1.玄人なら、暗君プレイに決まってるだろう?
戦略シミュレーションゲームは好きかい?
俺は大好きだ。
特にターン制の古めかしい名作が大好きだ。
顔のグラフィックが荒くて、能力も数字だけ表記されているのが好きだ。
なにより、ターン制なら自分のペースで進められるのが好きだ。
大型連休を迎えた俺は、パソコンの電源をつける。古いフロッピーディスクを挿入する。
俺が昔、若かった頃、少ない小遣いから万札を何枚も出して買ったゲーム<ランセ・トウイツ>だ。
ターン制で、パラメーターも単純。だが、よくできていて、いまでも好きな人はチマチマとプレイしている。実況動画もほそぼそと出ているくらいだ。
社会人になった今、普段の土日にゲームをする余裕はない。土日だけだと、中途半端に終わってしまうからだ。
今回の様に、年数回の大型連休に腰をすえて、プレイするのが俺のスタイルである。
わざわざ通販で注文したコーヒーをなみなみ注いだコップに、ナッツが入った高級チョコレートをおやつにする。
さあ、ゲームを始めよう。
『プレイ時間が、10,000時間をこえました』
『隠しモードを解放しますか Y/N』
おおっ、こんな表示は初めてだ。突然のウィンドウ表示にびっくりする。
もちろん、隠しモードのタブをクリックする。
『測定中……』
こんな表記が出たっきり、しばらくパソコンはフリーズしてしまっていた。
なにを測定しているのだろう?
普段の俺なら時間が勿体無いと再起動をかけるが、大型連休にプレイしていることもあって、今回はのんびり待つことにする。
『これまでのあなたの人生を分析すると
コミュ力 7 運動能力 8 学力 22
合計能力値 37 になります』
やかましいわ。
このゲームは確か、平均能力値は50だぞ。俺をバカにしやがって。
いや、いい歳した男が、ゲームの表記でイライラするんじゃない。
昔のゲームだ。ランダムで決まっているんだろう。
『選択可能なキャラクターを検索しています……
検索中……
検索中……
一名、選択可能なキャラクターがいます。
このキャラクターで、●□◆$#を始めますか?
Y/N 』
文字化けしている。
俺はとりあえずYを押した。ここまで待って、Nはない。せっかくの休みに新しいことに挑戦をするのも悪くない。
なんだ……?ものすごく眠い……おかしい。昨日は8時間は寝たんだが……
俺の覚えている最後の記憶だ。