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魔王と勇者の異世界日記  作者: ロッキー
第二章 魔王と同居
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第十九節 お酒は飲んでも…その1

「え、マオさんバイト始めたんだ!」


「そ。今日から働いてるよ」


マオのバイトが決まった次の日の月曜日、私は茜とお昼ご飯を食べながら昨日の買い物の話をしていた。


「中学の時によく行ってた商店街の近くの喫茶店あったでしょ?あそこで働くんだよ」


「菜緒さんのところ?そういえば最近は行ってないなぁ」


中学時代は学校が近かったのでよく行っていたが、高校になってからは少し遠くなったため行っていなかった。

昨日マオと行ったのだってかなり久しぶりだったのだ。


「マオさんのエプロン姿かぁ、、、似合うんだろうなぁ」


茜が少しだらしない顔をしながら言う。

まあ確かにマオならどんな制服でも着こなしてしまうんだろうな。


「うーん、、マオ、大丈夫かなぁ」


マオは元魔王なわけだし、どこかで働くのは間違いなく初めての経験だと思う。

、、、うまくできてるか心配だ。

今頃悪戦苦闘しながらお昼時の忙しい時間を過ごしているマオを想像する。


「里奈ちゃんは心配性だなぁ」


あまりにも心配が顔に出ていたのか、茜に苦笑される。

でもやっぱ心配なんだもん。


、、、よし決めた。


「茜、今日の放課後デートしよっか」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


その日の放課後、私は茜と一緒にあの喫茶店へと向かっていた。


一目見るだけ、一目見るだけ。


そんな気持ちで歩いていると、もうすぐ喫茶店が見えてきた。

ん、、?なんだか少し騒がしいような。



―――ワイワイ、がやがや


喫茶店に到着すると、私と茜は言葉を失った。


店の前には少しの行列ができており、待ちが発生している状態だった。


「しばらく見ないうちに人気になったんだねぇ」


茜はのほほんとしているが、昨日の感じを見る限り違う気がする。

もともとこの店はリピーターで成り立っている部分があり、そこまで客足が多いほうではないのだ。

だからこそ私たちは受験勉強で多少長居しても許されていたわけで。


ちょうどその時に、カランと扉が開き、中から2人組の客が出てくる。


――あのウェイターさんめっちゃかわいかったな!

――なんで今まで知らなかったんだ!


、、、今の会話を聞く限り、おそらくこの繁盛具合はマオによるものなんだろう。

小窓から店内を覗くと、今まで見たことないほどに賑わっており、奥のほうでおそらくマオと思われる黒髪の女性の後ろ姿が見えた。


「さすがにこんなに忙しい中入ったら冷やかしになっちゃうね」


茜が苦笑しながら私に言う。


「、、、さすがに迷惑かけるわけにはいかないし、今日のところはやめておこうか」


私とてマオの初勤務を邪魔したいわけではない。むしろきちんと働けていることが確認できたので本来の目的は達成したといえる。

まあ、エプロンドレスのマオに接客してもらいたかったのも事実だけど、これはまたの機会にしよう。


「、、、?」


そこでふと、私は店の入り口あたりに小さな魔力を感知する。

そこに目をやると入り口のドアの上に黒いもやもやが浮かんでいた。


さらに集中して感知をすると、入り口だけでなく店内のところどころにマオの魔力を確認できた。


、、、監視の魔法かな、多分。

勇者時代の私にかけられていた魔法とおそらく同系統の魔法だろう。

なるほど、こうやって使うやり方もあるのか。


「里奈ちゃん?どうしたの?」


急に立ち止まった私をみて茜が心配してくれる。


「ううん、何でもないよ。どこかで遊んで帰ろっか」


、、私は茜の言うように心配しすぎていたようだ。

そもそもマオには魔法の力があって、並大抵のことは何とか出来てしまうに違いない。

昨日だって今だって、魔法を日常生活に応用して効率よく物事をこなしている。


この世界で私が教えてあげれることなんて、意外と無いのかなぁ。


マオが順調にこの世界に馴染んでいく姿を見て、うれしい気持ちとちょっと寂しい気持ちを抱えながら家路についた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その日の夜。


