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【完結】真実の愛を見つけたから離婚に追放? ありがとうございます! 今すぐに出ていきます!  作者: ゆうき


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第八十三話 豪快な師匠

「どうして隠れていた私に気づいて……そういえば、蛇って顔にある特殊な器官で、獲物を見つけるって聞いてことがある……!」


 素材を探すのに夢中になって、知らないうちにこの大蛇の狩り場に入ってしまっていただなんて! 周りには気をつけていたつもりだったのに、とんだミスだわ!


「は、早く逃げなきゃ!」


 戦う力も、武器もない状態の私が、あんな蛇に襲われれば、簡単に丸呑みされてしまう。

 だから、一秒でも早くこの場から逃げないといけないのに、さっき足を怪我したせいで、上手く走ることが出来ない。


 それでも、意地で何とか走っていたのだけど……突然地面が大きく揺れ始め、その振動で転倒してしまった。


「な、なに? 地震――きゃあぁぁぁぁ!?」


 この大きな揺れは、自然のものだと思ったけど、それは大きな間違いだった。なぜなら、私のことを追いかけていた大蛇が、固い地面を突き破って飛び出て来て、私の体に巻き付いてきたからだ。


 そう……先程の大きな揺れは、大蛇が地面の中を通って私を追いかけていたから起こったものだった。


「く、くるしい……!」


 巻き付かれて動けない私の頭を目掛けて、恐ろしく大きく開いた蛇の口が迫ってくる。


 このままでは食べられてしまう。そうなれば、私は結局大切な人達を誰も助けられず、誰にも知られずにひっそりと死ぬ。


 ……冗談じゃないわ! 私は餌になるために、来たんじゃない! 私の目標のために……そして、今も苦しむ大切な人を助ける、薬師としての使命のためよ!


「諦めてたまるものですか! 離しなさい! 離しなさいよ!!」


 私の決意は、誰にも曲げられるものではない。しかし、決意だけでは生きていけるはずもなく……私の意識は、深い闇の底へと沈んでいった。



 ****



「……あれ?」


 目を開けると、少し古めの家の天井が、私の起床を出迎えてくれた。


 小さな部屋の中には、必要最低限の物しかないのだが……それがみんな大きい。一体何をどうすれば、こんな大きさにしないといけないのかしら?


「小娘、ようやっと起きおったか!」


「えっ?」


 豪快に扉を開けて入ってきたのは、筋骨隆々な老人だった。体中は古傷だらけで、口の周りには真っ白な髭がたくさんある。


「き、筋肉が喋ってる!?」


「誰が筋肉じゃ小娘! ワシは見ての通り、ピチピチのナイスグァ〜イ! なんじゃぞ!」


 な、ナイスグァ~イ……? よくわからないけど、会話が出来る人間だってことはわかった。


「もしかして、あなたが助けてくれたのですか?」


「おうよ。散歩をしてたら、蛇に襲われているお前さんを見つけて、急いで助けてやった次第よ」


「そうだったのですね。ありがとうございます。それと、先の非礼、お詫びさせてください」


「詫びだぁ? ワシは見ての通り、おこちゃまからみたら怖い見た目だから、変なことを言われるのには慣れてんのよ」


 えぇ……さっきはナイスグァ〜イとかなんとか言って、かなり反発してたじゃない。この人、いまいち掴みどころがなくて、話しにくいわ。


「なんだ、その不満げな顔。自分がおこちゃまじゃないって言いたいのか?」


「まあそれもありますけど……私、一応成人してますし」


「成人? がははははははは!! ワシから見れば、まだまだおこちゃまよ! それで、こんな辺鄙なところに、なにしに来た?」


「実は――」


 私は、外の世界で大変なことが起こっていて、自分は未知の素材を探してこの森に入ってきたと話した。


 すると、老人は何か思案するような表情で明後日の方向に見ながら、考えごとを始めた。


「ほ〜ん、世界は大変なことになってんだな。ったく、サイラスはなにしてるんだ。どこをほっつき歩いてんだか……あの馬鹿弟子が」


「サイラス君を知っているんですか? それに、馬鹿弟子って……もしかしてギルドの先代と言うのは……」


「なんだ知ってるのか? うむ、それはワシのことだ!」


 嘘でしょ!? こんなところで、サイラス君のお師匠様に出会えるだなんて、思ってもみなかったわ! もしかしたら、頼めば協力してくれるかも!


「お師匠様! あなたの弟子であるサイラス君が、正体不明の病魔に苦しんでおります! 彼だけではなく、国に爆発的に広まっていて……私も頑張っているけど、力が及ばなくて……お願いします、薬を作る協力をしてください!」


 必死に頭を下げてお願いをするが、お師匠様は暗い表情を浮かべたままだった。


「お前は、自分で引き受けたことを他人に投げ出すのか?」


「そ、そういうわけじゃ……」


「投げ出してるだろ。頼めそうな、ハンサムで凄くてカッコよくてハンサムなワシに、何とかしてもらお~なんて、甘っちょろいこと考えてる」


 確認じゃなくて、決めつけだ。でも、あまり否定できないのも悔しい。

 あと、別にこの人の容姿について褒めるようなことは考えていないし、なんでハンサムを二回言ったの?


「悪いが、ワシは現役から退いた身。もう薬は作らん」


「そ、そこをなんとか!」


「作らんと言ったら作らん! だが……ワシも鬼ではない。その足の怪我が治るまで、ここで過ごすといい」


「……ありがとうございます」


「なに、愛弟子の彼女には優しくしないと、弟子にブチぎれられるからね」


「私のこと、ご存じだったのですか?」


「お前さんのことは、昔は馬鹿弟子からよく聞いていたからな。あいつに継がせてからは、連絡は取ってないが……社交界に素敵な女神がいる! って、耳にタコが出来るほど聞かされたものよ。んで、今の話の流れでなんとなくそんな気がしたってわけだ」


「なるほど……えっと、申し遅れましたが……エリシアと申します。サイラス君とは、お付き合いをさせていただいております」


「こりゃご丁寧にどうも。ワシは……世捨て人となる時に、名前も捨てちまったからな。超絶イケメン天才お師匠様とでも呼んでくれや」


「は、はあ……ではお師匠様と呼ばせてもらいますね」


 それでいいのかしら……本人がそれでいいなら、私はそうやって呼ばせてもらうけど……私の師匠じゃないのに、師匠って呼ぶのって、なんだか違和感が凄いわ。


「ったく、ノリが悪いやつだ。さて、随分と話したし、今日は休んで、明日から動くように。いいか、絶対に安静だ」


 お師匠様の圧に負けて、何度も頷いて見せた。


 彼の力を借りられれば、もしかしたらと思ったけど、そんなに甘くはないみたいだ。元々自分で何とかしようと思っていたから、あまり変わらないけどね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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