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話し終えたぞ。とでも言いたげにオレの顔を見てくるセミオンに、近い将来必ずアフィオと共に行動するようになるんだ。とは流石に言えず、だからといって黙るのも可笑しいのでとりあえず口を開けてみた。
「勝ってる所、性格」
例え周囲にもてはやされて育ったとしても、それを真に受けて弟を馬鹿にするような人間が王位継承1位とか、この国大丈夫なのか?
「え?」
否定され続けて育った人間ってのは、自己評価が物凄く低くなるのは身を持って知っているつもりだ。だから教えてあげよう。
「セミオンは性格が良いし、無属性の玉も、まぁ不恰好ではあったが出す事も出来たろ?魔術の腕もアフィオより上だ。後はー……アフィオの金髪金目より、セミオンの白金色の方が綺麗……あ、殿下の色は見目麗しゅうございますわいのっ!」
マズイ、殿下に対する余所行きの話し方をスッカリ忘れてたっ!これって不敬になる?不敬罪とかになる?どうしよう……。
「不恰好ってなんだよ!ちゃんと出せたんだから良いだろ?」
あ、なんか大丈夫そう。
「えぇ。それで良いのです。今の所私とドラードと殿下しか出せませんもの、もっと誇らしく思って良いんじゃありません?」
今後、アフィオもきっと無属性の玉を出す事が出来るようになるのだろう。もしかしたらまん丸でピッカピカの完璧な球体で。だけど、先に出せるようになったのはセミオンだ。その事実を他の誰もが認めなかったとしても、事実が変わる訳じゃない。
「もっと綺麗に出せるようになったら、な」
納得出来る玉を出す練習をしている間にアフィオに先を越されて落ち込むセミオンの未来が見える気がするわ。
さてと、急げば午後の授業に間に合いそうな時間だし、そろそろお開きにするか。
「じゃあオレは着替えに一旦寮に戻るからなーですわよっ」
返事も待たずに風魔法で飛び上がり寮の自室で着替え、そのまま窓から飛び出して教室を目指す。
道中、中庭を横切る時に何気なくベンチに視線を落とせば、そこにはまだベンチ付近にいたセミオンと、2組の教室に向かって走るナナが見えた。
もしかしたら?
ソッと植木の陰に身を隠して見ていると、セミオンの事を無視して走り続けていたナナが噴水前を過ぎ去ろうとした瞬間、不自然な風が吹きあがり噴水の水がナナにだけ降り注いだ。
後はオレが描いた絵の通り、セミオンがナナに上着をかけてやり、2人は見詰め合った。
これは、明日から静かになるな。




