出会いは理不尽*5
目の前が薄ら陰った。
「……ファージャにしては大きいな……」
「はぁ……?」
恐る恐る見上げてみると、金髪の男が綾を不思議そうに見下ろしていた。
直ぐ様攻撃されるのかと思いきや、不躾な視線で全身を隈無く観察されている。すぐに殺されることは免れたみたいだが、この視線にずっと耐えられるほど、神経が太いわけでもない。居心地の悪い思いをしながら、現状を打破すべく、綾は再びじたばたと藻掻きだした。
「ぅわっ……」
金髪の男は、急に綾の両脇に腕を差し入れて、軽々と綾を目の高さまで人形のように持ち上げた。
突然のことに呆気に取られることしかできない。
とりあえず綾は、目の前の金髪の男をガン見した。やられたらやり返せ、それが綾のルールだ。
日本人には見えない欧米特有の金髪。そして碧眼。これは俗に言う王子的外見ですか。
綾は目を見つめながらも観察を続けた。ガラス玉のような瞳を見ながら、取り出したらガラスじゃないのかな、思わず目に指を入れたくなる衝動を堪えた。
髪は短めで、ふわふわとしている。ますます王子さまだ。しかもこの持ち上げられた高さを考えると身長は高い。
マントにブーツ。肩には弓矢。腰には刀……? いや剣が一振り。RPGでよく見られるような、旅人の豪華版な服装だ。
所謂王子さま……? な男を目の前に、綾はますます戸惑った。現代ではまず見かけないからだ。美形なのはまず脇に置いといて、服装が納得できない。何かが引っ掛かるが、今は何が引っ掛かっているのか考えている暇はない。
「……」
「……」
お互いにお互いを観察している状況が、何故か酷く滑稽に感じた。
「あの……そろそろ下ろしてもらえませんか? 起こしてもらえたのは感謝しますけど」
とにかく綾は、王子っぽい男にそう提案した。