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魔王と勇者の異世界日記  作者: ロッキー
第二章 魔王と同居
19/22

第十八節 お買い物デートその2

11/14 一部表現の変更・削除を行いました。

「ふー。いっぱい買ったね」


私は隣を歩くマオを少し見上げながら言う。


『ちょっと買い過ぎじゃないか?』


ランジェリーショップを出てからもずっと繋いでいる手とは反対の手を見ると、そこにはたくさんの紙袋が提げられている。もちろん私の手にも。


マオがどんな服でも似合うから、つい楽しくなって買ってしまった。マオの買い物用にお母さんが持たせてくれたクレジットカードで払っているので、あとでお母さんに謝っとかないと。


『それにしても、、、本格的に人が多くなってきたな、、、』


時刻は13時前。ここらへんで買い物ができる施設はこのショッピングモールを含めそう多くは無いため、休日の昼ともなれば客も集中するのだろう。


マオはやっぱり人の目が気になるのか、私の手を握る力が少し強くなる。


「よし、ここで買いたいものはあらかた買っちゃったし、ご飯食べにいこっか」


『おお!ごはん!』


かなりの食いつき具合。お腹空いてたんだな。


『どこで食べるんだ??』


「ここから商店街のほうに向かって行ったところにある喫茶店に入ろうかな。中学の時によく茜といって勉強とかしてたとこなんだけど」


あそこの喫茶店は量も多くて安くておいしいというすごくいいお店だ。ちょっと奥まった路地にあるから知られざる名店って感じの店。

お店の経営自体はマスターと奥さんの割と若い夫婦で切り盛りしてるお店で、お客さんが少ないときなんかは奥さんとお話したこともあったな。


それこそ高校受験の時期は休みの日によくいっていたお店だ。


「あそこは料理が何でもおいしいんだよ。サンドイッチとかめっちゃ大きいからね」


それにあそこでお昼を食べて商店街でお母さんのお使いを済ませることができるし。


『ふふ、楽しみだ。早く行こう』


強者っぽいセリフを吐きながら催促してくるマオ。こういうちょっと子供っぽいところもかわいいな。


私たちはそのままショッピングモールを出る。


「、、、あっつ」


『、、確かに暑いな』


照り付ける日差し。朝と比べてかなり気温も上がっており、外を歩く人はみんな上着を脱いで手に持っている。


私は自分のカバンを漁ると忘れ物に気づく。


「しまった。日傘忘れちゃったな」


まだいらないだろうと思って家に置いてきてしまった。


『日傘ってあの人が差してるやつか』


マオの目線の先には日傘をさして歩く女性の姿がある。


「そうだよ。日焼けを防いだり、暑さをしのぐために使うんだよ」


『それなら俺に任せるといい』


マオは得意げにそう言うと、魔力を集中させ始めた。

するとマオの影から黒い何かがうにょうにょと伸びていく。

黒いうにょうにょは私たちの頭の上まで伸びると、バサッっと傘のように開き、太陽からの光が遮られる。

これ、周りの人にはどう見えてるんだろう。


『大丈夫。隠蔽魔法も使ってるから』


私の心を読むのが得意なマオはそう言ってにこりと微笑む。


『それにいい加減人の視線にも疲れたからな』


ドヤ顔魔王と一緒に私は目的の喫茶店へと歩き始めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カランカラン


