表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

 殺人鬼×深夜徘徊

 主人公のフィアの戦闘能力は、例えるならターン制のRPGで高確率で先制される上、完全二回行動且つ即死判定付きのクリティカル率激高の攻撃をぶっ放して来る高回避率のボスキャラ。対策無しだと100%勝てないタイプ。



 首尾良く貴族様のところで雇われる事になった私は翌日からのメイド業務に備えて街を歩き回っていた。


 理由は単純、潜り込んで居る間に極力屋敷の人間を殺さない様に他の人で代用しようと、まぁそんな次第って訳。


 だけど参ったねどうも。ここの人達は早寝早起きが基本なのか月が爛々としてるっていうのにこれっぱかりも人影が見えない。


 飲み屋帰りの酔っ払いや、春売りの女の一人居ないなんて健全に過ぎるね。


 私はもっと活気があってゴミゴミと人がごった返してる街が好きなんだけど、ちょっとこの街は趣味じゃ無いかな?



 そんな事を思いながらフラフラと歩いてると、『清浄なる世界』とか言った連中の構成員を見つけた。数は二人。


 私が地下のバーに行った時に貴族への不平不満をぶち撒けてた奴ら、名前を聞いてなかったから誰だか知らないけど––––今夜はアレで良いや。


 腰のベルトに挟む様に差していたナイフを鞘から抜き、月明かりで出来た影へと溶け込む様にして気配を消す。


 相手は二人、集会だかなんだかの帰りらしい会話をヒソヒソやっていてヨダレが出そうな程に無防備。


 やっぱり人間はこうで無くっちゃね? サイキッカーやサイボーグの奴らみたいに音も気配も消して真後ろ取っても察知してくる連中はダメ、後ろに目でも付いてるんじゃないかってくらい暗殺に失敗したし。



 だから––––並んで歩く男達の内一人を後ろから二分割出来たのは本当、久々の快感だった。

 


 「バナード!? クソがッ誰が––––」


 「ダメだよお兄さん、夜更かししちゃさ? こわーい辻斬りが流行ってるからね」


 「お、お前はリーダーが連れて来た女!? な、なんでバナードを殺ったッ!!」


 「えっ? なんでって……うーんそうだねぇ。就職、祝いとか?」


 「ふ、ふざけるなぁぁぁあ!!」



 私の発言が頭に来たのか、彼は帯剣していた剣を引き抜きながら袈裟懸けに斬り掛かってくる。


 しかしあまりにも鈍い、サイボーグじゃないから仕方ないにしてももー少し仇討ちに張り切って貰えないだろうか?


 そんな酷評を下しながら、私はその斬撃を回避すると同時に背後へと回り込み、剣を握る右肘を斬り落とした。


 関節から断たれた男の腕はゴトリと言う鈍い音と共に地面へと落ち、それと同時に断面を抑えながら悲鳴をあげようとした男の足を払って地面へと転がし、悲鳴を上げられない様に口の中に爪先をねじ込む。



 「ふぁ、ふぁふぇふぁ(な、何故だ)? ふぁふぇ(何故)ふぉふぇ()ふぁふぃふぉ(達を)!?」


 「おや? さっき答えなかったかな、就職祝いだって。お屋敷じゃ暫く猫を被らなきゃいけないからね、ボロ(殺人癖)が出ない様に色々発散しとかなきゃいけないんだ」


 「ふふぉふぁ(クソがッ)!!」


 「ふふっ。殺人鬼と関わるって言う事、よーく理解できたね? それじゃサヨウナラ」



 別れの挨拶と共に私は足に力を入れて相手の頭を踏み砕く。


 絶命の際に不可思議な力で殴り飛ばして来たり、潰れた頭で立ち上がって内蔵式の銃器をぶっ放してくる事も無く、彼は絶命した。



 このところ生き汚い奴らに出くわす事が無く、ちゃんと殺したら死んでくれる人ばかりだったので、概ね満足した私はこのまま死体を野晒しにして帰る気満々だったけど、断面ややり口から私がやったと思われては少々面倒だと思い、今しがた殺害した人達を更にスライスして近くの川に投げ捨てる。


 死体の損壊で断面を分かり辛くし、分割した肉片を街全体に分散させる事で隠蔽をしながら、頭部と指だけは地面に深い穴を掘って埋めておく。


 

 「よし、これで終了っと。しっかし、証拠隠滅をするなんて殺人鬼としてはどーなんだろ?」



 そんなぼやきと共に、私は違和感しか無い紅い月(・・・)を見上げた。


 血が滴って来そうな紅、月明かりに照らされた深夜の街中は薄っすらと朱色に染まってなんとなく殺人鬼に相応しい雰囲気を出している。

 

 今まで特に気にしてなかったけど、やはり此処は地球じゃ無いんだろう。処刑されたはずの私が生きてる事の説明が付かないけれど、今際の際に見る走馬灯にしては出来過ぎだ。


 

 「馬鹿は死んでも治らないって言うけれど……殺人鬼もおんなじなんだね」



 子供の頃は今ほど見境無く殺戮に勤しんでた訳じゃ無かったと思う、そうしなきゃ食い繋げ無かったからそうしていただけ。


 けどいつの間にか目的と手段が逆転して、今じゃ立派なシリアルキラー。堕ちも堕ちたりって気分だけど、このドン底から私を引き上げてくれる人など居ない。


 仮に居たとしても私はきっとその人を殺すだろう。『殺人姫』なんて大層な二つ名も頂いちゃってるしね?



 ––––だからまぁ、夢か現か分からないこの世界、一度死んだ人間がもう一度人生を全うしなきゃならない道理は無い訳だし? 考え無しに暮らしても構わないよね?



 誰に対する確認かも分からない事を呟きながら、私は次の獲物を探しに紅い夜道を歩くのだった。


 



 フィア自身異世界に転移したからと言って特に目標も目的も無いので、かなり刹那的になってます。


 その為依頼主の身内であっても特に考えずに殺害しますし、それを悪びれるつもりもありません。


 最早転移して来ただけ害悪でしか無い模様。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