プロローグ
2作品目になります。どうぞよろしくお願いします。
不定期投稿の予定です。
宇宙から見たその星は青かった。
更に近づくと青い星は先の見えない程広大な海が広がっていた。
その星は陸地1割、残り全てが海に支配された水の世界だった。
その世界は人類が辛うじて生活している1つの陸地を中心に遠く離れた海域に小さな島が6つ、陸地を囲むように等間隔で並んでいた。
大陸と島々を渡るには数少ない飛行出来る魔物に騎乗するか、飛空艇に乗って移動しなければならない。
海を船で航海出来なくはない。
しかし誰もやろうとはしない。
文字通り後悔することになるからだ。
陸地と同じ数だけ海域が存在し、陸地を支配する国があれば海域を支配する奴らも存在する。
陸地で暮らす人類は、細々と海から資源を分け与えられて生きている。
そう、分け与えられているのだ。取っているのではない。
海の資源は全てその海域を支配している支配者の所有物である。
人類は決して過剰に採取する事なく、限られた資源を余す事なく生活に利用している。
海域の支配者は全員バケモノであり、人類は戦う意思を見せる事は決してしない。
昔の島国の面積は今の10倍以上あり、各国と協力して海域の支配者達と激しい激闘を繰り広げていた。
その激闘の末勝ったのは支配者でありその戦いの余波で島国は一度滅び僅かな陸地を残して海に沈んだ。
それ以来人類は、残された陸地での生活を強いられる事となった。
そんな絶望の時代が幾数年過ぎ去ったある日1つの海域に変化訪れた。
【海域の支配者の死亡】。
その報せは各島国に伝達され、人類は歓喜に包まれた・・・・かに思えたが違う。
その報せは寧ろ悲報。
海域に支配者が居なくなればその海域はガラ空きになる。
空いている席に誰が座るのか。
今度は人類VS支配者から海域に生息する魔物同士の争いが勃発しようとしている。
その戦いの余波で今度こそ小さな島国は完全に沈んでしまうのでは無いかとその海域にある島国の住民は皆気が気ではない。
移住しようにも陸地の面積は限られており、住民全員の移住など出来るはずもない。
人々はただ始まろうとしている激戦による被害が軽微である事を祈るだけだ。
遠く離れた海域の支配者は今回の争奪戦に参加するつもりもなく、寧ろ隣接している海域の支配者の方が乗り気であった。
しかし自分が支配している海域から出ればそのタイミングを狙ってまた隣接している海域から支配者がその海域を奪いにくる。
そんな堂々巡りで結局は支配者自身が争奪戦に参加する事なく絶妙なバランスを保っている。
今回支配者の席が空いた海域は海面は穏やかで、リゾート地としても有名な場所であった。
しかし穏やかなのは海の浅い部分だけで、深海部は今特大の台風の様に大荒れ状態だった。
流れの速い海流が合流する地点で、気を抜けば海流に流されるだけで体がバラバラにされかねない程荒れ狂っていた。
激しい海流には今もバラバラにされた巨大魚、粉砕された貝殻の破片、折れた牙や千切れたヒレなどの残骸が流されていった。
既に争奪戦は始まっており、特に激闘を繰り広げているが支配者に最も近い魔物達だった。
その魔物達は見た目は限りなく似通っているが全く違う魔物であり、攻撃を行う最中口撃もしっかり行なっていた。
「今日こそ貴様をゲッソリさせてやる!」
「イカン!お主の様な酔っ払った様な顔の奴が海域の支配者になろうなどと!」
「何おう!?愛玩動物みたいな耳しおって!!」
「お主だって何も無いつんつんつるてんのハゲ頭じゃなイカ!」
お互いに罵り合いながら、長い足で体に絡みつき、その余波だけで周りにいる争奪戦の参加者を細切れにしていく。
この者達の見た目は烏賊と蛸。
似た者同士で因縁のライバルでもある。
「「この闘いに勝った方が“クラーケン”だ!!!」」
昔から小競り合いが続いていたが、支配者争奪戦をキッカケに因縁の対決が激化していくことになる。