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【完結】真実の愛を見つけたから離婚に追放? ありがとうございます! 今すぐに出ていきます!  作者: ゆうき


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第八十五話 師匠の過去

「まっず!? お前さん、どうすりゃこんなまずいものが作れるんだ!?」


 この辺りで採れた素材を使って、シチューと焼き魚を作ったのだけど、お師匠様の開口一番のセリフは、中々に酷いものだった。


「そ、そんなに不味いですか……? 味見はちゃんとしましたけど」


「味見してこれかよ……お前さんの味覚と料理の腕、どうなってやがる……」


 そんなに不味いのかしら……うん、ちょっと苦みはあるけど、薬膳でもあるから、これくらいは仕方がないと思う。


「嫌なら、私が全部食べますよ」


「んなことは言ってねぇだろ。栄養は高そうな味だし、なにより人様に作ってもらったのなんて、いつぶりかわからねえくらいだしよ」


「それなら、もう少しオブラートに包んだ言い方をしてくださいよ、もう……」


「なんだ、貴族御用達のごますりをした方が良かったか? ワシはああいうのを聞くと、蕁麻疹が出るタチなもんでな」


 私もお世辞を言うのは得意じゃないけど、それでももう少し気の利いたことは言えると思う。


「んで、薬の調子はどうよ」


「あの狼が手伝ってくれたおかげで、素材自体は色々と手に入れたのですけど、進展自体はなしですね……」


「そうか。飯の用意をしてる時に、詳しい事情は聞いたが……そんなくそったれな菌を作ってばらまく奴がいるとは、世も末だな」


 お師匠様は、悪態をつきながらシチューを口に運ぶが、持っていたスプーンをぽとりと地面に落としてしまった。その他はブルブルと震えている。


 そんなお師匠様は、取り繕うように笑い、スプーンを拾おうとしたが……震える手は、一向にスプーンを掴むことが出来ないでいた。


「ははっ、年は取りたくないもんだぜ」


「お師匠様……」


「ワシは見ての通り、ハンサムで鍛え抜かれた最強の体をしちゃいるが、ちゃんと歳は食ってる。その証拠に、この手じゃ細かい作業は全然できねえし、目も半分いかれている。一切の狂いが許されない製薬で、これは致命的ってもんよ……まったく、体のせいで使命を諦めなくちゃいけないもの、つらいもんだぜ」


 そうか、お願いした時に受け入れてもらえなかったのは、そもそも物理的にもう薬師としてやっていけなかったからなのね……。


「天職……あの、お師匠様は、どうして薬師になったんですか?」


「あ? 急にどうしたよ?」


「気分を害されてしまうかもしれませんが……あなたの体格は、どう見ても武術の人間のものです。なのに、あなたは薬師を使命と呼び、薬師として大成し、ギルドの長となった……それが気になってしまって」


「……目の前で人が死ぬ。昨日一緒に笑い、酒を飲み合っていた同僚が死ぬ。結婚を誓いあっていた女性が、ワシの知らないところで死ぬ」


 いつもの陽気な感じは鳴りを潜め、とても真剣な雰囲気で喋り始める。私はそれを、黙って聞いていた。


「武術が向いてるって観察眼は、間違っちゃいねえ。ワシがまだ若かった頃、故郷は戦争中だった。ワシはその頃はまだ武術一本だけでよ。その腕を買われて、戦争に駆り出されたんだ。それで、婚約していた女性の元を離れ、戦場に向かった。そこでは気の良い奴と何人も仲良くなったもんよ。あいつら、人のことを筋肉ダルマとか失礼なことばかり言いやがってなぁ!」


 言葉だけで受け取ると、ただの文句でしか無いのだけど、お師匠様はとても楽しそうに話している。

 それと同時に……どこか寂しげでもある。


「こいつらと無事に帰った後、一緒にいつまでもバカやってるのも悪くない。せっかくだし、帰ったら挙げるつもりの結婚式にも招待してやろう……そう思っていた。だが、戦争がそれを許さなかった」


「…………」


「突然戦況が代わり、争いは激化した。ワシはこの最高に仕上がった筋肉を振るい、敵を倒していき……振り向いた時には、多くの仲間が倒れ、屍の山が築き上げられていた」


 ここから先のことは、おおよその検討がつく。少なくとも、ハッピーエンドではないだろう。戦争というのは、それくらい悲惨だというのは、経験していない私にだってわかる。


「昨日までバカやってた友人は、腕も足も吹っ飛んだ状態だってのに、俺の無事を確認してから、安心するように死んだ。他の連中も同じだった。その戦場での仕事を終えて帰ると、故郷が戦火に焼かれていた。もちろん、ワシの婚約者も。彼女はワシの帰還を知り、無事でよかったと言い残して……そのまま逝ってしまった」


 ……心が、痛い。大切な人達が、突然目の前で死んでいくのが、どれだけつらいか……戦争なのだから、それは覚悟しておかないといけないのかもしれないけど……本当に、むごすぎる。


「まったくよ、どいつもこいつも、ワシの姿を見たら安心して逝きやがるんだぜ!? これじゃワシが爽やかでイケメンな地獄の使者じゃねーか! まったく……笑っちまうぜ……へへっ……」


「お師匠様……ごめんなさい、つらい話をさせてしまって」


「気にすんな。ただの昔話にすぎんからな。んで、そんな経験をしたワシは、二度とこんな悲しみを味わってたまるか! って思ってな! この筋肉が萎えてシオシオになりかけるくらい勉強をして、薬師を目指したってわけよ。結果、イケメンで文武両道の、ハイパーイケメン薬師が爆誕しちまったのさっ!」


「自分で言ってて、虚しくなりませんか、それ……」


「いや、まったく? こんなところじゃ誰も褒めてくれなくて、悲しいから自画自賛してるだけじゃないし?」


「もうっ、嘘が下手すぎですよ!」


 サイラス君が弟子になりたがったのも、なんだかわかった気がする。この人の明るさや、根底にある薬師に対しての強い意思に惹かれたのね。


「お前さんはどうなんだ。なんで薬師に?」


「お師匠様と似た感じですね。母を亡くした時に、同じようなことを思って……薬師になって、多くの人を助けたいと思いました。それで、サイラス君にギルドに誘われて、ギルドを世界一にしたいって思ったんです」


「おお、デカく出やがったな! クハハッ! そういうのは大好物だ!」


「それと、もう一つあって……その、あまり良いものじゃないんですけど……」


「なんだ、気になるじゃねえか。ほれ、言ってみろ」


「……復讐です」


 マグナス様に色々とされてきた境遇を話すと、お師匠様はなるほどなぁ……と呟きながら、溜息を漏らした。


「まあお前さんのことだから、ワシはとやかくは言わん。だが、一つだけ言わせてほしい。復讐を成し遂げても、得られるものは虚無だ。そして気づく。復讐なんてしていないで、別のことをしていればもっといい結果になったのかも……ってな。ワシにも覚えがある」


「…………」


「せっかくの人生だ。製薬も復讐もギルドも、もっと視野を広げて見てみな。そうすりゃ、案外違ったように見えて、考え方が変わる……なんて、ドラマチックなことが起こるかもしれねーぜ?」


 お師匠様が立ちあがり、その巨体を大きく伸ばしながら言葉を紡いでから、屈託のない笑顔を向けてきた。


「ありがとうございます」


 過去である復讐にかまけるよりも、製薬やギルドを大きくすること――つまり未来に目を向けた方が、絶対にいいって伝えたいのね。


 そうね、私も明るい未来を掴みたい……そのためにも、危険を冒してまでここに来た成果を手に入れないと。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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