第二十節 お酒は飲んでも…その2
「いい?絶対見ちゃだめだからね」
『んー、わかったぁ』
ベロベロになっているマオを連れて脱衣所へ入る。
、、、結局一緒に入る流れになってしまった。
マオは結構きれい好きで、特に今日は一日中働いていたのもあって、どうしてもお風呂には入っておきたいみたい。
あのまま放っておいたら一人でも入ってただろうけど、さすがにここまで酔ってるマオを一人で入浴させるのは怖いので、私も入ることにした。
致し方がなくなのだ。これは不可抗力。
脳内で誰かに言い訳しながら、マオの服を脱がしていく。
「、、、、、、」
シャツとズボンを脱がせ、マオを下着姿にする。
相変わらずでっかい。そのくせ腰や足は細くて、でもハリがあって。
全女子があこがれるような抜群のプロポーションしてる。
『、、、りなぁ』
私がマオの体の隅々までに見とれていると、マオが恥ずかしそうにもじもじし始める。かわいい。
私の選んだ下着に身を包み、恥ずかしそうに佇むマオを見ていると、何とも言えぬ征服感が体を満たしていく。
『、、、恥ずかしいから、あんまり見ないで』
さすがに耐えられなくなったのか、マオが酔った顔をさらに赤くさせて小さな声で言う。
そういえばお風呂に入るんだった。危ない危ない、マオがかわいすぎて忘れかけてた。
「ごめんね、さっさと入っちゃおうか。私も脱ぐから、ちょっと向こう向いててくれるかな」
さささっと私も服を脱ぎ、ついでに後ろからマオに下着も脱がせる。
もちろん私だって裸になるのは恥ずかしい。けれど、女の子とお風呂に入るのは初めてじゃないし、今のマオは酔ってるから、なんとか許容範囲内って感じだ。
「、、、よし、じゃあ入ろっか」
『、、ん』
マオの手を取り浴室へ。
マオは律儀にも目を瞑ってくれてるけど、酔ってるのもあって、私の腕にしがみつく形で進む。
、、、、今までの何よりも柔らかい感触に右腕が包まれてる。やばい、まじでやばい。すごい。
よこしまな考えが頭をよぎるどころが常駐してるけど、理性を保ちつつ、とりあえずはマオを座らせる。
後ろから見ても、耳が真っ赤なのが分かる。
お酒のまわっているマオをお風呂で長居させるわけにもいかないし、ささっと済ませてしまおう。
「お湯、かけるからね」
一言声をかけてからお湯をかけ、頭から順番に洗っていく。
さらっさらでつやつやの髪。すべすべもちもちの肌。
人の体を洗うのなんて初めてだから、とにかく傷つけないように、慎重に優しく洗い上げる。
『、、、っふ、、、んぅ、、、あぁ』
艶めかしい声が聞こえても気にしない。心頭滅却。どっか行け、私の煩悩。
私の中にいる悪い私と格闘しながら、何とかマオをきれいにし、浴槽に入らせる。
よし、何とかもう一人の私に打ち勝てたな。
自分の体もさっさと洗ってしまおう。
私もすぐに体をきれいに洗い終えると、マオが入っても余るそこそこ広い浴槽につかる。
私がマオの正面に向き合う形で座ったことで、マオは視線のやり場に困ったのかまた目を瞑る。
その様子がかわいくてつい笑ってしまう。
私が笑ったことでさらに恥ずかしくなったのか、今度は体を隠すように腕で体を押さえている。
「ふふ、マオ。気にしすぎだよ。そりゃ私だって恥ずかしいけど」
顔を真っ赤にしてるマオを見てると、なんだか私の恥ずかしさは大したことないようにも見える。
、、、というか、ほんとに真っ赤過ぎない?元の肌が白いからかな、、、
だんだんと心配になってきたなと思ったとき、マオが口を開く。
『、、、、りな、なんか頭くらくらする』
のぼせたのか酔いが回ったのか、少ししんどそうな表情を浮かべるマオ。
私はマオのほうに身を乗り出してマオを抱えて浴槽から出ようとする。
その際にお互いのいろんなところがぶつかり合うが気にしない。
けれど濡れて脱力している体は思っているより重く、うまく持ち上げられない。
、、、ほんとは魔法は使いたくないけど、こういう時はしょうがないか。
私は身体強化の魔法をかけて、今度は軽々とマオを持ち上げる。
お姫様抱っこの形で抱きかかえて、マオも私の首に腕を回してくれる。
そのまま浴槽から出ようとして、ふと気づく。
、、、私、回復魔法使えるじゃん。
『、、、、りな?』
抱きかかえたまま動かない私を見て、マオが不安そうに呼びかける。
「大丈夫、今治すからね」
「”ヒール”!」
淡い光がマオを包んでいく。
腕の中のマオの顔色がどんどん戻っていく。
「よかった、何とかなりそう」
数秒後、マオは顔の赤みもなくなり、さっきまでのトロンとした表情はなりを潜め、少し困惑した表情で私を見上げている。
『、、、この状況は、、、』
、、、ん?
待って?確かヒールの効果って、傷と体力の回復と、、、
状態異常回復だった気が。
『わああああ!!!ちょっと待て!!なんで俺と里奈が風呂に入ってるんだ!!』
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数分後、、
結局もう今更じゃんということで、私とマオは仲良く浴槽に浸かっていた。
といってもマオはすごく恥ずかしいみたいで、胸やらなんやらを見えないように腕で隠している。
「、、、、っていうわけで私とマオが一緒に入ってたんだよ」
マオは酔うと記憶がなくなるタイプのようで、私が一から説明すると、
『そうだったのか、すまない、手をかけさせてしまって』
と謝ってきた。
「大丈夫、気にしないでよ。転生してお酒弱くなっちゃったんだね」
『ああ、どうやらそのようだ。お酒はしばらく控えよう。まさか俺が酒に飲まれるなんて』
まあでもよって甘えたちゃんになったマオもかわいかったし、たまにならいいかもしれない。
それにしても、こうやって落ち着いてマオを見ると、やっぱりとんでもない美人なんだなぁって思う。
こんなに細いのに触るとすごく柔らかくて、魅了されてしまいそうになる。
私の目線が気になるのか、マオは少し身じろぎすると、顔を赤くして
『そんなにじっと見つめないでくれ、、、』
と上目遣いで言ってくる。あざとかわいいな。
「でもマオってこの世界に来たときはずっと全裸だったんでしょ?普段から割と薄着だし。意外と恥ずかしがりやなんだね」
思ったことをそのまま伝える。
『違う!その、、里奈だから恥ずかしいんだよ!』
顔をもっと赤くさせて叫ぶマオ。
「え、それってどういう」
『もうあがる!先にあがるからな!』
ばしゃあっと立ち上がるとそそくさと浴室から出て行ってしまう。
ぽつんと取り残された私。
「、、、私だから、恥ずかしい、、、」
今度は私が顔を真っ赤にする番だった。




