんでるんだろうねー」


「血も……」


「ああ。うん。止めようか」


 自分の腕に結晶を生やす。血はすぐに止まった。

 あとでミナトに治療してもらおう。腕も生やせるはずだよな。

 そうだよね。この前恋人っぽい人の腕も生やしていたと思うし。

 冷静だよね。冷静だよ俺。右手で自分の左腕を凍り漬けにして持っていけるくらいには冷静だ。英雄のスキルによる高揚と、喪失感がごっちゃ混ぜになっている。


「レミア。代わりに俺の馬を操作して英雄の所に連れて行ってくれない? 彼らを死なせる訳にはいかない。特にミナト。後で治療してもらうためにも生きて帰らせないと」


「……わかったわ」


 そう言って俺の前に乗ってきた。掴むところがないので片腕で抱きつく形だ。

 人間の腕って意外と重い。氷漬けにしているからかもしれないけど。


 しばらく馬で駆けると、第二王女と英雄が戦っているのが見えた。

 味方も十人を切っている。騎士に囲まれ、身動きが取れていないように見えた。


 急いで周辺の騎士の頭に結晶を生やす。半分以上に避けられた。

 えっ?


「貴様のスキルは見破った! 何かの結晶を生やす能力なのだろうが、発動場所に魔力が収束するのがわかるぞ!」


 ……。無言で広範囲に結晶を生やしておいた。体の内部に生やすのは無理だろうが、身動きは取れないはずだ。


 奇声を上げているのも聞こえたが、そんなものしらん。


「ミナト。状況は?」


「それよりカナメ! 腕は?」


「ああ、途中で落とされたんだ。マジで嫌になっちゃうね」


 ぶち殺してやりたいな。ここにいる敵兵全員。


「今は魔力が足りないから無理だ。腕はあるみたいだし、後でつけよう。それより状況だね。兄さんと第二王女が戦っているけど互角。兄さんが勝つまで敵貴族を捕まえたかったけど、それはもうカナメがやってくれたみたいだね」


 そう言ってミナトは辺りを見渡していた。どうやらさっき地面に固定化させたやつらが敵貴族だったっぽい。


「第二王女って、強いのか?」


「知らないの? スキルで兄さんと同じ剣聖、さらに聖女とかいうスキルも持っていやがるから簡単に倒せてないみたいなんだ。援護するにもあの中には入れないし……。寄ってくる敵兵を屠るしか無いかな」


 またスキルか。剣聖って言っても何の流派だよとか色々疑問に思うし、聖女って何のだよとか思うけど、英雄が苦戦してしまうレベルなのか。

 温室育ちだけど頭脳明晰ってイメージだったけど戦いもできるのか。



 魔力はまだあるし、よってくる敵兵が邪魔なので英雄と第二王女を囲うように数メートル程度の壁を生やす。すべて鉄製で、外からは見えないだろう。

 さっき捕縛した敵貴族共も一緒だ。


 ごっそりと魔力が持って行かれた感覚がしたけど、まだ大丈夫だ。

 数えてみると味方は残り九人。アラン伯爵やブッド伯爵もいるけど、他の人はもう全員逝ってしまったみたいだ。


 登ってくる連中を剣で刺し、英雄と第二王女の戦いが終わるのを待つ。


 途中まで、剣舞が速すぎてどっちが優勢なのかわからなかったが、魔法と剣を併用して戦う英雄に対し、剣のみの第二王女は段々と追い詰められているように見える。

 魔法と言っても英雄らしい大規模なものではなく、剣聖として使ったりしているみたいだ。

 さらに数分してから、第二王女の剣が折れたのが見えた。その拍子に体制を崩した第二王女に馬乗りになっているし、勝負があったのだろう。

 近づいて、結晶を回りに生やし固定化、捕縛する。

 微妙に英雄を巻き込んでしまったが、そこは操作をして丁寧に外してやる。

 壁ももういらないだろう。軽く操作して地面に倒す。


「聞けっ! カヌザーヤの兵よ。第二王女と貴族は捕らえた。速やかに剣を捨て我らに投降せよ!」


 英雄が大音量で叫んだ。俺らの様子を見て、敵兵は剣を捨ててくれた。

 英雄の剣はずっと第二王女の首に当てたままだ。


 さあ、砦に戻ろう。


あまりにも護衛がアホすぎるのでボツ

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