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潤んだ瞳が愛らしいナナは心底怯えた様子でオレを見るから、周りにいるナイト達は更にいきり立ち、オレに対して恨みの篭った目を向けてくる。
ここにアフィオがいたら、間違いなく頬を打たれているだろう。だが第一王太子ともなれば、恋愛事よりも自分の立場が優先。故に授業中である今、ここへ来る事はないだろう。
なので、ナナの傍にいるナイトはノータスとフィンの2人だけ……
「お前何してんだよ」
おっと、第2王子の方は恋愛事優先だったらしい。
廊下を悠々と歩いてくるセミオンは、軽く手を振りながらやってくると教室の中をヒョイと覗き込み、そこでナナと目でも合ったのだろう、ニッコリと微笑んでいる。
「これはこれはセミオン殿下……何の御用でしょう?」
そして教師の態度があからさまに変わり、綺麗に礼をした。
「大した事じゃない。エイリーン譲を回収しに来ただけだから」
セミオンは教師に対して人の良さそうな笑顔で言うとオレの手を取り、1組の教室に向かって歩き出す。
無言で。
これは、態々回収に来てくれた第2王子に対して礼を述べる所だよな?下手に声をかけて気分を悪くさせるかも……とか考慮する場面じゃないよな?
「……殿下のお手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
出来る限り丁寧にお辞儀をして謝罪文を口に出せば、頭上から聞こえてきたのは思いもよらぬ笑い声。
どうしたんだ?と顔を上げて見れば、片手で口元を押さえたセミオンが、それでもかなり抑えているのだろう、顔を真っ赤にさせて笑っていた。
「1つ、聞いて良いか?」
1組の教室に近付くにつれて徐々に落ち着きを取り戻していったセミオンは、立ち止まりもせず、オレの方を向きもせずにそう言った。
「はい……なんでしょう?」
何を聞かれるのだろう?ナナへ嫌がらせをするのは何故か?とか問われるのだろうか?
もしそうなら思いっきり馬鹿にしてやる……。
不敬罪?上等だ!
「あれさ、なんて質問してたんだ?」
うん?
あ、歌の事?え?聞きたい事って、それなのか?もっとなんか……あっただろ?そんなに気になったのか?
でも、どう説明すれば良いんだ?前世で好きだったロックバンドの歌ですわ。なんて答えた所で通じないんだろうし、歌だと言っても、この世界の歌とは全く違うしー……。
よし、誤魔化そう。
「適当に叫んだだけですわ」
そう答えた直後セミオンは噴出し、しばらく笑い転げた後ゴホンと咳払いをして、
「昨日早退してたけど、具合良さそうで安心したわ。あー笑った笑った」
と、笑い過ぎて滲んでいた涙を拭った。
ナナのヒロインマジックにかかっている筈のセミオンのその動作は、何故だか実に人間らしく見えて、これまた何故かそれが妙に嬉しかった。
これにて「ヒロインとは仲良くなれそうにないなぁ」という内容の第4章完結です。
第5章は11月が来るまでには書き終わっておこうと思っていますので、10月の頭辺りから書き始める予定です。
少しばかり慌しいですが、第5章もお付き合い頂けると嬉しいですますわっ!




