異世界の入り口
この作品はカクヨム様にて先行公開しております。
俺、水原裕は今年の春から地方の国立大学に進学し、数日後からはこの大学で勉学に励む。
地方であるため、見知らぬ土地で一人暮らしを始めるので事前に下宿先の周辺や、大学までの道を知るべく下見に来ていた。
「へぇ、こんなところに随分と趣のある建物があるな。」
大学への道を確認しながら歩いていたら偶然、この土地には似つかない建物を見つけた。
今はコンクリートの道路や建物が主流だが、裕が見たその建物はまるで昔の城みたいな風貌をした家だった。。
(俺以外見えてないのか?)
普通人通りの多いこの場所に、こんなにも似つかない建物があると少しは通行人も見ると思うが、誰もがその建物に視線を移さない。
(ちょっと中まで見てみたいな。)
興味をそそられた裕。まるで建物に吸い込まれていくように入り口まで足を運ばせた。
入り口まで近づくと裕はより不気味であり、違和感を覚える。
表札がなければポストもない。呼び鈴もなく人が住んでいる気配がない。なにより、入り口まで来てから裕は今まで感じなかった肌寒さを寒気を感じはじめた。
(不気味だな。帰るか...。)
裕がそう思った瞬間。
キィ....
人が住んでいる気配のない家のドアが開いた音がした。
(やはり気になるな。入ってみるか。)
裕は帰ることより怖いもの見たさの興味に勝てず、入ることを決心した。
「おじゃまします...。」
少しだけ開いたドアを開けながら小さな声で挨拶をし家に入った裕。立て付けが悪いのか、ドアが自然に閉まる音が聞こえなかった。
家の中は薄暗く、周りが見えないためスマホをポケットから取り出しライトを灯し周りを見渡す。すると目に見えたのは、頭上には輪っかがあり羽が生えている女の銅像。まるで天使のようであり、銅像の前の床には日本語ではない文字で円が描かれていた。
「なんの文字だ?見たことないな。」
今まで見たことなかった字に興味をそそられた裕。もっと近くで見たく円に近づくと...。
「なになに、あなたは選ばれし者。今からこちらに来てもらいます。」
(どういうことだよ。てか、何で俺見たことない文字が読めるんだ?)
裕がそう思ったのも束の間、今まで薄暗かった部屋から急に光が溢れ出してきた。
(なんかやばそうだ。急いで出よう。)
人が住んでる気配がなかった建物から急に光が溢れたことで不気味さと危なさを感じた裕は、玄関に向かおうと振り返ろうとした時、天使のような姿をしたオブジェからより神々しい光が見えた。銅像と円を背に歩き出した裕。眩しい光の中、玄関にまで辿り着きドアノブに手をかけた時、ふと気がついた。
(このドア入った時、閉まった音しなかったよな?まあいいか。)
ギィ...
一瞬疑問に思ったが、気のせいだろと結論付けた裕は構わずドアを開けた。
すると...。
「よく来てくれた。異世界の者よ。」