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第二人

俺、朝霧(ひゅう)の特殊能力は牧羊犬(シープドッグ)というゴミスキルだった。

なんかヒツジとヤギを探せるらしい。なんだそれ。

管理センターの人が困惑してたよ。あいつ絶対笑いこらえてたよ。


まあそれはいいとして、今日行くダンジョンには同行者がいるらしい。

初めてのパーティープレイってやつだ。あんまり気が進まないなぁ。

もうちょっとソロで経験積んで自信つけてからにしたかったんだよなぁ。


軽く説明されたけど、その人も俺と同じ新人さんらしい。

スキルに恵まれなかったって言ってたけど俺よりはマシだろ…。

そのスキルが何かはお楽しみだとさ。もうちょっと情報くれよ。


*


南S-F-022。先日のダンジョンより少しだけ強いとこらしい。

同行者は先に到着してるって言ってたな……せめて名前教えろよ…。


「あなたが朝霧君?」



おっと、


やった。


女の子だ!



「ああ、はい 俺が朝霧です

 高一です よろしくお願いします」


しかも結構可愛い。この子がメインヒロインってことでいいのかな?


「私は藤原樹絵璃(じゅえり) 私も高一だから敬語じゃなくていいよ

 センターの人から聞いたけど、ヒツジ探せるってホント?」


なんで俺の個人情報だけ出回ってんだよ…あいつめ……。


「本当だよ ダンジョンに居やしないけど…」


「そうなんだ いいなあ……」


「はあ?何言ってんの マジで使い道ないよ?」


「私の能力はね……あ、実際に見てもらったほうがわかりやすいかも」


*


ダンジョンに入場するなり、藤原さんは財布を取り出した。

そして小銭を手の平に乗せて能力を発動した。


「“資金洗浄(マネーロンダリング)“!」


危ないねえ。


能力発動で小銭は10秒ほど淡い光と黒煙を発し、

それが終わると小銭は新品のように輝いていた。


「これが私の能力……小銭をピカピカにするだけのゴミスキル!」


藤原さんはその能力を嘆いているが、

俺にはどうしてもゴミスキルとは思えなかった。


「んー…やっぱ俺よりマシでしょ

 ピカピカの小銭って見た目気持ちいいし」


「いやいや、こんなレモン汁で代用できるスキルで

 MP半分持ってかれるんだよ?コスパ悪すぎでしょ!」


「えっ MP……?そんなのあったっけ?

 ステータス表示は名前とスキル名しか…あっ」


スキル名をタッチしたら詳細見れた事を思い出した。

自分の名前をタッチすりゃよかったのか。

そういう情報を教えるのがセンターの仕事じゃないのか…。


*


『 ヒュウ

  HP 25

  MP 0


  牧羊犬 』


ええぇ…MPないの?

つか、レベルもないのか……う〜ん。


「…え、すっごいじゃん!HP高っか!

 私両方とも10しかないよ?スキル使ったから今はMP5だけど」


「じゃあ俺、戦士系ってことなのかな?

 …もしかして特殊能力以外に魔法みたいのってある?」


「あるよ〜 ほら、ファイアボール!」


藤原さんは手の平を壁に向けて火の玉を放った。


すっげえ……この女、説明のために無駄撃ちしやがった…。


「あの、藤原さん 残りMPいくつ?」


「2」


2=10(しかないよ?)-5(半分持ってかれるんだよ?)-x(ファイアボール!)


x=3


「あ、もうだめだ」


…この女、使えねー!


*


「藤原さん 武器は持ってる?俺には(これ)がある」

「一応ナイフ持ってきてるよ 使った事ないけど」


まあ何もないよりはマシか。

とりあえず俺が全部倒す感じになるかなぁ。

HPの存在知ったし、気を引き締めていこう。


前回はゴブリンが弱かったから良かったけど、

ここは1ランク上のコボルトも出るらしい。

コボルトの謎石は55円。ゴブ30匹でコボ20匹だから2450円。

一人当たり1225円。割に合わないけど練習だ練習。頑張ろう。


「朝霧君、どっちがリーダーやる?」

「リーダー?」

「うん、ほらこれ」


藤原さんはステータスとは違う画面をこちらに見せた。


『 パーティーリーダーを選んでください


  ヒュウ

  ジュエリ              』


また俺だけが知らない情報が…。

まあ、とりあえず経験してみよう。

リーダーになると何かメリットがあるのだろうか。


「俺がやるよ」

「りょ〜かい」


*


コボルト発見。単体でこちらに気付いてない。

こいつもゴブリンみたいに一撃で倒れてくれればいいんだが…。


ゆっくり近づいて……


…まっすぐ振り下ろす!



「キャアアアァァ!!」


突然の悲鳴に驚いて振り向くと、

藤原さんが怯えた目でこちらを見ている。

ああ、グロいよな。大丈夫、慣れるよ。


藤原さんは我慢できず、壁際で嘔吐している。

これはもう通過儀礼だと思って割り切るしかない。

俺は用意しておいた水とタオルを藤原さんにあげた。


*


とりあえずコボルトもそんなに強くないということがわかり

狩りは順調に行われていった。残り15匹。ここまで全部俺。


「…あのさ、朝霧君 頭かち割る以外の方法じゃだめなの?

 なんかもっと……首を斬るとか心臓にナイフ刺すとかさ……」


「俺、薪割り経験者だから」


「そう……」


そんな会話をしていると、3匹の敵影を発見した。

今まで1〜2匹だったけど、これは初めての集団戦になりそうだ。


「藤原さん、ゴブリン任せてもいい?

 俺はコボルト2匹やるからさ」


「えっ 無理」


「…いや、あんま強くないから平気だって

 それこそ心臓に一突きで倒せるレベルだから」


「私、魔法使いキャラっぽいし 返り血浴びたくないし……」


「ええ…」


結局そいつらも含めて残りの雑魚は全部俺が倒した。


*


最後の敵を倒したところで藤原さんが呟いた。


「ここがボス部屋かぁ……朝霧君、準備はいい?」


「…え、いや、何言ってんの?入らないよ?

 俺たちまだバリバリの初心者なんだし、

 もっと経験積んで自信つけてから挑むべきでしょ

 それに藤原さんMPなくて戦力にならないし、やめとこ?」


「え〜、でもそれだと1000円ちょっとしか入らないじゃん!

 ボス倒したらボーナス入るんでしょ?たしか

 もしやられちゃっても入口に戻されるらしいじゃん?」


「やだよ!俺はリポップなんてしたくねえ!

 もう切り上げてシャワー浴びて着替えたいの!」


「次は着替え持ってくりゃいいじゃん!」


「そうする!」


次の約束をしてしまった。

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