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一体どんな作戦でセミオンを部屋から誘い出して連れてくるのかは分からないが、ケリーの中では作戦があるらしく、来週末に作戦を決行すると気合を入れているらしい。
とコーラルから聞く頃、オレとドラードはギルドの事務作業依頼を終え、晴れて冒険者見習いを卒業し、ドラードは魔法職の”メイジ”に、オレはまた魔剣士を目指すため”冒険者”に転職していた。
こうなるとどんどん討伐クエストを受けてレベルを上げたいと思うところではあるが、オレ達はまだ1か月間の監視対象者であり、町から出ることは依頼であっても許されてはいない。
町の中にいてもできる依頼がないかと定期的に掲示板を見に行き、急ごしらえで作られたような簡単な掃除依頼や資料のまとめ依頼などを受ける。
毎日がこの繰り返しなのでオレ達はかなり暇をしている反面、ギルド員達は依頼を作ることに奮闘していた。
もういっそ自分達の依頼を自分達で作れって言われた方がお互いのためになるんじゃないかって思うよ。
とは言っても、1か月の監視対象期間は残すところ1週間って所にまで来ているんだけどね。
なら、残りの1週間は休んで、監視が溶けてから討伐依頼を受けまくった方が……の前にランクアップクエストだな。
オードゥスでは森に入ってキノコ狩りをするだけという謎の採集クエストでCランクになれたけど、トランではどんなクエストになるんだろう?
そうだ、ランクアップクエストなら監視期間中でも受けられたりしないかな?
「エイリーン、どこ行くんだ?」
ランクアップクエストについて聞きに行くため、部屋を出ようとしたところで後ろから呼び止められた。
振り返れば俯き加減のドラードがいたんだけど、前髪で隠れがちな目はしっかりとオレを見ている。
最近その角度がお気に入りなのだろうか?と考えてみて思い当たる、オレの身長が低いから視線を合わせようとしたら必然的にこの角度になるんだな。
いや、それより近いから!
「ランクアップクエストについて聞きに行くだけ」
「俺も行く」
ただ聞きに行くだけなのに……まぁ、受けられるってなった時にわざわざ部屋に戻ってランクアップクエストを受けようと思ってーとか説明をするよりは良いのか。
こうして2人で聞きに行った結果が、
「ランクアップクエストは町の外での作業になるため、まだ出来ませんよ」
だった。
この3週間ばかりオレ達はかなり大人しくしていたし、真面目に依頼をこなしてきたと思うんだけど、そういう態度で監視機関が短くなったり依頼なら町の外に出ても良いよとかは一切ないらしい。
ケリーによるセミオン救出作戦とオレ達の監視対象期間の終了時期が同じであることに、偶然以上の何かを感じなくもないけど、ここははやる気持ちを押さえて待機するしかない、か。
丁度”クオン””クウガ”について調べているブラックが大量の資料を部屋に持ち込んでいるから、資料整理を手伝ったり新しい情報の収集とかやって時間を潰そう。
隣にいる将来の大魔法使い様の核を取り出す方法も、調べないと……。
「エイリ……ハバキ、薪割をしてほしいって依頼があるぞ」
それと、本当に核を取り出す方法がなかった時のことも。
「わかった、すぐに受けて行こう」
いい加減、この世界が乙女ゲームの中じゃないって線も、ちゃんと考えないとな。
本当になんで令嬢の中に転移してしまったんだか。
これにて「1か月監視されるよ」という内容の第29章完結です。
第30章は また少し間が空いてしまうと思いますが、第30章もお付き合い頂けると嬉しいですことだわよっ!