「いらっしゃいませ」


お店到着。ここまで日傘を出してくれたマオに感謝を言いつつお店に入ると、カウンターに中からやさしそうな女性が挨拶をくれた。

ここのマスターの奥さんの菜緒さんだ。


「あら、久しぶりね、里奈ちゃん」


「はい、お久しぶりです」


「今日は茜ちゃんとは一緒じゃないのね。そちらの方はお友達?すごい美人さんね」


「最近うちに居候してきた子なんです」


『、、はじめまして』


「はい、はじめまして。ゆっくりしていってくださいね。里奈ちゃん、好きな席座っちゃっていいわよ」


菜緒さんの言葉を聞き私は店内をぐるっと見渡す。

お昼時を過ぎているのもあり、店内に他のお客さんは見当たらない。

とりあえず前よく座っていたテーブルにつく。


するとすぐに菜緒さんが水とお手拭きを持ってきてくれる。

カウンターから出てきた菜緒さんを見て私は少しびっくりする。


「菜緒さん、おなかおっきくなってる!」


ことんと水の入ったグラスを置きながら菜緒さんは微笑む。


「もう7か月になるからね。触ってみる?」


菜緒さんに言われてそーっとお腹を触る。なんというか、命を感じる気がする。なんとなく。

私が最後にこの店に来たのが3か月ぐらい前だからそこからこんなに大きくなったんだ。


ちらりとマオを見ると、マオも興味深そうに菜緒さんのお腹を見ている。


「マオも触らせてもらう?」


「いいですよ、どうぞ」


私と菜緒さんに言われて、マオは恐る恐るといった感じでお腹を触る。

ひとしきり撫でてからマオは菜緒さんを見ると


『元気な子が生まれるといいですね』


と微笑みながら言った。



その後私たちはそれぞれ料理を注文し、菜緒さんがそれを席まで運んでくれた。

ちなみに私はナポリタン、マオはびっくりするぐらい大きなサンドイッチを注文した。


私もマオもお腹が空いていたので、料理がテーブルに着くとすぐに食事を始める。

相変わらずここのご飯はおいしい。

ちらりとマオを見ると、小さな口にめいっぱいサンドイッチを頬張って幸せそうな顔をしている。かわいい。


『ここ、いいな。おいしい』


「でしょ。量が多いけど、残った分は持ち帰りにもできるんだよ」


まあマオは持ち帰らなくてもその場で全部食べてしまいそうな勢いだけど。

早々にでっかいサンドイッチを半分平らげたマオが少し物欲しそうに私の皿を見る。


「、、、、一口食べる?」


『、、いいの?』


「うん、いいよ。はい、あーん」


そういいながらフォークにナポリタンを巻き付け、マオの口元に持っていく。

一瞬マオがびっくりしたように肩を震わせる。

数秒私のフォークを見つめた後、顔を赤くしたマオが口を開ける。


私はそのままマオにナポリタンを食べさせる。

さらに顔を赤くしたマオはちっちゃな声でおいしいと呟くと、そうだ!と言って今度は自分のサンドイッチを一口大に切ると私に向けてくる。


『里奈にも一口あげる』


上目遣いで顔を赤くしたマオが言ってくる。

今度は私が顔を赤くする番だった。おお、これはなかなか破壊力が、、、。


私が口を開けるとマオがサンドイッチを食べさせてくれる。

その時、私の唇にマオの指が少し触れる。


『、、、!!』


その瞬間、マオの顔が一気に赤く染まる。

マオのその反応があまりにもかわいくて、私まで照れてしまう。


『、、、、、』


「、、、、、」


、、、、二人して顔真っ赤にして何してるんだ私たちは。


二人とも沈黙して照れあっていると、私とマオそれぞれの前にコーヒーカップが置かれる。

いつの間にかテーブルまで来ていた菜緒さんが持ってきてくれたのだ。


「はい、これサービスね。初めて仕入れた豆でブレンドしてみたから、ちょっと試飲してみて」


それにしても、と菜緒さんが続ける。


「二人はとっても仲良しなのねぇ。なんだか恋人同士みたいで素敵ね」


ちょっと菜緒さん?照れちゃうから、私たち。

というか食べさせ合ってるの見られてたのか。恥ずかしい。


私は恥ずかしさをごまかすようにコーヒーに手を伸ばす。


一口飲むと、少し酸味のある苦みが口に広がり、なんとなく体の熱を冷ましていく気がする。

正直コーヒーの良し悪しは分からないけど、今はこの酸味に少し救われた気がする。


「これ、とってもおいしいです」


「そう?よかったわぁ」


菜緒さんはにっこりと笑う。少し癖になっているのか、手を自然と大きなおなかにもっていく菜緒さん。


コーヒーのおかげで幾分か冷静になった頭で少し気になったことを聞いてみる。


「そういえば、菜緒さんっていつまでお店に立たれるんですか?」


そろそろ働き続けるには負担が大きいんじゃないだろうか。


「私はまだまだ働けるんだけど、旦那が心配症でね。実は来週いっぱいでお昼の時間は休業にしようと思ってるの。」


ああ、あの旦那さんは菜緒さんラブだからなぁ。旦那さんは夜のバータイムもやっているので、お昼は菜緒さんがメインで、夕方ごろから旦那さんもお店に立っていたイメージがある。


