第三.五話 師匠
これは、まだヴェルディアが魔王になる数年前のお話。
周りには、腰より高くない草が生える平原が広がっている。
「よっ!ヴェルディア」
「し、師匠」
気がつくとそこには、所々に白髪のある50代半ばの男が立っていた。
「どうしてこんな所に?」
「暇だったから。」
暇なんだ‼︎
「最近どうだ?魔王になると聞いたが。」
「順調です。師匠に教えてもらった事を毎日欠かさずやってますから。」
「そうなのか、ヴェルディアはよく頑張るな。そういえばウラニアは元気か?あいつのことだから心配無いと思うがな。」
「元気ですよ!いつも私のサポートをしてくれています。」
「そうか」
その顔には、まるで何かの決意を決めたような気がした。
「師匠、何かあったのですか?」
「まあな、少し旅に出ようと思ってな。」
「そうなのですか。しばらく会えませんね。」
「ああ、お前は大丈夫だと思うがウラニアが心配だったからな」
「心配しないでください、彼女は強いですから。」
実際に私の仲間の中でも1位、2位を争う強さだしな。
「所で、旅とは具体的に何処へ?」
「強くなるために修行に行くつもりなのさ。」
「……本気で言ってますか⁉︎」
「ああ本気だ。」
私よりも強い師匠がこれ以上強くなったら、それこそ魔王の誕生なのに。
「し、師匠は、今でもすごく強いですよ!」
「何を早とちりしている?俺は、ただ精神を強くするために修行に行くのだが。」
「それならいいのですが、これ以上強くなったら他国に危険視されて殺されてしまうかもしれませんよ。」
「大丈夫さ‼︎だって俺は、最強だからな!ワハハハハ」
口を大きく開けて笑う姿は、とても嘘をついているようには見えなかったのに。
「コンコン」
目の前の扉がノックされた。
「入るが良い。」
そこには、ヴェルディア専属メイドのダークエルフのルリが何かの紙を持っていた。そして、その紙を広げてから一言。
「ヴェルディア様…先ほどケンシロウ様が亡くなったと報告が来ました。」
「え、」
ヴェルディアは、嘘だと思った。と言うより嘘だと信じたかった。
「死因は、隣国からの奇襲だそうです。」
5秒ほど黙ってから。
「その国を滅ぼすぞ。」
その一言は、今まで言ってきた声の中で1番低く威圧のある声だった。
「ウラニア全ての幹部を『終始の間』にすぐに集めろ。」
「分かりました。」
---終始の間---
「すまないな急に呼び出したりなどをして。」
「大丈夫ですよ。」
ウラニアが即座に答えた。その隣には、15体にも及ぶ幹部が1人1人に会った席に綺麗に座っていた。その中には、漆黒の服を纏った悪魔から、ツノや、羽、尻尾のついている人形の人造キメラと様々である。
「所でヴェルディアさん、今日はなぜ国を滅ぼす気になったのだ?」
頭は、牛で体は人間のミノタウロスのゾルエが言った。
「つい先ほど我の師匠ケンシロウ殿が亡くなった。」
『‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
「隣国であるファミナ王国からの奇襲だと聞いている。」
「き、奇襲だなんて。」
人造キメラのリリが言った。
「こんな事してられねぇ今すぐ滅ぼしに行くぞ!俺は、あの方に命を助けてもらったのにこんなのひでぇ」
「おかしいぜ、こんなの。」
「俺たちは、皆あの方に救われたのに。」
机を「バン」と叩いて今にでも終始の間から出ていこうとする者や、静かに怒りのオーラを放っている者達が今の感情を放っていたが、その者達は皆こう考えていた。
その国を滅ぼすと、
後に歴史に残る、人類vs15体の幹部と、後に魔王となるヴェルディアとの戦争が始まろうとしていた。




