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魔王と勇者の異世界日記  作者: ロッキー
第二章 魔王と同居
18/22

第十七節 お買い物デート

お姉ちゃん勝負から1週間が経った日曜日。

珍しく早起きした私はマオとお母さんと一緒に朝ご飯を食べていた。


「今日のお味噌汁、おいしいね」


『ふふん。最近やっとちょうどいい味加減を覚えたんだ』


あの日以降、マオはお料理にハマったようで、こうして朝ご飯を作るようになっていた。マオが料理を手伝うようになってお母さんはずいぶん楽になったみたいだ。


結局お姉ちゃん勝負は決着がつかずに終わってしまった。お昼ご飯の後も私と茜は二人に甘やかされ続けたのだが、その最中茜が「もうこれ以上の幸せを受け止めきれません!!」と言いながら戦闘不能に。正直あのまま続けていたら私もそうなっていたかもしれない。顔のいい巨乳お姉さん二人に交互に甘々にされてたら誰だってああなるよ。

と、茜の名誉のために心の中で独り言ちる。


私は意識を目の前でドヤ顔をしている元魔王に戻す。ドヤ顔かわいい。

あの日以降マオはさらに表情が豊かになった。もともと顔色は分かりやすいほうだったけど、特に最近はよく顔を赤くしている気がする。あ、目が合った。、、、ほら、赤くなった。

まあなんにせよ、これは間違いなく良いことだと思うし、このままマオがこの世界になじんでくれるといいな。


マオが私の視線から逃げるように自分のお皿に視線を戻すと、そのままの状態で口を開いた。


『そういえば、、、俺はそろそろ働こうと思うんだ。いつまでもタダ飯食らいのままではだめだからな』


えらい。えらすぎる。まだ学生の私からすると働くということがどういうことなのかまだ分からないけど、こうして自らその選択ができるマオはすごい。


「働くって言っても、マオちゃんは何かしたいことがあるの?まだこの家にも来たばかりなんだし、焦らなくていいのよ?」


お母さんがマオに言う。


『なんというか、最近は手持無沙汰なんだ。特に里奈が学校に行っている間は、ママさんの手伝いを少しするぐらいだったし。まあしたいことといっても、具体的にどんな仕事があるのかも分からないから、まずはそれを調べるところからだな』


「なるほどねぇ。確かにマオちゃん物覚えいいもの。料理だって一度教えたらすぐできちゃうし、家にずっといるのも暇よねぇ」


確かになぁ。そもそもマオがこの世界に来たのだって平和で自然豊かな世界を望んできたって言ってたし、家に引きこもりっぱなしなのも良くないよね。


うーんと三人で考える。マオは正直何でもできるだろうからどんな仕事でも問題はないんだろうし、それなら本人の興味のあるものを仕事にするのがいい気がする。


「あ、そうだ」


お母さんが何か思いついたように言う。


「せっかく日曜日なんだし、見に行けばいいじゃない。この近辺にどんなお店があるのかとか。それにマオちゃんの服とかもいろいろ買っておかないといけないし」


確かに。今だってマオの着ている服は私のものだ。私がオーバーサイズ気味に買った服を魔王に着させている。それに何より、、、


私はマオの胸の部分をじぃーっと見つめる。

マオは私の視線に気づきワタワタしながら腕で胸を隠すように組む。


『な、、なんだ、、?恥ずかしいから胸ばかり見ないでくれ』


私は胸からマオの顔に視線を移すと言った。


「いつまでもノーブラのままだと将来後悔するかもよ。特にマオはおっきいんだから」


マオは私の言葉に顔を真っ赤にしながら


『だ、だってしょうがないだろ。そもそも合うサイズがないじゃないか』


む。なるほど。つまり私の胸が小さいと?


私はにっこりとマオに微笑むと


「じゃあ買いに行こ?あんた用のでっかい奴をね」


『ひぃ、、その顔怖いぞ、、、』


そんなこんなで私とマオは買い物に出かけることになった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

時刻は10時前。

正直買い物に出かけるだけにしてはかなり早い気もするが、下着を買うのならショッピングモールまでいかないといけない。あーゆーのは結局大手のメーカーのほうが品揃えも値段も良いのだ。


