第五十八話 似た者同士
「ああ、どうしよう……」
ついに迎えたデートの日。私は化粧台の前に座りながら、頭を抱えていた。
その悩みの種なのだけど……今日のデートプランが決まっていないの! サイラス様に楽しんでもらいたくて、色々考えたのだけど、どれもこれもしっくりこなくて!
「ピクニック、ショッピング、食事……他にも色々考えた……どれでもサイラス様は喜んでくれると思うけど、完璧なのかと聞かれると……」
完璧な正解なんて、恋愛初心者の私には思いつくはずがなかった。だから、ミラやイリス様に事前に相談したのだけど――
『そういう大事なことは、お姉様が決めることだよ! どんな所でも絶対に大丈夫だから、自信をもって!』
『あの子なら、あなたが決めたことならなんでも喜んでくれると思うわ』
――って感じで、二人に同じ様なことを言われてしまった。
その時は、確かにその通りだと思って、絶対に良いプランを考えるわ! って改めて意気込んで……結果がこの有様だ。
「一応、最後に行きたいところは決めたけど……それ以外が思いつかない……」
いくら最後のことを決めていても、そこに繋がるものがないと意味がない。早く考えないと……あぁ、もう集合時間が迫ってきている。
「なにか……なにか……」
「エリシア、いるかい?」
「ひゃう!?」
結局良い案が思いつかないまま、サイラス様が部屋に迎えに来てしまった。このまま居留守を使うわけにもいかないので、恐る恐る扉を開けると……。
「お、おはようエリシア……」
「ちょ、ちょっとどうしたのその顔!?」
扉を開けた先には、顔色が酷いサイラス様が立っていた。
「いやぁ、それがさ……エリシアが誘ってくれたデートを最高なものにしようと、色々考えてたら……朝になっててさ……」
「…………ぷっ」
サイラス様を見た時は、驚きすぎて心臓がキュッとなったけど、その内容が私の悩みと完全に一緒だったのが面白くて、思わず吹き出してしまった。
「もう、私と同じじゃないの。変なところで似た者同士ね!」
「まったくだな。それで、今日はどうしようか?」
二人して、完全にノープランなのがわかった今、ここで何をするか決めないといけない。そんな状態で、自然と私の口から出た言葉は、あまりにも完璧からほど遠いものだった。
「目的は決めずに、好きな所に行ってみない?」
「好きな所に……なるほど、それはそれで面白そうだな! 出たとこ勝負のラブラブデート……うん、面白い!」
「ら、ラブラブって……も、もうっ……」
完璧からほど遠い提案だったのに、サイラス様はげっそりした顔から一転、キラキラした目を私に向けてくれた。
……二人が言っていた通り、サイラス様は喜んでくれた。きっと、大切なのはプランとかじゃなくて、どこでもいいから一緒に過ごすことなのだと、二人は伝えてくれていたのね。
「こほんっ。それじゃあ、まずはどこから行く?」
「近くに製薬に使える道具を扱っている店があるだろう? 最近、新しい商品を入荷したって聞いて、気になっててさ」
「いいわね。そうだ、素材屋さんにも行きたかったのよね」
「それ採用! よし、まずはその二つから制覇するぞ!」
「ちょ、そんな急がなくても!」
「なにを言っているんだ! エリシアとのデートなんて、いくら時間があっても足りないんだぞ!」
いつものようにサイラス様に手を握られた私は、そのまま屋敷を徒歩で出発した。
ここまで喜んでくれると、誘ってよかったって心の底から思える。またお互いの休日が合わせられそうなときには、積極的に誘ってみよう。
……って、これではもうデートが終わったみたいな感じになってしまうわね。こんなことを考えてないで、デートを楽しまなくちゃ!
「今日は良い天気で良かったな。エリシア、寒くないか?」
「少し肌寒いけど、大丈夫よ」
最近はお昼でも冷えることが増えてきたけど、耐えられないほどではない。
「それなら、俺の腕に抱きつくといいよ。俺、デートが楽しみすぎて、体が熱くて熱くて!」
「そ、そんな恥ずかしいこと出来るわけ……!」
「そうか、それは残念だ……」
「……う、うぅ~……!」
少し残念そうに、でも私が嫌がることは強要できないよなと諦めるような、何とも言えない笑顔を浮かべるサイラス様を見ていたら、自然とサイラス様と腕を組み、ぴったりとくっついた。
「っ……! エリシア!」
「べ、べべ、別にサイラス様とくっつきたかったわけじゃないわよ! 寒いのを我慢して風邪を引くよりも、こうした方が良いって思っただけ!」
相変わらず可愛くない口を叩いてしまったのに、サイラス様は全く気にせずに、だらしない笑みを浮かべていた。
かくいう私も、言い訳をする時は耐えられたけど、顔を見られないように少しだけ俯いた後は、嬉しさとドキドキで、顔がにやけていた。
出来ることなら、ずっとこうして……な、なんてことを考えてるの私は!?
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