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魔法学校に入学してから1ヶ月が経ち、クラスメート達は笑顔でお互いを煽り煽られながら平穏に過ごしている。
中でも第1王子と第2王子への視線は凄まじい。
女子達は婚約者の座をもぎ取るため、男子達はご学友になるため、それはもう歯の浮くようなお世辞のオンパレード。
身分が高い人が粗相をした場合には、優雅だともてはやすのが常識のようだ。
なので、おにぎりを手から落としながら
「あ、あぁー……」
などと第2王子……セミオンが情けない声を出した所で、
「素晴らしい角度で落としあそばされましたわね!普通ならばそれほどまで満遍なく砂が塗されるほどおにぎりを転がす事は難しいです。流石殿下ですわ!」
と、褒め称えるのが正解なのだ。
たとえ当人から恨めしげに睨まれようとも。
「でー……本音は?」
おにぎりを頬張りながら隣に座っているドラードがしれっと翻訳してみろと言うから、オレは上げた声色を一気に戻しながら。
「次落としたらもう作ってやんないでござりますわよ」
と、それでも若干の建前を口にしておいた。
本当に本気の本音は、どんくさいな。になってしまうのだから仕方ない。
広い中庭の、数ある噴水付きの人工池傍にあるベンチに座り、おにぎりを頬張るオレと、セミオンとドラード。
2人が食べているおにぎりは、騎士の訓練に参加した後オレが握ったものである。
特別美味しい訳でもないのに食堂の豪華な食事よりも選ばれているのは、食堂にいけば集まる好奇の視線から逃れる為だろう。
こうして3人でおにぎりを食べるようになって変わった事は、時々あったナナからの風魔法攻撃がなくなった事くらいか。
第2王子と親しくしているのだから、多少のやっかみがあって然るべきだとは思ったが……いや、あるのか?
いかん、屋敷に住んでいた時の不遇さに比べれば小学生レベルのイジメなどないに等しいから正しい反応が出来ていないだけで、冷静に考えれば相当な事を受けている可能性が……まぁ、特に気にならないんだから下手に、傷付いていますわっ!アピールする必要もないか。
やった所でドラードに不気味がられるだけだろうし、セミオンからは盛大に笑われそうだ。
それを思えばオレも建前など使わず正直に、どんくさいな。と言った方が良かった気がしてきた……。




