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俺の言葉を制し、女は丸い石に手をかざした。
「なるほど、お悩みがあるようですね」
「わかるんですか!?」
「もちろんです、人間関係で悩んでいますね?」
「そうです! 探している人がいて!」
「ふむむ、その人は、あなたの大切な人ですね?」
「はい! どこにいるんでしょう!?」
「あなたのすぐ近くにいるでしょう、でも、待ってください、運命が邪魔をしています!」
「そんな! いったいどうして!?」
「わかりません。しかし! このネックレスを身に着けていればその運命はいい方向に動き出すでしょう。このネックレスは私が力を込めたもので、本来は五十万ほどするのですが、あたなは特別な人のようです、今日に限り五万でお譲りしましょう。このネックレスを身に着けていれば、その後もあなたに幸運が舞い込むことでしょう」
…………は? こいつあれだ……詐欺師だわ。
そう気が付いたとき。
「おにぃ! おにぃの匂い! 助けて~!」
女の後ろからネッコの声が聞こえた。
「『虎柄の財布とは珍しい』とか『せっかくスッたのに生きてる』とか言ってた!」
俺と初めて目が合って気が付いたのだろう。スリをした相手だと。
え、こいつこんなショタの見た目した可愛い俺からスリしたの?
女はネッコの入った檻を投げ飛ばして逃げた。
情けない声を上げるネッコを思わずキャッチして助けたが。よく考えたらこいつ防御力は高かったな、と気が付いて後悔した。
急いで女を追いかけ、隠れられそうな路地裏に向かったが見つからない。
が、代わりにあの仮面を被っている者が、ガラの悪い連中や、荒くれ者に囲まれているようだ。
「人違いである! 我は関係ない、通りすがりの大魔法使いである!」
「なにしらばっくれてんだてめぇ!」
「そこの方! 助けてはくれないか! いかに我とてこの人数を相手にするのは大変なのである! ああ服を脱がすのはやめるのである!」
脱がせてなくね?
「大勢で回してベトベトにするのはやめるのである!」
だからしてなくね?
「恥辱に塗れてしまうのだ!」
なんだこいつ! だが困っている人は助けてもいいな、この出会い方、もしかしたら仮面さんが使徒だったのか? まぁ詐欺師より大道芸人のほうがまだましだ。
「なんだてめぇこいつの仲間か?」
「仲間ではないが、困っている人は助けようかと」
荒くれ者たちは怪訝な顔だ。
「「「困っているのはこっちなんだが?」」」
え、今なんと?
無言で固まり、困っているのを察してくれたのか。
「ま、大道芸で金を稼ぐのはいいよ。でもな、大道芸をしていい場所じゃないし、場所代も払わねぇ。しかも飲み代を付けにしてまったく払いにこねぇ」
荒くれ者は仮面を取り上げた。
「あ、やめ、か、仮面返して下さいいい!」
「仮面で騙されるやつなんていねぇだろ! 黙ってろ! こいつはスリもするわ詐欺もするわで被害者が多いんだよ! だから俺たちが頼まれたんだ! こっちが被害者なんだよ! さぁ金を払え! そして返せ!」
すぅー、はぁー。落ち着こう。
手先が器用で、大魔法使い(手品師)で、未来を見る賢者(詐欺占い)? 一致してる。
……こいつが使徒かぁ、はぁ。仮面被ってたら同一人物かわからなくない? わからないよ。
「た、助けてくださいいい」
こっちを向いて頼まれても困る。
「俺、仲間じゃないんで」
「そんなぁ、もうお金ないんです」
なんだ? 金が必要なわけでもあるのか? もしかしたら何か美談でもあって金を仕方なくだまし取っているのか。仕方ない、使徒だろうしついでに恩でも売るか。
……さて、何を渡すかが問題だ。
「ちなみにいくらくらいなんですかね?」
「五百万だな、なんだい? 肩代わりしてやるってのか?」
たっか。
この世界で手に入らないものなら高く売れるだろう。なおかつ即効性があってこの場で納得させられるもの。食べ物じゃ無理だし。
「これでどうにかなりませんかね?」
カメラを渡した。科学的にまだ作るのは難しいだろう物。それでいて人を傷つけず、この場で実演でき、使用限界もある。
電池で動き、フィルムも買い足さないといけないから無限には使えない。
「このボタンを押すと――」
荒くれ者に持たせ、ボタンを押させると、一枚の写真が出来上がる。
「目の前の光景がずっと残せる道具です」
「す、すげぇドワーフが作ったもんか? これは悪くねぇな。いや、五百万以上の価値は絶対にある……ちなみに聞くが、豪商の孫娘に。『私、私、幼馴染の! ごめん呪いを解くのにお金が必要で』って言ってだまし取った仮面野郎ってのはお前か?」
ガチの詐欺やん。
「はい、私です」
こいつ! 俺が肩代わりしたからあっさり白状しただろ!
面白そう、続きが読みたい、キャラ可愛い、など。
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一回でもクスリとしたら、わかりますよね?




