第一話 離婚!? やったー!
「エリシア、今日限りで貴様とは離婚をさせてもらう!」
大きなパーティー会場の中に、肩くらいの長さの金髪と空のような青い目が特徴的な男性――私の夫であるマグナス・バラデュール様の声が、高らかに響き渡る。
ざわざわとする会場の空気が面白いのか、それとも私に離婚を突き付けたのが嬉しいのか、彼は端麗な顔立ちが勿体ないくらい、邪悪な笑みを浮かべている。
そんな夫を前にして、私――エリシア・バラデュールは、目を大きく見開いたまま、じっとマグナス様のことを見つめていた。
「理由は言わなくてもわかっているだろうが、今日お越しになられた皆様は知らないだろうから、この場で公表してやろう! まず第一に、私は真実の愛を見つけた!」
幼い頃から交流があり、学園ではずっと私のことを独占していたのに、急に出てきた女性と真実の愛を見つけたなんて……。
「それに、貴様は我がギルドの仕事を放棄し、何度もフラフラとで歩いていただろう!」
ギルドというのは、マグナス様が長を務める薬師ギルドのことだ。世界的に見ても大きな規模のギルドで、私は一人の薬師として働いている。
「それだけではない。私がこちらの女性と話しているだけで嫉妬をし、嫌がらせの数々をしただろう! 証拠は全て揃っているのだ!」
見せびらかせるようにマグナス様の腕に抱きつき、その豊満な体を惜しみなく押し当てている、桃色の髪の派手な女性が、うんうんと大きく頷いていた。
言っておくが、私は彼女に嫌がらせなんてしていない。そもそも、マグナス様が別の女性と仲良くするたびに嫌がらせなんてしたら、時間と体力がいくらあっても足りないくらい、マグナス様は女癖が悪い。
最近は隣の彼女……確か、ヘレナといったかしら? 彼女にお熱になっているらしく、毎晩私達の寝室に呼んでは、濃密な夜を過ごしているのを、私は知っている。
まあ、私はその寝室を全く利用できない状況だから、好きにしてくれとは思うけど。
「離婚だけではない。数々の罪を犯した貴様など、ギルドに在籍させるわけにもいかない! よって、貴様は我がギルドから追放とする!」
離婚の件でざわついていた会場が、更にざわざわとしはじめる。彼らにとって、目の前で起こっていることは、面白い娯楽でしかないだろう。
「だが、私も悪魔ではない。貴様がこの場で土下座でもして、私に忠誠を誓うと言うなら、召使いとして雇ってやっても――」
「ありがとうございますっ! 是非離婚させてください! もちろん、ギルドからもさっさと出ていきます!!」
「いいのだ、ぞ……は?」
突然の離婚と、追放宣言。最初は驚いてポカーンとしてしまい、マグナス様のどうでも良い話を聞いてしまったけど、落ち着きを取り戻した私は、凄い食いつきで離婚と追放を受け入れた。
「い、いや……そこは私に謝罪をして、許しを請うところではないのか??」
「謝罪? 冗談は、性格と女癖の悪さと金遣いの荒さだけにしてください!」
本当は顔も入れたかったのだけど、整った顔を冗談に入れるほど、私の神経は図太くなかった。
「ずっと夢だった離婚と追放……ああ、今日ほど嬉しいことはありません!」
そうと決まれば、早くギルドに戻って作業場の荷物を片付けて、仮眠室の荷物も片付けないといけない。
幸いにも、バラデュール家には寝るために帰るだけだから、荷物がほとんどない。おかげで、わざわざ取りに行く必要がないのが助かるわ。
「では、私はこれで失礼します!」
「お、おい待て! 貴様は私の所有物だ! だというのに、私に逆らうというのか!?」
「ええ、逆らいます。だって私はあなたの所有物ではありません」
「本当にいいのか!? 後悔しても遅いぞ!」
「後悔なんてしません。あなたが提示したことは、私が心の底から望んでいたことなのですから。あ、そうそう。あなたのことは世界で一番嫌いですし、恨みも積もりに積もってますから……いつか、覚えておいてくださいね?」
「っ……!」
「ふふ、ではごきげんよう!」
私は、スカートの裾を持って深々とお辞儀をしてから、満面の笑みで会場を後にする。
ああ、やっとあの最悪の夫からも、ブラック環境なギルドからも逃げだせる! マグナス様からしたら、私を完全に手中に収めながら、辱めるつもりだったのだろうけど、むしろ逆効果でしかない。
「うふふふ……こんな幸せな日があって良いのかしら!」
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