第十七話 姿を消したサイラス
翌朝、結局ろくな情報も手に入らないまま、私は眠い目を擦りながらギルドへとやってきた。
昨日は屋敷に帰ってきた後、借りてきた本を熱心に読んでいたせいで、かなり寝不足だわ。
お化粧でなんとかクマは誤魔化せてると思うから、夜更かししたことはバレたりしないと思うけど……。
「おはようございます」
「おはようございます、エリシア様。随分と眠そうですね」
「えっ!? そ、そんなことないですよ?」
うそ、どうして寝不足なのを気づかれたの!? クマは隠せているし、欠伸をしたわけでもないし、なによりもまだ朝の挨拶をしただけなのに!
「やはりそうでしたか。あなたのことだから、そろそろ無理をする頃かと思いまして」
「……もしかして、カマをかけたんですか?」
「ええ。あなたもサイラスも似た者同士といいますか、わかりやすいですからね」
く、くぅ~……完全に見破られている! なんだか、凄い敗北感を感じるわ!
「あまり無理はしないようにしてくださいね」
「怒らないのですか?」
「私の計算では、三日程度は耐えられても、その後は自分の体を顧みずに無理をすると思っていました。しかし、実際は一週間は耐えていました。その我慢に免じて、怒るのは控えました」
……なんだか、喜んでいいのか微妙なところね。まあ、許してもらえたのなら、よしとしましょう。
「それじゃあ朝礼を……って、サイラスはどうしたのですか?」
「まだ来ていないみたいですね……」
いつもなら、始業の前にギルドのラウンジに集まって朝礼をするのに、時間になってもサイラス様がやってこなかった。
屋敷でも会わなかったし、もしかしてギルド長の部屋で、何かの作業に熱中しているのかも?
「部屋に呼びに行ってみるっす」
製薬班の男性が代表して、サイラス様をギルド長室に呼びに行ったのだけど……戻ってきた時に、サイラス様の姿が無かった。
「サイラスさん、部屋にいないっす……」
「ど、どういうことですか? サイラス様、昨日から屋敷に帰ってきてないから、てっきりギルドにいるのかと……」
「まさか……君、サイラスの部屋にあるランプが減っていないか確認してくれませんか?」
「わ、わかったっす!」
「レージュ様。どうしてランプなのですか?」
「僕の予想が正しければ、サイラスの部屋に置かれているランプが一つ無くなっているいるはずです。もしそうなら、最悪の展開といっても過言ではありません」
サイラス様がどこにもいない、そしてランプが減っている……ま、まさかとは思うけど……夜中に、一人でサリューを採りに行ったの!?
「レージュさん、いつもサイラスさんの部屋の机に置かれているランプが無いっす!」
「やはり……あの馬鹿、一人でサリューを採りに行ったな……! 昨日、ギルドの戸締りをしたのは誰ですか!?」
「お、俺っす!」
「その時刻は!?」
「えっと、二十二時っす! 帰る前にギルド長室に寄って挨拶をした時は、サイラスさんは確かにいたっす! サイラスさん、今日もまたここで仕事をするものだとばかり!」
二十二時……今は九時前だから、半日近い時間戻って来ていないということだ。
サイラス様の性格から考えるに、誰にも気づかれない時間にこっそり行って、こっそり帰ってきて平静を装って心配をかけないようにすると思う……それが出来ていないということは、十中八九何かあったのだろう。
こうしていてはいられない。早くサイラス様を助けに行かないと、最悪な結果になってしまうかもしれないわ!
「私、サイラス様のところに行ってきます!」
「いけません! まだサイラスが森に行ったという確証はありませんし、助けに行くなら、町に駐在している国の騎士団に連絡して、救助に行ってもらうべきです!」
「その予想が合っていたら、どうするのですか!? それに、呑気に救助に行ってもらうのを待っていたら、助けに行くのがもっと遅くなってしまいます! そんなのを待っていられるほどの余裕はありません!」
町の人を助けるために、国から派遣されてる騎士団がいるが、彼らだって暇ではない。サイラス様を最優先にして救助隊を出してもらうのは、現実的ではないわ。
「しかし、あなた一人で何が出来るというのですか!? 自ら死にに行くようなものですよ!」
「私はマグナス様のギルドにいた時に、一人で多くの場所に行って素材を採ってきた経験があります! 他の人が行くより、勝算があると確信してます! それに……私の大切な人が危険に晒されているのに、安全な場所でただ帰りを待つだけなんて、私の性に合いませんから!」
「え、エリシア様!」
「ごめんなさい!!」
私はレージュ様の手を振りほどくと、万が一の時に使えそうな薬や治療道具を乱暴に麻袋に詰め込んでから、ギルドでお世話をしている馬に乗って、サイラス様が向かったと思われる森に向かった。
本当にサイラス様ってば、無茶なことをして……! 待ってて、今すぐ私が助けに行くから!
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