第五節 魔王の死
―――カッ!!!!!
強い光とともに感じたのは濃密な死の気配。
尋常じゃない熱と魔力が俺の体を壊していく。
やられた。まさか勇者の紋章を利用して爆裂魔法を使ってくるなんて。
爆裂魔法とは人間の国では禁術に指定されている魔法のはずだ。
その理由は大きく3つ。
1つ目は魔法の構築が複雑すぎて、習得難易度が高すぎるため。
2つ目は消費魔力が莫大であり、たとえ習得できたとしても魔力量が足りずに魔法は不発、魔力はすべて持っていかれるといった事態になりやすいため。
そして3つ目が爆裂魔法が爆裂属性という特殊な属性を持っているからだ。この爆裂属性とは、簡単に言うとすべての魔力を無視して攻撃できるという属性だ。
だから爆裂属性にはどんな結界も防御魔法も効かない。しかしそれは術者本人にも言えることであり、自身の発動した爆裂魔法に、必ず自身が巻き込まれる形になる。
だからこそ、あの少女はもう生きてはいないだろう。魔力なしでもかなりの耐久力のある俺が一撃で死にかけているのだ。人間があれを0距離で食らったらひとたまりもない。
爆裂魔法の光が収まり、周囲の状況が把握できるようになってきた。
『爆裂魔法、、とんでもないな』
目に見える範囲はすべて吹っ飛び更地となっている。
そして俺自身の体もひどい有様だ。
左足は吹き飛び、腹もえぐれ、右目が見えなくなっている。起き上がろうとしても起き上がれず、手足は鉛のように重たい。
あぁ、死ぬな、これは。もうどうしようもない。
むしろその高すぎる生命力が半端に生きながらえさせてくる。
1000年以上の人生もここで終わりか。
死に際に俺の頭には、先ほどの勇者を名乗る少女の顔が思い浮かんだ。
俺には鑑定のスキルがある。当然彼女も鑑定したが、なんとまだ16歳の子供だったのだ。
しかし彼女は、今まで俺に挑んできたどの人間よりも強かった。
いったいどれほどの努力を積み重ねたのだろう。どれほどのものを犠牲にしてきたのだろう。
この世界には、彼女の知らない素晴らしいものが山ほどある。
俺にとってはただの気まぐれではあったが、彼女にそれを知ってほしいとなぜか思った。
だから話しかけたのだが、どうやら彼女の勇者の証に細工をしたやつらは、それを俺を殺せる絶好の機会と踏んだらしい。
実際それは正しく、俺は死にかけている。
魔族は死ぬと、その強さに応じた純度の魔水晶を落とす。
俺の魔水晶を人間に渡すわけにはいかない。
少女を爆弾に変えて送り込むような連中に俺の魔水晶が渡ったら、この世界はおしまいだろう。
そう考えると俺は、体に残ったすべての魔力を使い、魔方陣を構築する。
この魔法は死の魔法。世界で俺しか使えないオリジナルの毒の魔法だ。
構築した魔方陣が紫色に強く光り、あたり一帯に超高濃度の毒が充満していく。
毒の結界はもともと魔王城があったあたりをすべて覆いつくすとその場で定着した。
『よし、完璧とまでは言えないが、これで俺の魔水晶は取りに来れないだろう』
あぁ、終わりが近い。意識が遠のいていく。せめてもう一度、昔見たあの景色を見たかったな。
数分後、毒の結界の中に生命はもういなかった