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大皿が置かれると、アリスもお爺さんも若者も、全員が一斉にフォークを伸ばした。
「あっふあふ、ふぁんと! 肉汁が口の中であふへふ!」
「外のサクサク感がたまらんのぉ」
「こ、このマヨネーズというもの! 唐揚げに乗せるとトロっと溶け出すぞ! 革命だ。これは売れるぞ! そしてビールによくあう!」
「っ! お主天才か! これはビールと一緒に食うものか!」
「そして合間にはさんだり、くどくなった口にこのレモン!」
「言ったでしょう? 後悔させないと」
「「「「「おかわり!」」」」」
「はい、スープカレーもご自由にどうぞ」
「「「「「それも!」」」」」
「最後に、足りない方はこちらのパンを。中身はそれぞれ違います」
「ほお、ふわっふわじゃな、甘く、中身の違いで味がまったくの別物になる、そして驚くべきはその種類の豊富さじゃ」
……いろいろなパンを交換して食べていた。仲良しだ。
腹を満たし終えると豪商たちは談笑を始めたようで。
「……わし、ここで料理人になろうと思う」
「正気かじじい! 目を覚ませ!」
「いやの、せがれに後を継がせれば、わし、ここの飯がずっと食えると思うんじゃよ。おやどうした? 悔しそうな顔をして、ああそうか継いだばかりじゃと店を離れられんの、残念じゃな~、ここの生とからあげが好きな時に食えんとは」
「く……このじじい!」
一人が地図を広げる。
「生贄の町、そう呼ばれるほど、この村の立地は境界線に近い。魔獣の巣窟である大森林。人間族、獣人族、そして魔族領の境目。ついでになんだかんだ魚人族からも近づきやすく、島国からも来やすい。発展すると思うか?」
「だがなぜか魔物の被害がなくなったらしいじゃないか、しかもピタリと。住民の笑顔がその証拠じゃ。しかも外を見ろ」
「平民が着る服ではないな、それをみなが着ている。ガラス窓がすべての家にはめ込まれ、素晴らしい調度品の数々、売ったらいくらになるのだろうか、この町の財力が計り知れない。この町の住人は財宝の中で暮らしているようなものだ」
「あはは、遊具をもってくるのだ~」
「期待せずにはいられないでしょう?」
それは商人の言葉だ。アリスだけはヘロヘロだった。
「そういえば冒険者ギルドにサンドスネークの牙が持ち込まれたらしいですぞ、なんでも一本一千万で」
え? そんな値段するの!? 女神のやつネコババしすぎだろ!
「四天王が一人倒されたらしいです」
「ダンジョンで栄えた王都がそのダンジョンからの魔物の流出が止まらず、この町に移住し始めたらしい」
「流通の要が王都からこの町へと変わる時なのかもしれませんね」
「ほほほ、とある貴族の人さらいが露見し、優秀な護衛たちが根こそぎ退職したらしいぞい」
「妖精の里にド変態が現れ、木々をなぎ倒し、幼女にいたずらをしたあげく妖精を攫って行ったらしいです」
おい誰だそれ言ったの!
「……これだけ酒が入っては情報交換も何もできませんなぁ、どれ、オセロでもしますか」
「遊具、おまたせいたしました」
一人が買っていたオセロを出そうとすると、給仕がトランプと日本製の綺麗なオセロを置いていった。
付け焼刃の手作り品で既製品に勝てると思うなよ! 嫌がらせは止めないぞ!
俺は商人に紙のメモを渡した。
「実はオセロも本当はこの村の商品なのですが、王都でマネをし奪ったという話がありまして」
「ほほう、ならば儂らで取り返すかのぉ、豪商が四人もいれば例え白だとしても黒くできるじゃろう?」
「オセロだけにできるのだ~」
「お嬢には後でしっかり説明しよう、給仕さん、すまないがお嬢を部屋に連れて行ってくれないか」
どうやらアリスもフラフラと給仕の元へ向かったので紙を渡した。
奥の部屋から声が聞こえてくる。
「やめてください! お腹を殴っても羽虫のどら焼きは返ってきませんよ!」
「どの口が言うの! ウラァ!」
「オッブ、オオオオオ」
「きゃはは、すごいのビームみたいなの! どら焼きをもんじゃに変える大魔法なの、きゃはは!」
うんうん、こっちに来させないでよかったよかった。
商人が続きを読む。
「ではこのトランプについてですが、ルール説明や色々な遊び方が書いてある紙がありまして」
「おにい~!」
使えないヤツが現れた!
「! 美味そうな匂いと、おにいの匂い! ここだ~!」
テーブルの上にネッコが飛び乗ると、その足から異臭が放たれた。
「「「「うっぷ」」」」
……豪商と商人が全員吐くのを眺め。
「な、なるほど、もう一度食べられますね」
ナイスフォローだ商人! だがすまねぇ! ネッコは接待とか理解できないんだ!
面白そう、続きが読みたい、キャラ可愛い、など。
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一回でもクスリとしたら、わかりますよね?




