現在位置身分不確定*4
「まずはざっとこの世界の説明と、君の身分を決めようと思う。不満はあるだろうけど、しばらくは我慢してくれ」
宿の一室に落ち着いて、黒髪で茶色の目……ヒーリアがお茶を用意して、赤茶けた髪の青い目……シシリアが茶菓子をテーブルに出し、エンファルコード王子は話を切り出した。
「私たちが住んでいる世界……この世界は紋章によって身分が分かれている。一般には紋章はなく、騎士及び貴族に紋章がある。それとは別に王家には王家の紋章があるんだ」
「ここから先は私が説明しましょう。下から順に、花の紋章、葉の紋章、星、雪と紋章が分かれています。君の服に付いている紋章は、この世界では星の紋章と言われていて、最高位ではないけれど、位の高い紋章なのです」
シシリアが王子の後を引き継いで説明をする。
綾にしてみれば、ただの高校のエンブレムなのだが、この世界ではそれが身分証明にもなるほどの価値があると聞かされると、少々複雑な気分になった。
綾の高校のエンブレムは変わっていて、星を幾つも重ねた形のエンブレムなのだ。まさかこれが異世界と共通しているとは思わないだろう。
「簡単に説明はしたが、紋章についてはこんなところだ。生活については追い追い侍女に説明させる。次に君の身分……」
一口お茶を口に含み、綾ににっこりと微笑みを向けた。どこのナンパ師だ。綾は即座に突っ込みそうになったが、話が進まない上に、部下二人に抹殺されることを予想して、言葉を前歯でせき止めた。