私とマオはお出かけ用の服に着替えると、二人そろって玄関へ。

するとリビングからお母さんが顔を出して


「里奈。ちょっと買ってきてほしい食材があるから帰りに買ってきてくれない?内容は後でスマホで送っておくから」


「了解だよー」


お母さんの言葉に返事をしつつ靴を履くと玄関のドアを開ける。


「『行ってきます』」


「行ってらっしゃい、気を付けてね」


私とマオの買い物デートが始まった。



玄関を出ると、そこそこ強い日差しとまだぎり涼しい風が吹く5月の終わり特有の天気だった。

結構日差し強いな。日焼け止め持ってて正解だな。


「マオ、こっちおいで。日焼け止め塗ってあげる」


『ん』


私はカバンから日焼け止めを出すと、マオの腕に塗る。

わお、すべすべ。でも触るとふにふにと柔らかくていつまでも触っていたくなる。

マオの両腕、首元、顔にまんべんなく日焼け止めを塗る。


「マオ、顔真っ赤だよ?もしかして暑い?」


『、、いや、大丈夫。熱いけど暑くない』


何とかクールな顔を保ったマオを確認すると、今度は自分に日焼け止めを塗る。

数十秒ほどで、マオと同じように全体に塗り終わるとマオに振り向き言う。


「ごめんね、遅くなった。これで大丈夫だから行こう」


『あぁ、俺も何とか落ち着いた。行こう』


今度こそ私たちは家を出発した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「マオ、大丈夫??」


『うぅ、何とか』


場所はショッピングモール。

私の隣には顔色を若干悪くしたマオがいた。


『すごくたくさんの目線を感じる、、、』


「そりゃ日曜日の昼にこんな爆乳スーパー美人がいたらみんな見ちゃうよ」


マオの顔色が悪い原因はこれだ。人ごみを歩いてその流れに酔ってしまったのと、人からの目線がどうしても気になってしまうみたい。


「マオ。ほら、手つなご?」


私は少しふらふらと歩くマオが心配で手を差し伸べる。

マオはすぐに私の手を取ると抱き寄せるように私に密着した。


『すまない、しばらくこのままがいい、、』


可愛すぎませんかね。弱っている人にこんなことを思うのは失礼なんだろうけど。

私は自分より少し高い位置にあるマオの頭を撫でる。


「大丈夫、それよりもどこかの店に入っちゃったほうが楽になるかもね」


そんなことを言ってマオを励ましていると、目的のお店が見えてくる。


「ほら、マオ。あそこのお店だよ」


『ん?、、、あの店は、、、』


ピンクを基調とした店内の内装。布面積の小さい服を着るマネキン。明らかに男子禁制ですって感じの雰囲気を醸し出すその店は


「ランジェリーショップです」


マオの手がきゅっと強く握る。


『ま、待って。まだ心の準備が、、』


「はいはい、元魔王でしょ?覚悟しなさい」


半ば強引にマオを店の中へ。

一歩入った時点でマオは抵抗をあきらめたのか、顔を赤く染めながら私についてくる。

私は商品の品出しをしている店員さんに声をかける。


「すいませーん。あの、サイズを測ってもらいたいんですけど」


いかにもショップ店員って感じのかわいい店員さんはにこりと笑うと


「かしこまりました。ではこちらにどうぞ」


そういいながら私を連れて行こうとする。


「あ、すみません。私じゃなくて、この子です」


私は後ろの隠れていたマオを突き出す。マオは振り返り、子犬のような目で私を見つめてくる。


『うぅ、里奈ぁ。、、置いてかないで、、』


何かが私のストライクゾーンど真ん中に刺さる。

でもごめんねマオ。少しの辛抱だからね。

私はマオの頭を撫でながら言う。


「大丈夫、ちゃちゃっとサイズ測るだけだから。私もすぐ外で待ってるからね」


マオは私の言葉を聞いて何かをあきらめたのか、それとも決心がついたのか、おとなしく店員さんに着いていった。


それにしてもマオのサイズか。どれぐらいなんだろ。間違いなく私より2カップは上だろうなぁ。



数分後、マオは顔の赤いまま、店員さんに連れられて戻ってきた。その手には小さなレシートのようなものが握られている。


「お帰り、マオ。それ、見せてみて」


マオはその紙が何を意味するかよく分かっていないようで、素直に私に見せてくれた。

その紙には


[J70]


「、、、、、、」


『、、、えっと、、里奈?』


、、、この世は不平等だ。なんで私よりも背が高いのにアンダー私と変わらないの?何が2カップは上だよ。4カップも上じゃないか。そもそもなんだJカップって。でかすぎんだろ。ちょっと分けてくれよ。


「えーーっと。このサイズのものは店頭にはほとんどありませんので、在庫のカタログをお持ちしますね」


店員さんが空気を読んでくれたのか、店の裏に掃ける。


『里奈、これはどういう風に見ればいいんだ?』


マオが話しかけてくる。私はマオの圧倒的おっぱい力によるショックから立ち直ると、簡単に説明をする。


「この数字のほうはアンダーバストって言って、胸の下の部分のバストのことだよ。アルファベットのほうは胸のサイズ。胸のトップとアンダーの差で決まるんだよ。マオも2か所測ったでしょ?」


『なるほど。これはそういう見方なのか。あ、あともう一つ頼みがあるんだが、俺の下着は里奈が選んでくれないか?正直もう何も分からんし』


「大丈夫。それはもともとそのつもりだったから」


安心したまえ、マオくん。私が君に似合うブラを選んであげようじゃないか。

私が変なテンションになっていると店員さんがカタログを手に戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらがうちで取り扱っている大きいサイズの下着です。こちらの赤い印のものはお取り寄せ品となります」


私はカタログに目を通すと、マオに似合いそうなものをチェックしていく。このサイズになってくるとスポーツタイプのような面積の大きいものも多いんだなぁ。


店員さんともいくつかやり取りをしながら最終的な候補を絞っていく。できれば4組は買っておきたい。今日この後着けて帰る用と、かわいいの二つ、それから寝るときなどに着ける用だ。


「、、、、よし、決めた。これとこれとこれとこれ!」


「かしこまりました!そういえば、今は何もつけていらっしゃらないようですがどうしましょう」


「つけ方から教えてあげてください」


『、、え』


「かしこまりました!では早速!さあこちらへ」


話についていけていないマオが目を丸くしながら店員さんに連れていかれる。

その姿がなんだか子供みたいでかわいい。

さて、私はその間にお会計を済ませますかね。



数分後、なんだか遠い目をしたマオと、頑張りましたって表情の店員さんが戻ってきた。

既に会計は済ませたことを伝え、店を出る。

マオは自然と私の手を握ると小さな声で


『女性は大変だな、、』


と呟いた。

これから一緒に勉強していこうな、マオ。

下着を買うだけで終わってしまいました。。。

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