現在位置身分不確定*5
「君の身分を決める前に、幾つか問題点があってね。だから今から言うことを必ず守ってもらいたいんだ」
問題点があるわりには、すごい笑顔なんですけど王子様。綾は心の中でツッコミを入れて、話の先を促した。
まず一つは、綾が異世界から来たとこと秘密にする。
もしそれが露見したら、王都が混乱する上に、綾が利用される危険性がある。 そして名前。名前はともかく姓が変わっているので、余計なことが発覚する。なので、名乗るときはただの『アヤ』で名乗り、必要性がある場合のみ王家のファミリーネームを名乗ること。
「えーと、王子様質問です」
「なにかな」
「ただの小娘に何か危険なことが起こりようもないと思うので、別にどこから来たとか秘密にする必要性はないかと。あと、単なる一般庶民に仮にでも王族の姓を名乗ることは無理がないですか?」
「異世界から来た娘ということで、利用されないとは限らない。そして君は庶民では通らないんだよ。どんな理由があろうとも、その星の紋章が有る限り貴族とみなされるんだよ」
「そんな品格ないんですけど」
「君には教育を受けてもらうことになる。せめて君がこの世界で生きていけるようにね」
「……」
綾はどんどん進んでいく話に呆然となった。教育とかおかしな方向に話が進んで行っている。綾はここで暮らしたいわけではない。帰りたいのだ。
「あの、教育とか大変有り難いんですけど、私を今後どうするかほぼ決まってないですか」
「王宮に住んでもらおうと思ってるけど」
「それって大問題でしょ!? どこの王族が庶民を王宮に暮らさせるんですか!」
「ここにいるけど」
しれっと答える王子に、綾は目眩を起こしそうになった。
駄目だ、この人。話が通じねぇ。