プロローグ
リーン・カトリーナ、16歳
女性ながらに勇者としての証を持って生まれた私は、小さな時から魔王を倒すために力を磨き続けてきた。
恋も遊びも勉強も、すべてを犠牲にして力を手に入れた。
しかしその力も魔王には届かない。
鍛え上げた剣技も、撃てるだけのすべての魔法も、魔王にいなされ、逸らされ、躱される。
もうこちらには何も手札は残されていない。完全に手詰まりだ。
こちらの攻撃を捌くだけで、一切攻撃に転じなかった魔王は、諦めて手が止まってしまった私を見ると一つ息をついて呼吸を整えた後、何かを語りかけてきた。
『―――! ――――――、―――――――?』
、、、、分からない。王国には魔族の言葉がわかるものがいるらしいが、少なくとも私には彼が何を伝えたいのかさっぱりだった。
私のそんな様子を見た魔王はハッと何かに気づいたそぶりを見せて
『これなら分かるか?人と話すのは久しぶりだから、つい魔族語でしゃべっちまった。』
久しぶりという割に流暢に人語を操る彼には少し驚いたが、魔王ともなるとこれぐらいできるのか、と無理やり自分を納得させて、彼に質問する。
「………なぜ私を殺さないの?」
『別に俺は人を殺したくて魔王やってるわけじゃねえからなぁ』
少し困ったように話す彼に私は強烈な違和感を覚える。
王国では、魔王は絶対的な悪の力の象徴だ。
その膨大な魔力と力で魔界を統べる魔族であり、人類の敵であると小さな時から教え込まれる。
しかし、目の前にいる彼からはそんな雰囲気は感じない。確かに圧倒的な力こそ感じるが、彼は私にその力を振るわなかった。
「ねぇ、まお、、、」
私の言葉は不自然に途切れることとなった。
原因は私のお腹。
勇者の証である剣をかたどったような紋章が、強く、赤く輝き始めたからだ。
「何、、これ、?」
お腹が熱い。私の魔力が全てそこに集まっていくのを感じる。
『それはまさか、、爆裂魔法か!?』
魔王が何かを言っている。しかし私の耳にはもう何も聞こえない。
熱い。熱い。熱い熱い熱い熱い!!
カッ―――ッ!!!!!
次の瞬間、お腹の魔力は一気に弾け、凄まじい光と爆音とともに、私の16年の人生に幕が下りた
初めまして。初投稿です。
拙い文章ですがどうぞよろしくお願いいたします。