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6.おっさん=かわいい女の子

 妖狐のおっさん美少女は、おっさんとかわいい女の子を行き来する存在だ。

 三流家の家宝である性転換団子は、未完成品なのか、それとも製作者の意図なのか、性転換時間に制限がある。1日のうち、数時間はおっさんでいなければならない。

 だが、そのおかげで、かわいい女の子とおっさんの両立が可能になっている。初心忘るべからず。美少女になっても、おっさんの魂、忘るべからず。

 タマ子を連れて帰った俺は、土居さんに、腰を抜かすほどビックリされた。

 以前の俺は、暴君というよりは、無気力系暗君だったようだ。政務に興味を持たず、一日中酒浸りで、人を近づけない生活をしていたそうだ。

 倒れて数日、意識不明だったのも、乱れた生活が原因だったのかもしれない。

 おかげで、身体もまったく鍛えられていない。ガリガリで、骨と皮しかない。年寄りで、文官系の土居さんとタイマンしてもおそらく負ける。

 ともかく、土居さんは、飛び跳ねて喜んだ。

 普通、名家の当主が、どこの馬の骨かもわからないパートナーを連れてきたら反発に遭うものだと思っていた。

 けれど、前の俺があまりにもひどかったせいで、むしろ喜ばれた。

 それに、有力家臣は土居さんしか残っていない。いまさら、名門の格式がとか言って、反対するような余裕ぶった連中は、全員綾野家に寝返って、残っていないのだ。

 これで、三流の家も続いていくのだ、と土居さんは喜ぶ。次世代が生まれるどころか、来月には三流家は滅亡しそうなんだけどな。


 その滅亡しそうな三流家の内情は、ひどいものだ。

 洞窟から帰ってきた俺は、土居さんに命令して、兵の募集を行うことにした。

 ゲームだと、徴兵コマンド一つだが、現実には、いくつもの手続きや人員や場所の調整があって面倒くさい。

 

 だが、兵力を集めることは、この先、生き残るための必須条件。

 守勢では、人の心は離れるばかりだ。現にここ数日で、わずかに残っていた三流派の砦が、戦うことなく陥落している。

 じわじわとであるが、綾野家の侵攻は早まっている。これは、1ターン目に滅亡するわけだ。

 綾野家になんとしても、反撃を加える必要がある。


「兵が、集まりましたぞ」


 比較的政治手腕に優れる土居さんが、あちこちの方面に声をかけた結果、1,000人ほどの傭兵が集まった。

 他の勢力は、農村から徴兵をするのだろうが、もはや勢力下に農村地帯がほとんど残っていないので、金で集める形になった。

 練度も低い、トナミマチであぶれていた連中をむりやりまとめた集団である。

 対する、綾野家の動員能力は、直轄だけで5,000人だ。三流家の軍事をほぼ一任されていた家であり、練度も高い。

 アソラ国のほとんどの国人領主が味方していることもあり、その総数は万を超えるものと思われる。


「タマ子、この状況をどうみる?」

「滅亡は不可避でしょう。わたくしと一緒に、禁断の逃避行はいかが?」


 タマ子は、口を抑えて、ふふふと笑う。かわいい。


「めっちゃ、魅力的だ……けれど、ここで尻尾を巻いて逃げ出す童貞なぞ、お前は嫌いだろ?」

「そうですね。わたくしとしては、三流家が大きくなって、おっさんがkawaiku生きることができる世界が広がることを望んでいますわよ」

「俺もだ。せっかく、大名に生まれ変わったんだ。おっさん美少女をはべらしつつ、酒池肉林の一つでもしてみたい」

「……生まれ変わった?どうも、安具様も、わたくしと一緒で、奇妙な人生を送っている様子で」

「前世は末端の一兵卒でね。いくら滅亡寸前とはいえ、戦略を指揮できる立場にあるのは、うれしいね」

「命令されるのはお嫌いと」

「言ってくれるじゃないか。でも、君のようなかわいい存在になら、命令されてもいい」


 俺は、タマ子の背中に手を伸ばす。

 いいにおいがする。なぜだ、おっさんのはずなのに。


「おたむわれを、安具様」

「三流家が勝つ、いや引き分けでもいい。それどころか負けてもいいんだ。滅亡しないためにはどうすればいい?タマ子、千年生きた君の知恵を借りたい」


 俺の真剣な問いかけを、タマ子はいとも簡単に答えた。


「綾野常識は、わたくしたち軟派と違う、ガチガチの堅物。そこに目をつけるといいかもしれませんわよ」


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