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【完結】真実の愛を見つけたから離婚に追放? ありがとうございます! 今すぐに出ていきます!  作者: ゆうき


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第八十六話 広い視野を持って

 あれから五日の月日が経った。私は今日も森の中の小屋にある、製薬室で新薬の研究に没頭していた。


 元々薬師だったお師匠様が住んでいるということもあり、薬を作る環境が整っているのは、とてもありがたい。しかし、それが絶対に作れるという保証は無い。あくまで環境が整っているだけだもの。


 実際に、狼の力を借りて沢山の素材を手に入れ、持っている知識を満遍なく稼働をさせて薬作りに励んでいるが、成果は……ゼロだ。


「こんなことをしているうちに、苦しんでいる人達が犠牲に……なんとかしないと……早く、早くなんとか……私が、やらなきゃ……!」


 口だけは偉そうなことを言っているが、またしても失敗してしまった。すると、私の意識とは関係なしに、目から涙が零れ落ちた。


「どうして……サイラス君、私……どうすればいいの……」


 今も愛する人が苦しんでいると思うと、胸が張り裂けそうになる。


 その気持ちが強すぎるのか、ここ数日の間、疲れすぎて寝落ちしてしまうと、決まって同じ夢を見る。

 サイラス君や大切な人達が苦しんでいるのに、何も出来ないままいなくなってしまう悪夢だ。


 その悪夢を見て飛び起き、バクバクと騒ぐ胸と悪寒に耐えながら、製薬を再開してを繰り返している。


「ダメ、弱気になっちゃ……私がやらなきゃいけないのだから」


「おい嬢ちゃん、ここに来てから、あまり寝てないんじゃないか?」


「……はい、寝てる暇なんて無いですから……!」


 急いで涙を拭ってから、再び製薬作業に入ると、お師匠様は小さく溜息を吐きながら、私の隣に立った。


「なに言ってんだ。こんな時だからこそ、しっかり寝るんだよ。気ばっか張ってたって、良いものが出来るわけねえだろうが。少しは考える頭があるんだから、考えやがれってんだ」


「考えてますよ! 考えすぎるくらい考えて……! 休んでいる暇なんて無いって判断したんです!」


 刻一刻と迫り来る時間は、私から余裕を奪い、焦りを生み出していた。その焦りが失敗を生み、視野を狭め、新たな失敗を生む。


 ……わかってる。休まないと、粗悪品しか作れないことなんて。でも……でもっ! 今もサイラス君やレージュ様、イリス様、他にも沢山の人が苦しんでいると思うと、体が勝手に動いてしまうの!


「頑張らなきゃ……私が、もっと……あっ」


 別室に置いてある素材を取りにいこうとしたけど、足がもつれて転んでしまった。おかげで、せっかく直ってきた捻挫した部分が、また痛みだしている。


 でも、そんなの関係ない。こんな痛みで病気に勝てるのなら、いくらでも受けて立つわ。


「はぁ……しゃ~ね~な~」


「ひゃあ!?」


 私は、お師匠様に片手で軽く持ち上げられる。必死に抵抗するも、狼の背中の上に、乗せられた。そのうえ、ロープで私の体と狼の体を結ばれてしまい、動けなくなった。


「ガハハッ! 言うことを聞かないからこうなるのさ!」


「ふざけないでください! 私は遊んでいる暇は無いんです!」


「ふざけてないから安心しろ。もし、これで犠牲者山盛りとかになったら、その時は何でも罰を受けてやっから! 今は休め! ほれ、頼むぜ!」


「がうっ」


「ちょ、解いてください~!!」


「いいか、よく休んで判断力の回復と、視野を広げることを忘れんなよ!」


 お師匠様の声を耳にしながら、私は狼と一緒にどんどんと小屋を離れていく。


 今はこんな状態だから、素材を採ることも、薬を作ることも出来ない。その代わりに出来ることといえば、景色を眺めることだけだ。


「はぁ……余裕が無くて見てなかったけど、改めて見てみると、自然が豊かで落ち着く場所ね」


 漆黒の森と呼ばれてる恐ろしい場所だが、景色に関しては少し暗いだけの森でしかない。むしろ、動植物が暴れていなければ、静かでとても良いところだ。


「あら……あの動物、どうして仲間の死体を食べているのかしら?」


 少し離れたところで、シカみたいな動物を見かけた。

 あの動物は、薬でも使えるから良く知っている。草食動物だから、動物……ましてや仲間の死体の肉を食べないはずだ。


「あの動物の死体……変なまだら模様があるわね。何かの病気だったのかしら?」


 もしそうなら、なおさら意味が分からない。普段肉を食べない動物が、病気の仲間の肉を進んで食べる理由って……?


「お腹を満たすため……? 仲間の弔い……? どちらも考えられないことはないけど、ちょっと決め手が……病気の肉を取り入れる……取り入れる……? あっ!!」


 普通、病気の肉だなんて、誰だって食べたくないわよね? 野生動物だって、それはわかっているはずだ。彼らは、私達の想像よりも賢い。

 それなのに、あんなに取り合うようにがつがつ食べている……その理由が、わかったかもしれない。


「あの子達は、病原体をわざと体内に取り入れることで、免疫を手に入れようとしているのね!」


 病原体をなんとかやっつけることしか考えてなくて、自分から取り込んでどうにかする方法は、考えもしなかった。


 でも、この方法は何も変なことではない。確か、マムシに噛まれた時に使う血清は、動物に毒を打ち込んで抗体を作らせ、その血液を使う薬だ。


 それと同じ要領でやれば……可能性はある!


「なるほど、視野を広げて考え方を変える。これが、視野をお師匠様が言いたかったことだったのね! そうと決まれば、早く帰って実験を……って! 私、縛られてるんだった!」


「がうっ」


「あ、あれ……急に来た道を戻って……」


 私の気持ちが伝わったのか、狼はその場で踵を返して、小屋へと戻り始めた。


 よかった、なんとかして縄から脱出しないとって思ってたけど、これならその必要は無さそうね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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