第二十五話 友情の鉄拳
無事に馬に乗って町に戻ってきた私達は、そのまま騎士団の駐屯所に向かい、いきさつを話した。
どうやら、グリムベアに対抗していた人達が、戻って来て支援要請を出したうえに、私達を救助してほしいとイリス様から要請が合ったみたいで、すでに騎士団の人が森に向かったそうで、私達が特にやることは無いそうだ。
「さて、騎士団に報告も済んだし、家に帰って休もうか」
「私は一度ギルドに戻るわ。この子を置き去りには出来ないもの」
「わかった。それなら俺も一緒に行こう」
「なに言っているのよ。サイラス様は、一秒でも早く休まないと。それに、早くイリス様を安心させなさい」
「母上も大切だが、君も大切だから一人では行かせられない。ほら、行くよ」
結局押し切られてしまった私は、サイラス様と一緒にギルドへの帰路についた。
本当なら、早く帰ってサイラス様を休ませたいし、イリス様に会ってもらいたいし、ちゃんとした環境で治療もしたいし、サリューで薬を作りたいしと、やりたいことは盛りだくさんなんだけどね……。
「あら……? ギルドに明かりがついているわ」
「本当だ。誰かが消し忘れたのか?」
馬を無事にギルドの馬房に戻し終わった後、ふと上を見上げると、ちょうど製薬班が普段仕事をしている部屋の明かりがついたままだった。
……まさかとは思うけど、誰かが残って待っている、なんてことは……無いとは言えないわね。
「ちょっと見に行ってみましょうか。誰かがいるのかもしれないし」
「こんな時間にか?」
「可能性の話よ。ほら、鍵もかかっていないわ」
普段なら、最後に帰る人が施錠をするのだけど、それがされていないということは、やっぱり誰かが残っているということだ。
「サイラス様、あまり急ぐ必要はないからね。せっかく無事に帰ってきたのに、階段から足を踏み外しました、なんてことになったら、一生の笑い者よ」
「さすがにそんな死に方は勘弁したいところだな。エリシアこそ、気をつけて」
サイラス様は、怪我や疲労もあるというのに、そう言いながら私の手を掴み、リードをしてくれる。
こんな時まで格好つけなくていいのに……もうっ。
「誰かいるのかー?」
製薬室に入ると、そこにはとても重苦しい表情を浮かべながら、ボーっと外を眺めているレージュ様の姿があった。
「っ……! サイラス、エリシア様……!」
こちらに気づいたレージュ様は、心の底から安心したような表情を浮かべてから、そのままサイラス様の前に立つ。
そして、そのまま無事に帰ってきたことを祝して抱きしめ合う――なんてことはせず、なんとサイラス様のことを、思い切り殴り飛ばした。
「へへっ……相変わらず、お前の鉄拳は骨身に染みるな」
「……この大馬鹿野郎が。散々心配かけやがって……無事で本当によかった」
「ああ。心配かけてごめんな。もうこんな無茶はしないって約束する」
レージュ様は、目じりに涙を貯めながら、今度こそ本当にサイラス様と抱きしめ合った。
いきなり殴った時は驚いたけど、あの冷静なレージュ様がこれほど取り乱すほど心配していたのなら、こうなるのは仕方がないのかもしれないわね。
……なんだか、この二人の友情が羨ましいわ。私には、ここまでして叱ってくれる友人はいないから。
「それよりも、その怪我は一体どうしたんだ?」
「いやぁ、グリムベアと取っ組み合いになっちまってな。エリシアに助けてもらって、手当てまでしてもらったんだ」
「そうだったのか……。エリシア様、この大馬鹿野郎を助けてくれて、本当にありがとうございました。そして……無事に戻ってきてくださって、本当によかった」
「私も、あなたにまた会えて良かったです。色々と報告したいことがあるのだけど……まずは、サイラス様にちゃんとした環境での治療をしてから、休息を取ってもらいたいの。申し訳ないけど、手伝ってもらえないでしょうか?」
「もちろんです。ここの仮眠室でもいいのですが……クラヴェル家の屋敷の方がいいでしょう。サイラス、そこまでは我慢できるか?」
「余裕余裕! この程度、かすり傷だしな」
「かすり傷で、そんな包帯だらけになるわけがないだろう、大馬鹿野郎が」
レージュ様は呆れながらも、どこか嬉しそうに微笑んでいた。
表情がいつもあまり変わらないレージュ様のこんな顔、初めてみたわね。それほどサイラス様のことを心配していて、戻って来てくれたことを喜んでくれているのね。
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