『つかれたぁ!!』


「お疲れ様、マオちゃん。初めてのお仕事はどうだった?」


『ふふん、順調だったぞ!』


パンのようなものが入った袋をもったマオが帰宅し、お母さんとお話ししている。

ドヤ顔で仕事っぷりを話すマオは、初めてのお使いをした後の子供のようでかわいくて笑ってしまう。


『む、何を笑ってるのだ。せっかくパンをもらってきたのにあげないぞ』


「ごめんごめん、マオがかわいくて」


私の言葉にマオは少し顔を赤くする。かわいい。


顔が赤くなったのをごまかすように、マオが口を開く。


『そういえば今日、店の前まで茜と来ていただろう。せっかく来たなら入ればよかったのに』


「やっぱり気づいてたんだ。あれは監視の魔法?忙しそうだし冷やかしで入ったら怒られるかなって」


『ああ、闇属性の魔法の一種だな。むしろ完璧な接客を見せてやろうとおもっていたよ』


あまりにも自信満々すぎるマオが面白くてまた笑ってしまう。

さすが魔王、こういう所は頂点に立ってたマインドを感じる。


そうやって軽口を言い合っていると、キッチンからお母さんの声が聞こえる。


「ご飯できたわよ。今日はだいぶ張り切っちゃった」


てへ、と笑うお母さん。

食卓を見ると確かにいつもよりもかなり豪勢な食事だ。


『おお、どれもおいしそうだな。何かの祝い事?』


マオが尋ねると、


「もちろん!今日はマオちゃんの記念すべき初めてのお仕事だもの!」


お母さんがニッコニコで答える。

今日はお母さんお酒飲んじゃおうかなぁとか言ってる。陽気過ぎない?


「お母さん、飲みすぎちゃだめだよ」


「大丈夫大丈夫、ちゃんと割って飲むから」


そう言ってお母さんが取り出してきたのは、お母さんが自分で漬けている梅酒だ。

それと一緒に冷蔵庫から炭酸水を取り出している。


『それはお酒か』


マオが興味を持ったように尋ねる。


「そうよ、私がつけてる梅酒だよ。ちょっと飲んでみる?、、、そういえばマオちゃんはお酒飲めるのかしら」


お母さんと私の目線がマオに集中する。

見た目は20前後ぐらいに見えるし、中身は千年以上生きている元魔王だ。問題なさそう。


『あぁ、飲めるぞ。どれだけ飲んでも酔うことは無かったが』


それはきっと毒耐性が高すぎたせいだろう。解毒の魔法はアルコールにも効くから、魔法の定義としてはアルコールは毒に分類されているはずだ。


それをきいたお母さんは、あらあら強いのねと言いながらマオの分のグラスも用意する。

いいなぁお酒。私も早く飲めるようになりたいな。


マオのグラスも用意し終わり、なんだかクリスマスみたいな雰囲気の食卓について、食事を始める。


「「『いただきます』」」





―――数十分後




私は理性と戦っていた。


『、、、ねぇりな?おれきょうおしごと頑張ったよ?、、ほめて?』


、、お前酒強いんじゃなかったんかい!


いつもよりも遥かに近い距離でマオが甘えてくる。

どうしよう良い匂いする、顔がいい、かわいすぎる。


『ねぇってばぁ』


さらにマオは私に近づき、私の腕を抱いてくる。

やわらかい。腕が幸せな感覚に包まれている。


「うん、マオ、えらいね。あのお店にあんなにお客さんがいたの初めて見たよ。マオのおかげだね。えらいね」


何とか理性で抑え込み、空いている手でマオの頭をなでると、えへへと言いながら目を細める。


やばいぞこれ、マオがかわいすぎていろいろと我慢できるだろうか。



「そういえばお風呂用意できてるからせっかくだし二人で入っちゃいなさいよ」


お母さんもどう考えても飲みすぎてるよね?酔ってるよね??


顔が真っ赤なお母さんのとんでもない提案のあと、マオをちらりと見ると、


『、、、はいる、、?』


お酒で赤らんだ顔と少しうるんだ瞳で上目遣いに私を見つめながらマオが言った。


、、、え?、、、これガチで入る流れ、、、?

お久しぶりの更新です。

社畜を脱却して帰ってきました。

更新を再開させていきますのでよろしくお願いいたします。

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