第三十六話 告白をするなら
■サイラス視点■
「お前、ずっとそれを眺めてるな」
エリシアからプレゼントをもらった翌日、花瓶に移した花束を見つめていたら、部屋にやってきたレージュに苦笑いをされた。
「うおっ、ビックリした。急に入ってくるなって」
「何度もノックしたんだが、反応が無かったからいないのかと思ってな」
「そうだったのか? それは悪かったな。全然気づかなかったぜ!」
「ところで、この花言葉の意味は知っているか?」
花言葉? ああ、種類ごとに色々な意味があるってやつか? 俺はそういうことは全然知らないんだよな。
「なんだよ突然。バラは有名だから知ってるけど……この白いのはなんだ? 確か、薬には使わないものだよな?」
「ああ。かすみ草と呼ばれているな。感謝、幸福、無邪気という意味が込められているそうだ」
へえ、この花にそんな意味が込められていたのか。なんだか、エリシアの気持ちが伝わってきて、嬉しくなっちゃうな!
「それじゃあ、このバラにも意味があるのか!? 俺を愛しているとか!」
「ああ、ある。むしろ、僕はそれに驚いている」
そうだよなぁ、あの恥ずかしがりやなエリシアが、プレゼントにそんな想いを込めるなんて……って、あるのかよ!?
「ごくり……どういうことだ?」
「バラは本数や色で意味が異なる。これは僕の憶測だが、わざわざ色を変えてるということは、それぞれに意味があるのではないか?」
「……??」
「赤いバラだけだと、十一本あるだろう? 十一本のバラの意味は……最愛という意味だ」
「さ、最愛!?」
いや、確かにエリシアから愛を伝えられたいとは思ってたさ! これだって、もしかしたらそんな意味があるのかって、ほんの少し期待した!
でも、恥ずかしがり屋のエリシアのことだから、そんなことはないだろうと思っていたのに……さ、最愛って!? ただの偶然か!?
「唯一ある一本の青いバラは、夢が叶う、奇跡という意味がある」
「へ、へぇ~! ギルドを一番にっていうことへのメッセージかぁ! う、嬉しいなぁ!」
色々と衝撃があり過ぎて、意味がわからなくなってきたぞ!? エリシア、なんて素敵で、なんてとんでもないプレゼントをくれたんだ!? 俺は幸せ過ぎて溶けそうなんだが!
「それで、赤と青のバラの本数が……これは……いや、なんでもない」
「お、おいおい! 急になんだよ!」
「何でもないと言っているだろう。さっさと仕事をしろ」
「なんか当たり強くねーか!? あ、彼女のいない歴が年齢だから、妬んでるのか!?」
「喧嘩を売っているのか?」
「い、いやすまん。冗談でも言ってないと、現実を直視できなくて……」
いやさ、俺はずっとエリシアのことが好きで、ずっとアタックしてきた。
そんなエリシアから、こんなストレートなプレゼントだろ? 動揺しない方が無理がある!
「ああ、エリシア……本当に君って人は可愛らしいなぁ! 早く結婚して、本当の家族として一緒に暮らしたいが……そのためには、まず告白が必要だ! そして、告白を成功させるために、世界一のシチュエーションを準備しなければならない!」
「そうだな。それで、何か案でも?」
「俺にそんなことをすぐに考える頭は無い! だから、何ヶ月、何年かけてでもしっかり準備をしないと!」
「まさか、それまで両想いなのに告白しないつもりか?」
「しないっ!」
「……お前は馬鹿なのか……? それに、向こうから先に告白されたらどうするつもりだ?」
えっ? その時は……どうすればいいんだ? エリシアから告白なんてされたら、一秒もかからずに、はいって答える自信しかないぞ。
……エリシアから、告白……えへっ、えへへへへ……想像しただけでにやけが止まらないんだが!
「そもそも、ほとんど告白されているようなものではないか……まあいい、これは二人の問題だ。好きにしてくれ」
「やっぱり当たりが強くないか?」
「気のせいだろう。ほら、さっさと仕事に戻れ。そうじゃないと、また残業になるぞ」
「それは嫌だ! 今日は早く帰って、エリシアと夕食を食べるつもりだったんだからな!」
ギルドのために仕事を頑張るのは当然だが、エリシアのことが加わると、更にやる気が出る。
よーっし! 俺達の目標のため、そしてエリシアに世界一相応しい男になるために、今日も頑張って仕事をしますか!
「赤いバラと青いバラを合わせて、十二本のバラの意味は……付き合ってください。完全に告白じゃないか……やれやれ、それをあいつにそのまま教えるのは簡単だが……僕から伝えても、あいつのためにならないからな……はぁ、さっさと付き合うなり結婚するなりすればいいものを……じれったいものだ」
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