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ギルドの受付員に休憩すると伝えてから部屋に戻ると、睡眠不足のバッドステータスが付いていたブラックはベッドの上で就寝していて、コーラルはブラックが持ってきたのだろう本を読んでいた。
「お帰り、ただいまー」
「ただいま、お帰りー」
「はい、ただいま。と、お帰り」
声をかけ合ってから部屋の中に入り、一応人数分の紅茶を用意して椅子に座る。
「えっと、どこから話そうか……まず、俺達はまだトランで待機ってことに変わりはないよ」
なにやら今日1日で色々あったらしいんだけど、オレ達がするべきことに変化はないらしい。
「分かった。そもそも1か月はこの町から離れられないし、問題ないよ」
すぐにオードゥスに戻って来いって言われるよりも平和で良かった。
「キミ達に関わり深い所から言うと、プラガット侯爵がエイリーン嬢の勘当を取り消して正式にプラガット家の一員として葬ったみたいだね」
はぁ……そうですか……。
プラガット侯爵の行動の意味はよく分からないけど、そんな風にエイリーンを気遣える思いが少しでもあったのなら、エイリーンがいなくなる前にやってくれたらよかったのに。
そしたらエイリーンが学校内で「平民の癖に」なんて言われることもなかったんだ。
「それから?」
「ナナ嬢が正式に勇者……聖女として認められ、来年の生贄の儀式で守り神討伐に挑むそうだよ」
え?
討伐する方向にストーリーが進むのか!?
「ステータスが初期値に戻るナナマジックが発動してるんだから無理だよな?冒険者ルートでもないのにどうして急にそうなるんだ?」
守り神はステータス初期値で勝てる相手じゃない。
ゲーム内でもかなりレベルを上げないと討伐にいたれず、守り神の封印ってことになって終わるんだ。
そうなると討伐に参加した中の誰かが生贄に選ばれるってエゲツナイバッドエンドにつながる。
その場合、生贄に選ばれるのって心身にダメージを受けて復学すらできない状態のセミオンじゃん!
「ナナの呪いを解明して、ステータス弱体化の糸口を掴むためベルノーズは守り神討伐を手伝うって名目で聖女側に付いたんだって。だから明確に言うと呪いにかかったわけではなかったよ」
そうなのか……ならよかっ……。
待て。
このタイミングでステータスの弱体化が起きていない仲間の加入って、それもう守り神討伐メンバーの一員じゃん。
そしてストーリーが結構進んでから加入する攻略対象ではないキャラクターって、それ高確率で死ぬ感じじゃん!
もしかして生贄にされるのってベルノーズだったりするのか?
セミオンだろうがベルノーズだろうがそんなもんは阻止だ阻止!
ゴーレムで生贄の誤魔化しができるんだから、ナナとケリーが力を合わせてくれさえすれば守り神討伐メンバーの強さも、討伐に失敗した時の生贄問題も解決できる。
悪役令嬢のエイリーンがもうストーリー的には退場してるんだから、ヒロインの2人が仲良くできない訳ないよな?
「学校ではヒールを使ったケリーのことを”聖女の偽物”と呼ぶ生徒が出始めているそうで、それを知ったノータスは復学してケリーの護衛をかって出ているみたい」
あぁー……。
無理なのか。
ケリーとナナが手を取り合って協力をする感じじゃなくて、全力でケリーを第2のエイリーンポジションにしたいわけね。




