第三十一話 全ては金の力で
■マグナス視点■
無事に恐ろしい森から戻って来てから数日後。私は自室のベッドの上で、休養を続けていた。
いくら護衛をつけていたとはいえ、あんな危険地帯に行けば疲弊はする。それを承知で向かって、エリシアに会うところまではうまくいっていた!
なのに……なのにだ! 突然現れたあのグリムベアのせいで、一気に壊滅した! 取引相手は犬死にし、私は撤退という屈辱行為をさせられて……ええい、忌々しい!
取引だって、逃げる途中でサリューをいくつも紛失してしまい、大損を出してしまい、我がギルドの名前に傷が付いた!
「おのれ……おのれおのれおのれ!! 私に歯向かう愚か者め……!」
「失礼します。さきほど、傷のあるグリムベアの親子を駆除したとの報告を受けました」
「そうか。意外に早かったな。ご苦労だった。その親子は売り払って、ギルドの資金にしよう。その辺りのことは、お前に任せる」
「かしこまりました。では」
男が私の部屋を後にすると、さっきまでとは打って変わり、上機嫌で葉巻を吸い始める。
あの親子は、私を命の危険に晒した罪、そして私の商売の邪魔をした罪で、駆除してやった。これで、あの親子が幸せに暮らせることは無い!
「くくくくっ……ふはははははぁ!! ざまぁみやがれ! この私に歯向かうからこうなるのだ!!」
自分の思い通りになると、とても気分が良い。気分が良くなってきたら、なんだか女を抱きたくなってきたな……ここは愛しの妻……もいいが、別の女を抱きたい気分だ。一人ばかりを相手にしていると、すぐに飽きてしまうしな。
「あ、マグナス様。ちょっとよろしいですか? 実は、ほしいものがあって」
「なんだ、愛しの妻ヘレナよ。欲しいものなら、なんでも買ってやろう。金ならあるから」
我が家の金もあるし、ギルドにも金はある、そこから使えば、妻に好きなだけ欲しいものをあげられる。
そうすれば、妻は上機嫌になって私により愛を注ぐようになるし、綺麗になった妻と夜を楽しめる。
金の力で釣った女を抱いたり、貴族の女と秘密のワンナイトをしたり……ああ、ギルド長の仕事よりも、女性と何をするかの方が忙しいではないか!
「さっすがマグナス様。愛してますわ」
ヘレナに熱い口づけをされ、抱きつかれた際に豊満な胸がいかんなく押し付けられる。
思わずそのままベッドまで連れていきそうになったが、今日は別の女で遊ぶと決めている。鋼の精神で耐えなければ。
「ヘレナよ、今日は少々用事があって、明日まで帰れない。だから、家で大人しくしているのだぞ」
「わかりました。ずっとずっと待ってますから、早くお戻りになられてくださいね」
「ああ、わかった」
……少々予定変更だ。別の女をさっさと楽しんだら、なるべく早く帰ってきてヘレナを愛する。そうでなければ、私の高ぶる感情を抑えきれず、大変なことになってしまいそうだ。
「では行ってくる」
「はい、いってらっしゃい、あ・な・た」
もう一度ヘレナと口づけをしてから、私は屋敷を後にした。
さて、今日はどの女を食うとするか……娼婦という気分ではないから、なにも知らなさそうな生娘でもいいし、最近お気に入りの貴族の娘も捨てがたい。
「時間があれば、生娘を一から仕込むのも一興だが、今日は忙しいからな……あの貴族の女にしておくか」
私は屋敷で管理している馬に乗って、少し離れた場所にある、とある子爵家の屋敷にやってきた。
ここの長女と次女はとても器量が良く、性格も良く言えば素直、悪く言えば騙されやすい馬鹿だ。そのうえ、優しくされるとすぐに人を信用してしまうという、貴族としてはあるまじき性格だ。
そのおかげで、以前少し優しくしただけで勘違いをし、そのまま二人同時に私に抱かれた。それも、揃って既に婚約者がいるのだから笑ってしまう。
まあ、それも仕方がないか。私は器量が良く、侯爵家の息子であり、最大手の薬師ギルドの長。これだけのステータスがあって、女が振り向かないはずはない。
……そう、そんなはずはない……なのに、あの女だけは、私の言うことを聞かずに出ていった。全てを持っている私を捨てたのだ!
私のギルドの多くの仕事を任されるだなんて、どんなことよりも名誉なことだというに、私と結婚まで出来た、世界一幸運な女だというのに!
「こんなことになるなら、さっさと体に私を刻み込んでおくべきだった……あの女、仕事が忙しいからと言って、いつも私の誘いを断っていたからな……」
いつも気が強くて明るいエリシアが、段々と疲弊していく姿が面白くて、多くの仕事をわざとエリシアに振っていた以上、そう言われると無理に抱けなかった。
あれは、完全に悪手だった……私に完全に依存させてしまえば、こんなイライラすることは無かっただろう。
「まあいい、既に終わったことだ。それよりも、今は目の前の女に集中せねばな」
目的地の屋敷が段々見えてきた。あそこにつけば、極上の女が二人も待っている……そう思うと、自然とイライラは消えていた――
「はっ……相変わらず馬鹿な男ね。利用し切ったら捨てられるのに、良い気になって。そのまま何も知らずに、私に最後まで貢いだちょうだいね、私の旦那様……いいえ、最高の財布様。ふふふっ」
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