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出会いは理不尽*4


 慌てて走りだしても、勿論走ってくる音の方が素早いらしく、どんどん音が近づいてくる。

 ますます焦り、闇雲に獣道を全速で走る。足場の悪い道とも言えない地面のせいで、思うようにスピードが出ない。

 音が間近に迫ったような気がして、一瞬背後を見て、また走りだそうとした時だった。


 「あっ……!」



 下を見ないで走ったせいで、思い切り歪な木の根に足を引っかけた。



 ものの見事に綾の体は宙を飛び、大きな窪みに背中から落ちた。中途半端に受け身を取ろうとしたのが原因なのか、綾は背中を強打した。痛さのあまり声が出ない。

 息詰まるような痛みに、目からぽろぽろ涙が零れる。それでも立ち上がろうとするが、うまい具合に体が窪みにはまってしまっていて、尚且つ完全に両膝が浮き上がっていて藻掻くことがままならない。


 「やだ……! んぅーーんぃーー!! 何これ抜けないし! もー!! ちょっともう本当真剣勘弁してよー!」


 綾は半泣きで叫んだ。痛みと混乱で何を言ってるのか分からないほどにパニックに陥った。

 そして足音は側まで追い付いてきて、すぐ側の茂みに気配が漂っている。


 胸の中で激しく心臓が高鳴る。もう駄目だ、殺されてしまう……! 綾は完全に覚悟した。

 ただで殺されてしまうつもりはない。せめて、一撃でも見舞ってから死んでやると心を定めた。



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