「バイトさんとかがいればまた違うんだろうけど」


そう言う菜緒さんの顔は少し寂しそうだ。

このお店は通りから少し外れた隠れ家的なお店だ。お客さんはリピーターが多いから困ってはいないみたいだけど、その分働きたいって若い人も少ないみたい。私も、私と茜以外の学生をこの店で見ることはほとんどなかったなぁ。


カチャリ、とコーヒーカップを置く音が聞こえる。


音のほうを見ると、ちょうどマオがコーヒーを飲んだところだった。

私と同じように、コーヒーでいくらか冷静になった様子のマオは、菜緒さんのほうを見て言う。


『それなら、お、わたしをここで働かせてくれませんか?』


そういえば今日の外出はマオの働き口を探すのがメインだった。私の中では買い物がメインだったけど。


いつになく真剣な顔つきのマオを見て、マオが思いつきではなく、素直にここで働きたいと思っていることが伝わる。


「、、、えっと、気持ちは嬉しいし、来てくれればとっても助かるんだけど、いいの?なんというか、うちはほら、駅前のお店とかに比べてもオシャレなわけじゃないし、、」


『大丈夫。わたしはここで働きたい』


しっかりと菜緒さんの目を見て話すマオ。敬語がどっかに吹っ飛んでるけど。

きっとマオは困っている人を見捨てられないんだろうなぁ。

私よりよっぽど勇者だよ、ほんとに。


「菜緒さん、私からもお願いします。この子、ちょうど今お仕事を探してて、面倒見てあげてくれませんか?」


マオに続き私も頭を下げる。マオは美人だし優秀だけど、戸籍や素性があやふやだからここら辺は私がサポートしないと信用してもらうのは難しいだろうし。


「、、、わかったわ。もともと人手不足だし、こんな美人さんが入ってくれれば売り上げも伸びちゃうかもね」


にこりと笑うと菜緒さんは言う。


「これからよろしくね、マオさん」


『こちらこそよろしく』


、、、マオ、敬語。




その後残った料理を平らげると、マオと菜緒さんは今後について話し合った。

もともとマオは暇だったのもあって、もう明日から働くらしい。なんというスピード感。


割ととんとん拍子で話が進み、マオの就職先が決まった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


喫茶店を後にして、商店街でお母さんからのお使いを済ませる。


商店街から家までの帰り道、かなり日が傾いているが日差しは未だ強く、マオに日傘を作ってもらい、並んで歩く。


『、、、、今日はいろいろあったな』


感慨深くマオが呟く。


『改めて、自分が女性になったということを実感したよ』


下着を買って、服もたくさん買って、日焼けを気にして。

もしかしたら、妊婦である菜緒さんとお話をしたことも、マオの中では女性を自覚する何かがあったのかもしれない。


「、、、つらい?」


何かの本で読んだが、世の中には自分の心と体の性が違うことで悩みながら生きている人もいるらしい。

それこそ思い悩み過ぎて、自分で命を絶ってしまう人もいるらしい。

そう考えると背筋がぞっとする。

マオにいなくなってほしくない。せっかく転生したのだから、楽しく生きてほしい。


『いや、実はつらいという感情はないんだ。もちろん今までと何もかも違うから戸惑いはあるけど、思ったより自分が女性であることを受け入れれてる』


それに、とマオは続ける。


『女性だったからこそこうやって里奈と楽しい時間を過ごせていると思っているよ』


夕日に照らされ、ぞくぞくするほどの美貌のマオはそうやって殺し文句を告げてくる。


『きっとこれからも、悩んだり苦労することもあるけど』


夕日よりもさらに赤い私の顔を見つめ、最大級の笑顔で私に言う。


『どうかわたしを守ってね』

下期あたまのくっそ忙しい10月を何とか乗り切りました。(なお更新0回)

また年末、年度末と忙しくなるので11月はしっかり更新していきたいです。

今後とも応援何卒よろしくお願いいたします。

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