がらくたの剣
目の前の常識外れの現象に、俺は言葉を失った。
夢か。
それとも――ここは、幼い頃に焦がれた世界なのか。
久しく忘れていた胸の高鳴りが、確かにあった。
呆然と立ち尽くす俺に、少女が声をかける。
「あの、もしかして……この世界の方ではないとか?」
その言葉に、思考が一瞬止まる。
そんなことがあるのか。
いや、それよりも――本当に、そうなのか。
「……そう、なのかもしれません」
前例があるのかは知らない。
だが、少なくとも俺の知る世界ではない。
「やっぱり! 昔から考えていたんです。異世界からの来訪者って、いるんじゃないかって!」
来られる側は、そういう妄想をするものなのか。
「この世界のこと、教えてあげます! 私はジェイド・ノア。あなたは?」
俺は、一瞬だけ言葉に詰まる。
名前負けしている――
そう言われてから、いつの間にか好きになれなくなった名。
それでも。
「……空木創真」
「そうまさん? いい名前じゃないですか!」
彼女は屈託なく笑った。
いい名前。
そうだよな。俺がこんなじゃなければ。
「よかったら、私の家でお話ししませんか? この世界のこと、少しなら説明できますよ」
彼女が脇道へと手をかざすと、草木が左右に分かれ、素朴な家が姿を現した。
それからしばらく、俺は半ば呆然としたまま、彼女の話を聞いていた。
この世界では、“想像”が力になるらしい。
魔法のようなものを思い浮かべていたが、少し違う。
想像力そのものが力となり、それによって階級すら存在するという。
「じゃあ、俺も……?」
「できますよ。きっと。試してみましょう。簡単な剣とか」
剣を思い描く。
手に握る感触。
金属の冷たさ。
刃の重み。
右手に、淡い光が集まり始める。
やがて形を成したそれは――
「……木の棒?」
確かに何かは生み出せた。
だが、それは剣とは呼べない代物だった。
「イメージって、結構難しいんです。年を取るほど、細かく想像するのは大変だって言われています」
彼女は少しだけ申し訳なさそうに笑う。
「鉄の剣なら、金属の質感や重さ、細部まで思い描けないと。実際に見たり触れたりした経験があると、精度は上がりますけど」
想像すれば何でもできる世界――
そう単純な話ではないらしい。
「事象を起こせる人たちは、もっとすごいですよ。物よりもずっと難しいんです。完全に、その人の想像力次第ですから」
無双できる世界だと思っていた。
けれど――
夢を失った俺には、あまりにも現実的だった。
昨日の深夜の文を読んだら変ですね。修正したい。




