亡霊は闇に紛れる(3)
カズハから託された夢を叶える為にも、
私の病弱な体をどうにかしないといけない。
そういえば、この世界には魔力が存在する。
その魔力は生物なら必ず持っていて、
魔法を使うために魔力を使う。
という話を聞いた気がする。だったら、
その魔力で体をどうにか出来ないだろうか?
カズハの世界で「らのべとかで出てきた
「きようかまほう」みたいに…やってみよう。
〜数分後〜
「全然出来ない。まったく出来る気配もしない。」
今さっきから体に纏おうと思っているが、
まずまず魔力がわからない。どうすれば…
「そうだ!カズハの頃は、魔法が存在しない世界で
生きてるから、カズハの感覚で掴めばいいんだ。」
早速思いつきを試そうとするが、カズハの感覚を
シェルの体でするというのは、
凄く困難なものである。例えば、
一人にとっては、甘い果実でも、
別の誰かには酸っぱいものかもしれない。
もう一つ例えを出しておこう。
脳筋男にとっては軽いものでも、
ひ弱な女子学生にとっては重いものかもしれない。
人それぞれにとって感じ方は違う。のだが…
シェルの体には、カズハの精神が入っていた為…
(掴めた。)
一気に感覚を掴み。
心臓付近に存在する魔力を全身に流していく。
(流しづらいな…流れが途切れないようにしようかな)
反時計回りに、魔力を体の部位ごとに流していく。
「さっきの流し方より早く巡れた。次は動かしづらい足に流してみようかな〜。」
そう思い流してみると…
「ッ、ハァハァ…」
足から心臓に向けて、
心臓が破裂するかのような激痛が走る。
(このモヤ、病気?それとも呪いとか魔法のせいなのかしら?まぁ、いいか。モヤの所は弱く流そうかな)
モヤ以外の部分に魔力を流し、モヤの部分を包み込むように巡らせる。魔力を十分に巡らせて、足を動かしてみようとするが全く動かない。
「元々の筋力が少ないから、魔力を巡らせても意味がないのか、発動していないのか。の二択だけど…」
腕に巡らせたときに力が入りやすかったから、
発動自体はしているということになる。
だから、問題は体の方になるということになる。
動かないのと同義してもいい足を動かすことは、
一般的に無理な話なのだか…
(そうだ。魔力をゴムのような感じにして、
流す行為を引っ張る行為に変えてみよう。)
カズハの知識と、シェルのアイデア、魔力の自由性が噛み合わさった結果…
「んっと、やっと立ち上がれた。」
足を動かして、立ち上がることに成功した。
「これを利用して、屋根に登れないかなぁ…」
魔法とは、理論的で、ロジカルチックでありながら、
柔軟なイメージと、知的なアイデア。感情により、
成り立つものである。つまり、イメージとアイデアだけでは魔法は出来ない。はずだか…
「ん、よっと。」
シェルは足に魔力を溜めては、足の裏から放ち、
放ったあとに上半身を反らしながら身体をにじり、
屋根の上で回転する。要約するならば、
一般人にできない動きをして、屋根に登った。
体操アスリート並みの技を、シェルはやったのだ。
「魔力が少し減ったけど、別に問題はないかしら。」
いや、少しだけではない。一般貴族にとっては、
多量、膨大な魔力を消費している。それでも少し
というのは、シェルの保持量が異常なだけである。
今さっきのアスリート並みの技も、魔力のゴリ押しでやっている。が、これからするほうが異常なとのだ。
「それじゃ、降りようかな。」
私は、満月から背を向けて落ちる。そして、そこにあるべき窓の縁に捕まり部屋の中に飛び込む。人間離れした技を成し遂げられる理由は、異常なまでの空間認識能力によるせいだ。数cmも違わない距離感覚。物の大小、自分がいる場所を正確に認識している。
「よいしょっと、ベットに到着。」
魔法とは、論理的で、ロジカルチックでありながら、柔軟なイメージと、知的なアイデア。感情により、
成り立つものである。だが、膨大な魔力を有し、歪みのないイメージ、そして溢れ出す程の知識で構成されるアイデアを持つシェルの前では、無意味と化した。
「まず、第一歩、カズハの夢。いや、私達の夢…
ダークヒーローとしての人生、その一歩。」
こうして、シェルのダークヒーローとしての人生か、
幕を開ける。




