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ガシッと掴んでしまったが大丈夫みたいだ。
耳を触っても特に嫌がる様子もなかったので指の動きが早くなり。
耳の穴にズボッと指が入ると。
「にゃあああああああ!」
すごい叫び声をあげて宿から追い出された。
窓から見ててもこの町に入ってから一回も他種族を見ていなかった俺はネッコ用にもコートを買っていた。それを着せ町を歩く。
今日は雨が降りそうな曇り空だった。それを見ていると。
「うええええええん、おにぃいいいいいいいい!」
声のする方を見ると。
ネッコが出店の横で泣いていた。
「どうした?」
「おじさんが世界一可愛いから串肉食べて良いっていったのに~! 嘘ついた~!」
「言ってねぇよ! お嬢さん串肉一本どうだいって呼び込んだだけだ!」
「…………あの、すいません、いくらですか?」
「まいど!」
どんだけ食うんだよこいつ。
俺が金を払っていると。
「謝って! そっちが悪いんだからね!」
何言ってんだこいつ。
そう思いながら振り向くと。
「え? 横も見ずに道の真ん中に出てくるからぶつかっただけで――」
お兄さんが困ったように言い、ネッコがいちゃもんをつけていた。
「むぅ! そっちが悪いんだからね!」
向かっていき、手で額を押さえられて腕を振り回している。
「あの」
「すいませんご迷惑をおかけしました」
お兄さんからネッコを引きはがし頭を下げていると。
「にゃはははは! こっちだよ~」
振り返ると子供と遊んでいた。
「お前いい加減にしろよ! 来ないなら置いてくぞ!」
ハッとした顔をし。
「……うええええええん! あたし捨てられた~! 一夜を共にして全身めちゃくちゃにされた後に捨てられた~!」
「お前なにいって――」
確かにもふもふはしたけども!
ざわざわと周りに人が集まり。
「あら可愛いわね~、子供の喧嘩かしら~」
「ふふ、若いっていいわね~」
ふぅ、どうやら大丈夫のようだ、変な誤解はされていない。
「くすぐったいの我慢したのに~! 穴にズボッて平気で入れてきたくせに~!」
おいちょっと待て! 確かにちょっともじもじしてたけど良いって言ったじゃん!
「いやぁねぇ、そんなに生々しい喧嘩だったの? ああいう可愛い顔した子がすぐやり捨てるのね」
「近頃の若い子と来たらねぇ、すぐズッコンバッ婚するもんだから」
……。
俺はネッコの手を引いて足早にその場所を後にした。移動すると人混みがあり。
「ふはははは、我が大魔法、とくと見るがよい!」
仮面を被った者が一段高いところに立ち、その周りには大量の見物人がいた。
「まずはこれだ! 召喚魔法!」
こいつ! もしかして二人目の使徒か!?
仮面の者が被っていた帽子を取り、杖で三回たたくと、なんと中から鳩が出てくるではないか。
それを見た観客は大盛り上がりでお金が大量に投げ込まれる。
「すごい! 大魔法使い様だ!」
魔法使いのようなローブを着た者が弟子にしてくれだの、偉そうなものがスカウトだの言っているのも聞こえた。
「ふはは、驚くのはまだはやい! これが! 重力魔法である!」
仮面を被った者の体が宙に浮いた!
驚嘆というなの静寂、……からの大合唱、観客は大いに沸いた。
「召喚魔法に重力魔法!? そんな大魔法を二種類も使いこなすなんて!」
「素敵! 抱いて!」
「俺を掘ってくれ!」
不自然に浮いてるけど、なんか魔法じゃなくね?
あ、……うんこれ、……手品だわ。
「すごいすごい! おにい! 全財産投げよう!?」
「ふざけんな!」
俺は興味を失い、本物の大魔法使いを探した。
よくある見た目の、冒険者ギルドに併設されている酒場に行くことにする。
「ネッコ、ちょっとお前小虎になっててくれる?」
「いいよ~」
「お前もうちょっと大人しく出来ないの?」
「言いたいこともやりたいことも全部やるって決めてるから! 人生は楽しんだもの勝ちなんだってわかったから!」
何言ってんだこいつ。
路地裏で小虎になったネッコを胸にしまい、中に入る。
あのままだと絶対トラブル起こすからな。
「おにいの匂い好き~」
「怪しまれるから話すなよ?」
…………もう寝たわこいつ。
注文せずに、聞き耳を立てても使徒の情報は見つからない。さっきの仮面手品師の話ばかりだ。
他の話題は。
「予言されてたほどの潜在能力が高い者を召喚できなかったらしい」
「ダンジョンからの魔物流出がやばいかもな」
「魔族との戦いも押されているらしい」
「昨日の大魔法を撃った化け物の捜索が始まるらしい」
とかだった。すると見慣れた連中が入ってきた。クラスメイトたちだ。
この町かよ! 顔変わっててよかった。こいつらはどんな状況なのだろうか、少し気になる。
面白そう、続きが読みたい、キャラ可愛い、など。
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一回でもクスリとしたら、わかりますよね?