第一節 神様に会った
「、、、~」
、、、ぅ。
「起、、下、、い」
、、ん?
「あの~、おきてくださ~い」
あれ?
「あ!やっと起きましたね!」
私って死んだはずでは?
それともあれって夢だった?
いや、あの熱さや痛みは本物だった。確かに私は勇者の紋章の謎の爆発によって死んだはずだ。
「ちょっと、聞いてます?」
なんださっきからうるさいな。今考え事してるんだから。
「なっ!文化を司る神である私にうるさいだなんて!」
え?神様?本物ですか?ていうかなんで私さっきから喋れないの?
「もちろん本物です!あなたが喋れないのは無理もありません。今のあなたは死んでしまって魂だけの存在ですからね。本来ならそのまま輪廻転生の流れに乗るはずだったのですが、私が無理やりこの場に引っ張り上げたのです」
なるほど。姿は全く見えないがどうやら本物の神様らしい。
そこで私は一つの疑問をぶつけてみた。
神様、どうして私は死んだのですか?
「あの紋章にはとある仕掛けが施されていました。一つは監視の魔法。王国の人間は紋章を通じてあなたの状況を確認していました。そして二つ目があなたが死ぬ要因となってしまった爆裂魔法です」
監視の魔法なんてかけた覚えは、、、
それに爆裂魔法に関しては私はそもそも使えないはずだし。
「言いづらいですが、王国はあなたを便利な駒としていたようですね。もしあなたが魔王に勝てれば御の字、負けても爆裂魔法を起動させて相打ちにもっていく手はずだったようです」
そうですか、、
まあ便利に扱われているという自覚はありました。小さいときから訓練以外のほとんどをさせてもらえなかったし。
それより、あの魔王はどうなったんですか?死んじゃったんですか?
「いいえ。あの爆発によって半径数百mの生物は死滅しましたが、魔王はまだ生きています。とはいってもかなりの深手を負っているようで、もう長くは生きられないでしょうけど」
そっかぁ。なんか話し合いをしようとしてたっぽいし、悪い魔族じゃないのかもしれないが、私自身はもう死んでしまっているしもうどうしようもない。
そういえば神様はなぜ私をここに連れてきたのですか?
「あぁ、そうです、本題を忘れるところでした」
こほん、と一つ咳払いをしてから
「あなたには別の世界に転生する機会を与えようかと思いまして」
ん?
別の世界?そんなものがあるの?
「ええ。あなたはどんな世界でどんな風に生きていきたいですか?」
もし、自分の好きな生き方を選べるのならば、、、
私は、平和な世界に行きたい。
血と煙の臭いなんてない、平和な世界。
そこで、私が手に入れられなかった普通の女の子としての生き方をしてみたい。
「なるほど。それがあなたの望みですね」
女神は少しの間を置いて、
「では、あなたには『地球』という星に転生してもらいましょう。初めから記憶を持っていると逆に大変でしょうから、今のあなたの年齢、16歳になったときに記憶がよみがえります。」
その世界には争いはないのだろうか。
「残念ながら争いの無い世界は見つけられませんでした。しかし地球は、あなたがこれまで暮らしてきた世界よりよっぽど平和ですよ。なにせ魔法すらありませんから」
じゃあ魔法は使えなくなっちゃうのか。
ちょっと寂しいな。
「いえ、地球で魔法が発展しなかったのは、大気の魔力濃度が薄すぎるせいで、誰も魔力という存在に気づいていないだけだからです。魔力の扱いにたけているあなたなら、少しくらいの魔法なら使えると思いますよ。ただ、魔力を生み出してくれる勇者の証はもうありませんから、使い過ぎには注意してくださいね」
なんと。私だけ魔法が使えるのか。それだけですごく楽に生きていけそうだな。
「ほかになにか質問はありませんか?」
いや、無い。
平和な世界、、、楽しみだ。
神様、こんな機会をくださってありがとうございます。
私、平和な世界で、めいっぱい幸せになって見せます!
「ええ。私もそうなることを望んでいます。」
「あなたに、よき人生があらんことを」
そうして私の意識は暗転した。